目次
  1. 不発酵茶(緑茶)の製造工程の特徴
  2. 収穫された生葉が出荷されるまで
    1. 荒茶ができるまで
      1. 1. 蒸熱
      2. 2. 粗揉
      3. 3. 揉捻
      4. 4. 中揉
      5. 5. 精揉
      6. 6. 乾燥
    2. 仕上げ
      1. 7. 先火
      2. 8. 選別・整形
      3. 9. 火入れ
      4. 10. 合組
  3. 深蒸し茶って?
    1. 深蒸し煎茶にする理由

私たちが普段飲んでいる緑茶・紅茶・烏龍茶など、味も香りも色も異なるこれらのお茶が、全て同じ茶葉から作られているのを知っていますか?

これらのお茶が異なる味わいや香りを持つのは、製造方法の違いによるものです。

今回は、「緑茶(煎茶)」や「深蒸し煎茶」が、どういった製法で作られているのか、また緑茶と深蒸し煎茶の違いは何かを解説していきます。

不発酵茶(緑茶)の製造工程の特徴

不発酵茶とは、茶葉のもつ酵素が行う発酵(酸化)を、加熱によって失活させて(酵素の働きを止めて)、発酵をさせずに作るお茶をいいます。他の発酵茶にはない「失活」を行うことが不発酵茶の特徴です。

不発酵茶として代表的なのが緑茶(煎茶)ですが、元々日本のお茶は緑色ではなく黄色や茶色をしていました。しかし、「青製煎茶製法」の発明により、今のような美しい緑色の水色の、上品な甘みと香りの生きた緑茶が生まれました。

収穫された生葉が出荷されるまで

収穫された生葉は、まず産地の近くで揉みや乾燥を行った「荒茶」という状態にまで加工されます。その後、さらに「仕上げ」加工が行われ、製品として各地へ出荷されていきます。

荒茶ができるまで

荒茶は、美味しい緑茶を作るための「下準備」のような役割を担っています。荒茶は「摘採(生葉を収穫すること)→ 蒸熱 → 粗揉 → 揉捻 → 中揉 → 精揉 → 乾燥」という手順を踏んで完成します。

1. 蒸熱

生葉を蒸して酸化酵素を失活させます。

圧力をかけずに均等に蒸気で蒸すことで、茶葉を緑色に保ちつつ、青臭みを取り除いていきます。緑茶において、この工程はとても重要で、蒸し時間の長さによって色や香り・味などが決まります。蒸し時間を長くすると、色は濃くなり、渋味と香りは少なくなります。

2. 粗揉

茶 粗揉機

強い力で揉み、適度な圧力を加えながら、熱風を当てて乾かします。茶葉を柔らかくし、茶葉のもつ水分を減らすための工程です。

3. 揉捻

茶 揉捻機

粗揉だけだと揉み足らないため、今度は加熱をせずに圧力だけで揉みます。茶葉の水分を均一にしていくとともに、細胞を破壊し、茶葉の成分が出やすいようにします。

4. 中揉

揉捻後の茶葉は縮んで形も不揃いなため、中揉工程では熱風を当てながら茶葉を解きほぐし、次の精揉をしやすいよういに細長い形に整え、さらに揉みます。

5. 精揉

茶 精揉機

茶葉の乾燥を促しつつ、一定方向にだけ揉みます。この工程で緑茶独特の針のような細長い形ができあがります。

6. 乾燥

茶 乾燥機(水乾機)

精揉後の茶葉ではまだ水分を10〜13%含んでいるため、さらに念入りに熱風乾燥させて5%程度にまで下げます。これで「荒茶」の完成です。

仕上げ

荒茶の状態では、まだ形が不揃いで水分が多く、品質の維持が難しいため、その後「仕上げ」加工を行います。「仕上げ」工程は、「先火 → 選別・整形 → 火入れ → 合組」の順に行われ、計量や検査・包装を経て出荷されます。「仕上げ」を行うことで、長期保存が可能になり、お茶の香味をよりよくする効果もあります。

7. 先火

選別や整形を行う前に、荒茶全体にまず火入れ(焙煎など)をします。

8. 選別・整形

火入れ後の荒茶をふるいにかけ、細かい茎などを取り除き、葉の大きさで選別します。さらに切断などの加工を行い、形を整えます。

9. 火入れ

最後にもう一度火入れして乾燥させることで、保存性を高めるだけでなく、お茶の香りを引き出します。

10. 合組

茶 合組機

最終調整として製品の配合や品質を均一にするために「合組(ブレンド)」を行います。合組を行うことで、バランスのいいお茶に仕上がります。

深蒸し茶って?

深蒸し茶は、通常の「煎茶」より、蒸し(蒸熱)時間を2〜3倍長くして作られた煎茶のことをいいます。 それ以外の工程は通常の煎茶とほぼ変わりはありません。

長く蒸す分、茶葉がより柔らかく、崩れやすくなるため、通常の煎茶と比べて茶葉の形が細かいのが特徴です。

茶葉が細かくなると、お湯に触れる面積が広くなり、成分が抽出されやすくなるため、淹れる際は通常の煎茶よりも抽出時間を短くします。

深蒸し煎茶にする理由

深蒸し茶は、通常の「煎茶」は、渋みと甘みの調和が取れており、淡い緑の水色が特徴的ですが、品種や生産地によっては渋みが強く出るものもあり、消費者の口に合わないこともありました。

そこで、渋味を減らしてお茶の甘味をより引き立たせるために、茶葉を深く蒸すようになったのです。深く蒸したことにより茶葉はさらに細かくなり、水色に緑が濃く出るようになりました。この水色の鮮やかさも評判になり「深蒸し茶」はたちまち人気となりました。