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日本には多くの焼き物があり、伝統的工芸品に指定されているものだけで47種類もあります。
そんな中、今回ご紹介するのは日本六古窯のひとつである「越前焼」です。
越前焼って?
越前焼は福井県の嶺北地方西部にある越前町とその周辺で作られている焼き物で、備前焼・常滑焼・瀬戸焼・丹波焼・信楽焼とともに日本六古窯に数えられています。
その歴史は古く、現在までに200以上の窯跡が発見されています。
特徴
越前焼の特徴をご紹介しましょう。
素朴で頑丈な日用品
越前焼の大きな特徴といえばその丈夫さです。
越前焼に使われる土は鉄分を多く含んでいるため、耐熱性に優れており、高温で焼くことができるので土が焼きしめられます。それにより丈夫で水漏れもしにくい器になり、壺やすり鉢・かめ・貯蔵鉢など日用品として使われてきました。
お茶が美味しくなる
越前焼に使われる土には鉄分が多く含まれており、その鉄分がお茶の苦味成分と反応することで、お茶の苦味がほどよく取れてたまろやかな味わいになります。
また、越前焼きは釉薬を使っていないので器の表面に小さな穴が空いているのですが、その穴がお茶の余分な不純物を吸着してくれ、雑味のない美味しいお茶に仕上がります。
遅咲きの名器
今でこそ高く評価されている越前焼ですが、少し前までは注目さえされない焼き物でした。
江戸時代頃から、越前焼は生活に欠かせない庶民の焼き物として日常に溢れかえっており、芸術品や工芸品として認められることも、歴史的価値を見出されることもありませんでした。
転機が訪れたのは1942年。越前焼の古窯跡調査が行われたことをきっかけに日本六古窯に認定され、さらにこれまで幾つかあった名称を「越前焼」に統一したことで、やっと工芸品として注目されるようになったのです。
越前焼の歴史
日の目をみるまでに時間がかかった越前焼ですがその歴史は今から850年前の平安時代まで遡ります。
当時の越前焼は壺・すり鉢・かめなどの日用用品や台所用品を中心に作っていました。
平安時代末期には越前焼の特徴である、釉薬を使わずに高温で焼き上げる「焼き締め陶器」を作り始めます。
室町時代後半になると船を使って北海道から鳥取までの範囲で輸送を始め、これにより越前焼は広く普及し、人々の生活に根付いていきます。
しかし、江戸時代終わりから明治時代に状況は一変。
世間では茶器などの高級な焼き物が流行り、さらに日本全体が近代化され洋風文化も入ってきたことで、素朴な見た目の日用品を作る越前焼の需要は減る一方でした。
それから長い辛抱の期間を乗り越え、1942年に筑前焼の古窯跡調査が行われたことで越前焼の歴史的価値が見出されます。そこからは窯元が増加し、越前には越前焼目当てで多くの観光客も訪れるようになり、越前焼きは見事に復興し今に至ります。