九谷焼は目に飛び込んでくる。赤・黄・緑・紫・紺青の五彩が、磁器の白い素地の上で層を重ね、濃く、密に描かれている。絵付けは遠慮がない。隙間なく描き込まれた草花や山水、鳥の羽の一枚一枚まで精緻に仕上げられた絵付けは、手にすると「工芸品を持っている」という実感をくれます。
石川県の加賀地域——能登半島の付け根、日本海に面した土地——で生まれた九谷焼の歴史は17世紀中頃にさかのぼります。石川県という産地が、この色絵磁器の世界観を育てました。一時は廃窯したものの江戸後期に再興され、その後も各時代の美意識を吸収しながら独自の色絵磁器の世界を作り上げてきました。見る前から、その評判が先に届く。それが九谷焼です。
五彩の絵付け — 九谷焼の見た目を決めるもの
九谷焼を特徴づけるのは「五彩(ごさい)」と呼ばれる上絵付けの技法です。赤・黄・緑・紫・紺青の五つの色を、すでに焼き上がった磁器の釉薬の上に乗せ、低温で再び焼き付けます。金属酸化物を含む顔料がガラス質の素地と融合し、不透明で深みのある色を作り出します。
| 特徴 | 詳細 | 向くお茶 |
|---|---|---|
| 素材 | 磁器(白磁ベース) | 煎茶・玉露・改まった茶席 |
| 絵付け | 五彩上絵(赤・黄・緑・紫・紺青) | ギフト・茶道具 |
| スタイル | 密な絵付け・金彩が多い | 格式ある場・贈り物 |
| 産地 | 石川県加賀地方(加賀市・金沢市・小松市ほか) | — |
有田焼・伊万里焼との比較は参考になります。どちらも磁器に絵付けをしますが、有田の柿右衛門様式は余白を生かした非対称の構図。九谷は逆に、絵付けで器面を埋め尽くす傾向があります。九谷の上絵は不透明度が高く、有田の透明感ある色とは対照的な、厚みと深みを持った色合いです。
古九谷から再興九谷へ — 九谷焼の歴史
九谷焼の歴史には、不思議な断絶があります。最初の窯「古九谷(こくたに)」は1655年頃に開窯し、1700年頃には廃窯しました。廃窯の理由は謎で、加賀藩による技術独占のため、あるいは経営難のため、など諸説あります。古九谷の器は現存数が少なく、そのことがコレクター市場での価値と神秘性を高めています。
再興は江戸後期に始まります。複数の窯が独自の「九谷様式」を生み出し、現代に至る九谷焼の多様性の基礎を作りました。
吉田屋手(よしだやで)
1820年代に開窯した吉田屋窯のスタイル。柔らかい緑・黄を中心に、比較的落ち着いた絵付けが特徴。九谷焼の中では最もおとなしい部類に入ります。
永楽手(えいらくで)
陶工・永楽和全(えいらくわぜん)が確立したスタイル。鮮やかな赤と金を主役にした、格調ある様式。中国の輸出磁器との親縁性があります。
庄三手(しょうざで)
明治期の九谷庄三が発展させた、最も技巧的な様式。細密な絵画的描写、色の多重重ねが特徴で、複数回の焼成が必要な高度な技術を要します。西洋のコレクションで「九谷焼」として知られるのは、この明治期の庄三手が多い。
明治時代、輸出向けの九谷焼は「豪華な東洋的装飾」を求める西洋市場のニーズを吸収し、日本磁器の中でも最も密度の高い絵付けを実現しました。明治九谷は輸出工芸として非常に成功し、現在も欧米のコレクターに高く評価されています。
九谷焼の急須・湯のみでお茶を楽しむ
九谷焼の湯のみを手にすると、お茶を注ぐ前からすでに何かが始まっています。重量のある絵付け、指先に伝わる細かい凹凸。手にすることで「工芸品を使っている」という体験が始まる。それが九谷焼の茶器の特別さです。
機能的には、九谷焼は磁器です。非吸水性で、どんなお茶にも使えます。煎茶・玉露はもちろん、ほうじ茶やコーヒーにも問題ありません。育てる必要もなく、特別な手入れもいらない。日常に取り入れやすい工芸品です。
贈り物としての九谷焼は、色絵磁器の茶器の中でも特に格調が高いと広く評されます。視覚的な存在感は一目でわかる。加賀の伝統工芸としての文化的な深みがある。婚礼祝いや記念日のギフトに、九谷焼の湯のみペアや急須セットはしばしば選ばれます。
選び方・お手入れ
九谷焼を選ぶとき、まず「手描きか転写か」を確認することをお勧めします。伝統的な九谷焼は手描きで、上絵具を一筆ずつ筆で塗り、色ごとに焼成します。転写は印刷されたデカールを貼り付け一度焼く方法で、安価で均一な仕上がりです。手描きのものは一点ずつ微妙な差異があり、器を角度を変えて見ると絵具の厚みや筆の勢いが感じられます。転写は均一で平坦な表面になります。
金彩入りの作品——正式な九谷焼の多くがこれに当たります——は手洗いが必須です。金は食洗機の洗剤で徐々に曇ります。金彩なしの手描き上絵の作品は、食洗機の弱水流設定ならある程度耐えられますが、手洗いの方が色の寿命が延びます。研磨スポンジは絵付け面には絶対に使わないでください。
よくある質問
九谷焼はなぜあんなに色が濃いの?
五彩の上絵付けに使う顔料は金属酸化物です。緑には銅、赤・黄には鉄、青にはコバルト。これをガラス質のフリット(低温で溶けるガラスの粉)と混ぜて塗り、700〜800°C程度で焼き付けます。九谷焼は歴史的に、色を薄めて繊細さを出すより、色を最大限に生かして豊かさを表現する方向を選んできました。その美意識の選択が、あの密度と濃さの絵付けになっています。
古九谷はなぜ謎が多いのか?
1655年頃に開窯し1700年頃に廃窯した「古九谷」の窯は、廃窯の理由が定説なく複数の説が並立しています。加賀藩の技術秘匿のため、あるいは藩財政の問題、はたまた原料の枯渇——さまざまな説があります。さらに、一部の「古九谷」作品は有田で焼かれたのではないかという研究も出ており、器の帰属をめぐる議論は今も続いています。謎の多さがコレクター価値を押し上げ、美術史上の研究対象としても九谷焼を興味深い存在にしています。
他の日本の茶器との比較は、茶器の素材ガイドもご覧ください。
FETCでは九谷焼の湯のみをはじめ、ギフトにも最適な茶器を取り扱っています。
