Far East Tea Company 編集チーム 約 12 分
目次

緑茶という言葉の中に、いくつの味があるでしょう。玉露の、だしのような濃い旨味。煎茶の、すっきりした渋味と清涼感。ほうじ茶の、炒った穀物の香ばしさ。玄米茶の、香ばしく、ほっとする温かさ。どれも「緑茶」ですが、一杯の印象はまるで別物です。

日本で生産されるお茶の約96%は緑茶(不発酵茶)です。それだけ種類が豊富で、産地、栽培方法、製法の組み合わせによって味わいが大きく変わります。各種類の詳細は専用記事からご確認いただけます。

緑茶とは――不発酵茶の基本

緑茶は、チャノキ(Camellia sinensis)の葉を摘んだ後、すぐに加熱して酸化酵素の働きを止めたお茶です。「不発酵」とは、酵素による酸化反応を起こさせない、という意味です。この処理があるからこそ、葉は緑のまま保たれ、摘んだ時の成分がほぼそのまま残ります。

日本と中国では、酸化を止める方法が違います。日本は「蒸し製」——摘んだ葉を蒸気で処理する方法。中国の多くは「釜炒り製」——熱した鍋で炒る方法です。この違いが、日本茶と中国緑茶の味の印象を大きく変えます。蒸し製は葉の青い成分(クロロフィル、アミノ酸、テアニン)をより多く保ち、海苔のような芳醇な磯の香り、深みのある旨味が出やすい。釜炒り製は炒り香が加わり、よりすっきりした印象になります。

日本では「日本茶=緑茶」とほぼ同義で使われているのはこのためです。例外的に、和紅茶(日本産紅茶)や日本産烏龍茶、発酵茶もありますが、生産量は全体のごく一部です。

日本茶の種類一覧――製法、被覆、焙煎で分類

日本の緑茶の種類は、大きく3つの軸で分類できます。①蒸し製か釜炒り製か、②被覆栽培(日光遮断)があるかどうか、③焙煎などの二次加工があるかどうか。この軸を理解すると、種類の多さが整理しやすくなります。

種類 栽培 製法 味わいの印象 カフェイン目安
煎茶 露地(遮光なし) 蒸し→揉み→乾燥 爽やかな渋味、青い香り 中(20〜30mg/100mL)
深蒸し煎茶 露地 長蒸し→揉み→乾燥 まろやか、旨味が前面
玉露 20日以上の被覆 蒸し→揉み→乾燥 濃い旨味、磯の香り、甘味 高(100〜160mg/100mL)
かぶせ茶 7〜14日の被覆 蒸し→揉み→乾燥 煎茶と玉露の中間 中〜高
抹茶・碾茶 20日以上の被覆 蒸し→乾燥(揉まない)→石臼挽き 濃い旨味、草の香り、わずかな苦味 高(2g一服で約60〜70mg)
ほうじ茶 露地 蒸し→揉み→高温焙煎 香ばしい、ナッツ系、渋味少ない 低〜中(約20mg/100mL)
玄米茶 露地 煎茶or番茶+炒り玄米 炒った穀物、温かみ 低〜中
番茶 露地 蒸し→揉み→乾燥(二番茶以降) あっさり、ほのかな土っぽさ 低(10〜15mg/100mL)
釜炒り茶 露地 釜炒り→揉み→乾燥 炒り香、すっきり、磯感なし

煎茶は日本で最も広く飲まれる基本のお茶(農水省 茶をめぐる情勢によれば、深蒸し煎茶を含む煎茶系が荒茶生産量の半数以上を占める)。一番茶の爽やかさと渋味のバランスが特徴で、茶葉の選び方によって深蒸しから浅蒸しまで幅があります。煎茶の詳細記事では産地、品種、蒸し度の違いまで解説しています。

玉露は日本茶の最高峰とされる被覆栽培のお茶。20日以上の遮光によって、光合成が抑制されアミノ酸(テアニン)が蓄積します。磯や海藻を思わせる香り、強い旨味、渋味の少ない甘い余韻が特徴。茶葉の生産量は全国の1%未満です。玉露の専用記事で被覆栽培の仕組みと淹れ方を詳しく説明しています。

抹茶は、碾茶(てんちゃ)という玉露系の被覆栽培茶を石臼で挽いた粉末茶。茶葉をそのまま飲む形式のため、カフェインと旨味が濃縮されます。「抹茶と緑茶の違い」については抹茶と緑茶の比較記事で整理しています。また抹茶と碾茶の専用記事では原料の碾茶から点て方まで解説しています。

かぶせ茶は7〜14日間だけ遮光する「中間の被覆」のお茶。玉露ほど旨味は強くなく、煎茶より柔らかい、という絶妙な位置にあります。かぶせ茶の記事では遮光方法(棚掛けと直掛け)と産地の特徴を解説しています。

ほうじ茶は番茶や茎茶を約200°Cで焙煎したお茶。焙煎によって苦味のもとになるカテキンが減り、代わりにメイラード反応でナッツやカラメルの香りが生まれます。カフェインはMEXT食品成分表(八訂)によれば煎茶と同程度(約20mg/100mL)で、焙煎による減少は限定的です。ほうじ茶のまとめ記事では軽焙煎から深焙煎まで幅広いスタイルを紹介しています。

玄米茶は煎茶または番茶に炒り玄米をブレンドしたお茶。玄米のポップコーンのような香りが湯気から先に立ち、渋味をやわらげる組み合わせです。玄米茶の記事では、なぜこのブレンドが生まれたのか、歴史的な背景も含めて解説しています。

番茶は二番茶以降の成熟した葉や茎が中心です。一番茶よりも成分が薄く、あっさりした味わいで、日常使いのお茶として親しまれています。ほうじ茶との違いは意外と知られていないので、番茶とほうじ茶の違いの記事で整理しています。

釜炒り茶は、日本では珍しい釜炒り製法のお茶。宮崎、嬉野などで作られ、蒸し製の日本茶にある磯の香りを持たず、炒り香のすっきりした仕上がりです。釜炒り茶の記事で産地と中国緑茶との比較も解説しています。

被覆栽培茶(玉露、かぶせ茶、抹茶)の栽培方法は、被覆栽培の記事で科学的な背景から解説しています。

私たちFETCのコレクションでは、産地、品種、蒸し度ごとに選べる緑茶の一覧を揃えています。京都、福岡、静岡のシングルオリジン茶を直接農家から仕入れています。

緑茶の製造工程――蒸しが味を決める

最初の工程が蒸しです。摘んだ葉に残る酸化酵素の働きをここで止めるからで、時間の差がそのまま個性になります。短蒸しは香りが立って爽やかに、長蒸しは成分が出やすくなり、まろやかな飲み口になります。

蒸し(殺青)——摘採後、できるだけ早く(理想は数時間以内に)蒸気処理を行います。温度と時間によって蒸し度が決まります。浅蒸し(20〜30秒程度)は香りが立ちやすく、渋味がしっかり出ます。深蒸し(60秒以上)は葉の細胞壁が壊れて成分が溶け出しやすくなり、まろやかで旨味の強い味わいになります。

揉捻(じゅうねん)——蒸した葉を揉んで形を整えます。粗揉(そじゅう)、中揉(ちゅうじゅう)、精揉(せいじゅう)と段階があり、それぞれ温度、時間、圧力が調整されます。この工程で葉の内部成分が表面に引き出され、抽出のしやすさが変わります。

乾燥——最終的に水分を5%程度まで下げます。この段階の製品を「荒茶(あらちゃ)」といい、さらに選別、ブレンド、仕上げ乾燥を経て市販品になります。

工程のより詳しい説明は、不発酵茶の製造工程の記事で各ステップを丁寧に解説しています。

緑茶の味わいを決める3つの成分

私たちFETCは、緑茶の味をこの3成分の重なりで見ています。カテキンが渋味を作り、テアニンが旨味と甘さを支え、カフェインが苦味と軽い覚醒感を添えることで、すっきりにも濃厚にも振れます。

「カテキン」(渋味や苦味に関わるポリフェノール)は、日光に当たるほど増えます。露地栽培の煎茶や番茶はカテキンが多く、渋味のシャープな味わいになります。

「テアニン」(緑茶特有のアミノ酸で、旨味と穏やかさに関わる成分)は、被覆栽培(遮光)で増えます。光合成が抑制されると、テアニンがカテキンに変換されにくくなるためです。玉露、かぶせ茶、抹茶に旨味が多いのはこの理由です。

「カフェイン」は若い新芽ほど多く含まれます。一番茶、玉露、抹茶でカフェインが高く、成熟した葉を使う番茶(二番茶以降)でカフェインが低くなります。ほうじ茶はMEXT食品成分表(八訂)では煎茶と同程度(約20mg/100mL)で、焙煎による減少は限定的です。

成分の詳細は緑茶の成分、栄養素の記事で、EGCG、テアニン、ビタミンCまで踏み込んで解説しています。

緑茶のカフェインと効能

私たちFETCの目安では、玉露は約100〜160mg/100mL、煎茶は約20〜30mg/100mLと差があります。ただ、緑茶はテアニンも一緒に含むため、覚醒感が出てもコーヒーほど鋭くなりにくい点が特徴です。飲む場面に合わせて種類を選ぶと、カフェインとの付き合いがしやすくなります。

種類 カフェイン量目安 備考
玉露 約100〜160mg/100mL 被覆でテアニンとカフェイン共に増加
抹茶(2g一服) 約60〜70mg/服 茶葉を全量摂取
かぶせ茶 約30〜50mg/100mL 遮光時間が長いほど増加傾向
煎茶 約20〜30mg/100mL 標準的な淹れ方(80°C)
番茶 約10〜15mg/100mL 成熟葉でカフェインが少ない
玄米茶 約10mg/100mL 玄米でお茶成分が希釈される
ほうじ茶 約20mg/100mL(MEXT八訂) 焙煎によるカフェイン減少は限定的。煎茶と同程度

テアニンはカフェインと同時に摂取することで、覚醒作用を穏やかにする働きが報告されています(研究によりα波の増加が確認済み)。玉露を飲んだときの感覚が「コーヒーとは違う」と感じる方が多いのは、この成分バランスによるものです。

詳しい根拠とデータは、緑茶のカフェインの記事緑茶の健康効果の記事でそれぞれ解説しています。

おいしい緑茶の淹れ方

温度が最も重要な変数です。高温で淹れると渋味、苦味(カテキン)の抽出が速まり、低温では旨味(テアニン)が引き出されやすくなります。種類ごとの目安は以下の通りです。

種類 湯温 茶葉量 抽出時間
玉露 50〜60°C 4〜5g / 60mL 90〜120秒
かぶせ茶 65〜70°C 3〜4g / 150mL 60〜90秒
煎茶 70〜80°C 3〜4g / 200mL 60〜90秒
深蒸し煎茶 70〜75°C 3〜4g / 200mL 45〜60秒
番茶 80〜90°C 3〜5g / 200mL 30〜45秒
玄米茶 80〜90°C 3〜5g / 200mL 30〜45秒
ほうじ茶 90〜100°C 3〜5g / 200mL 30〜45秒

ほうじ茶だけは例外で、焙煎によって成分が変化しているため、高温で淹れた方が香ばしさが引き立ちます。

煎茶の基本的な淹れ方は煎茶と深蒸し煎茶の淹れ方の記事で丁寧にまとめています。温度と成分の関係はお茶と温度の記事で科学的に整理しています。

緑茶を飲み続けてきて、あらためてそのスケールを意識することがあります。玉露一杯の旨味の深さ、ほうじ茶の炒り香が夜に合う理由、新茶の煎茶が春を告げるような、あの清涼感。同じ植物から、これほど異なる顔が生まれる。私たちFETCがお茶を伝えたいと思い続けている理由の一つは、この多様さにあります。

よくある質問

日本の緑茶と中国緑茶は何が違う?

日本の緑茶は摘採後すぐ蒸して酸化を止めるのが基本です。中国緑茶は釜炒りが多く、蒸し製の日本茶は青い香り、旨味、磯のような余韻が出やすいです。

玉露や抹茶の旨味が強い理由は?

玉露と抹茶の原料になる碾茶は、20日以上遮光して育てます。光合成が抑えられ、テアニンが残りやすくなるため、渋味より旨味と甘い余韻が前に出ます。

煎茶を渋くしすぎない淹れ方は?

煎茶は70〜80°C、茶葉3〜4gに対して湯200mL、60〜90秒が目安です。熱湯ではカテキンが早く出るため、渋味や苦味が強くなりやすいです。

カフェインが少なめの緑茶はどれ?

番茶は成熟した葉が中心で約10〜15mg/100mL、玄米茶は玄米で茶成分が薄まり約10mg/100mLです。ほうじ茶は玉露より低い一方、約20mg/100mLが目安です。

ほうじ茶と玄米茶はどう違う?

ほうじ茶は番茶や茎茶を約200°Cで焙煎したお茶で、ナッツやカラメルの香りが出ます。玄米茶は煎茶や番茶に炒り玄米を合わせ、穀物の香ばしさが加わります。