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平成29年の奈良県のお茶の生産量は1,730トンと、この年の生産量第7位の都道府県です。
奈良県で作られたお茶は、総称して「大和茶」と呼ばれ、かぶせ茶・煎茶・番茶・碾茶が生産されています。
奈良県のお茶づくりの歴史
奈良県でのお茶づくりの始まりには、弘法大師(空海)が関わっています。
806年、唐からお茶の種を持ち帰った弘法大師は、弟子の堅恵にその種を与え、堅恵はその種を佛隆寺(仏隆寺)に植えたといわれています。またこの時、弘法大師は唐から石製の茶臼も持ち帰ったと伝えられており、その茶臼は現在も仏隆寺で保管されています。
その後、寺院を中心にお茶の文化が広がり、室町時代には、奈良出まれの茶人・村田珠光によって「侘び茶」が生まれました。「侘び」の精神を重んじる茶の湯である「侘び茶」は、後に千利休が完成させる茶の湯や、現代の茶道へとつながっていきます。
自然条件に恵まれただけでなく、寺院が多いことから、仏教との関係でもお茶が広まり、お茶処として発展してきた歴史を持つ、国内でも珍しい茶の産地となっています。
栽培している地域
大和茶は主に、奈良県の東北部にある大和高原エリアで栽培されています。
大和高原は奈良市、天理市、桜井市、宇陀市などに渡って広がる、山間の冷涼地であり、日照時間が短く、朝晩の寒暖差が大きいため、良質なお茶を作るのに非常に適したエリアです。
日照時間が短いためにお茶がゆっくりと育ち、寒暖差により葉に養分がたっぷりと蓄えられたお茶が作られています。
中でも、奈良市月ヶ瀬で作られる「月ヶ瀬茶」は、銘茶として名高いお茶の一つです。
月ヶ瀬茶
月ヶ瀬はお茶の名産地としてだけでなく、良質の土の産地として、また梅の名所としても知られています。
山間にある栽培地域である月ヶ瀬は、日本で一番お茶の収穫が遅い地域ともいわれています。
通常新茶の収穫時期は5月2日前後ですが、冷涼地で栽培される月ヶ瀬茶は生育が遅く、一番茶の収穫が6月に行われることもあります。4月上旬から収穫がはじまる鹿児島県とは、収穫の時期に大きく違いがあります。
また、月ヶ瀬で栽培されるお茶の約八割がかぶせ茶で、濃い旨味を持つお茶が多いのが特徴です。