Far East Tea Company 編集チーム 約 6 分
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湯のみを顔に近づけると、宮崎のお茶は二つの表情を見せます。平野部で作られる「煎茶」は明るく素直な輪郭を持ち、山あいの「釜炒り茶」には、火で仕上げた葉だけが持つ乾いた香ばしさがあります。同じ県のなかで、その両方が無理なく並んでいるのが宮崎県の面白さです。県全体を一つの味で括れないところも、この産地の大事な特徴です。

農林水産省の2023年統計では、宮崎県の「荒茶」生産量は約3,000トン。全国4位で、国内全体のおよそ4%を占めます。量の中心は煎茶ですが、全国では1%未満しか作られていない釜炒り茶については、宮崎県が現在の主要生産地として知られています。日本全体での位置づけは日本茶の産地一覧でも整理できます。

気候と地理

宮崎県は九州南東部で太平洋に面し、日照時間が長く、雨も多い地域です。年間降水量はおよそ2,500mmに達し、春の立ち上がりも早いため、茶樹は力強く芽を伸ばします。そのため一番茶の始まりが早く、年に二回から三回の摘採がしやすい土地です。

南九州のなかでも、宮崎は早場産地として知られています。4月に入ると製茶場が動き出し、平野部では勢いのある新芽がまとまって摘まれていきます。早い収穫期を持ちながら、量産向きの畑と香りを詰める高地の畑が同居しているところに、この県の幅があります。

ただし、県内の条件は一様ではありません。海沿いの平野や河川沿いには海抜の低い大きな茶園が広がり、日向、都城、串間、川南では量産に向く煎茶づくりが進みます。これに対して北西部の山間地、高千穂や五ヶ瀬では、標高700m前後の畑も珍しくありません。

標高が上がると気温は下がり、昼夜の寒暖差も大きくなります。芽の伸びはゆっくりになりますが、そのぶん香りやうま味の輪郭が締まりやすい。宮崎の釜炒り茶が山の茶として印象に残るのは、この地形差がそのまま味に出るからです。

宮崎県のお茶づくりの歴史

宮崎県の山あいには、昔から自生の「山茶」が見られました。17世紀には茶が年貢や献上に使われた記録があり、栽培以前から土地と茶の距離が近かったことがうかがえます。

釜炒り茶の流れは、九州に伝わった中国系の製茶文化と結びついています。生葉を蒸すのではなく釜で炒る製法は、現在の宮崎でも山間地に受け継がれています。歴史的な起点を宮崎だけに求めるのではなく、九州全体の交流のなかで育った技法として見るほうが自然です。

一方、煎茶づくりの転機としてよく挙げられるのが1751年です。都城島津藩の藩医、池田貞記が宇治で煎茶の製法を学び、宮崎へ伝えたとされます。これによって蒸し製の技術が広まり、後の平野部の大きな生産基盤につながりました。

大正期以降は県の奨励策や共同製茶の整備が進み、宮崎の茶業は量と品質の両方を磨いていきます。近年は全国茶品評会でも評価を重ね、早場産地としての機動力だけでなく、仕上がりの確かさでも名前が挙がる県になりました。

栽培されている品種

栽培面積の中心にあるのは、全国で標準品種となった「やぶきた」です。収量、病害への強さ、仕上がりの安定感のバランスがよく、宮崎の平野部でも山間部でも土台になっています。

そのうえで、宮崎では「さえみどり」の存在感も大きめです。やぶきたよりやわらかいうま味を出しやすく、煎茶では丸み、釜炒り茶では火香と重なったやさしい厚みが出ます。南九州の早い春にも合いやすい品種です。

高千穂で名前が挙がる品種としては「ゆめかおり」も外せません。香気の立ち方に個性があり、釜で炒ることで花のような香りと乾いた温かさが同居します。標準的な煎茶品種だけでは出にくい、宮崎の山らしい一杯になります。

宮崎の品種を考えるときは、名前だけでなく製法まで合わせて見る必要があります。同じ葉でも、蒸して仕上げる煎茶では青さと張りが前に出て、釜炒りでは火の温かさが重なって香りの見え方が変わります。平野部と山間部の差が、品種の個性をさらに豊かなものにしています。

このほか、「さきみどり」や「はるもえぎ」のような早生品種も使われています。春の立ち上がりが早い宮崎では、品種の組み合わせがそのまま収穫時期と仕上がりの幅につながります。煎茶が量の約80%を占める一方で、釜炒り茶の個性を支えているのも、こうした品種の選び方です。

茶産地

宮崎県の茶産地は、平野部と山間部で役割がはっきり分かれます。日向、都城、串間、川南などの平野部では、広い畑と温暖な気候を生かした煎茶づくりが中心です。県全体の生産量を支えているのはこの帯です。

北西部の高千穂や五ヶ瀬に入ると、景色もお茶の作り方も変わります。畑は小さくなり、収量も限られますが、宮崎の名を印象づける釜炒り茶はこの山の側から出てきます。釜炒り茶の製法を先に知っておくと、この違いはさらに見えやすくなります。

五ヶ瀬もまた、高千穂と並んで宮崎の山の茶を支える地域です。冷涼な気候のなかで小回りの利く製茶が行われ、量よりも仕上がりの個性が前に出やすい。高千穂がその代名詞として語られやすい一方で、五ヶ瀬を含めた山間部全体で宮崎の釜炒り茶の輪郭が形づくられています。

高千穂茶

高千穂は標高700m前後の畑が点在する高地です。朝晩の気温差があり、芽は平野部よりゆっくり育ちます。ここで主役になるのは蒸し製ではなく釜炒りで、葉は針のようにまっすぐではなく、やや緩く曲がった形に仕上がります。

淹れたときの水色はやや淡い金色寄りで、香りには「釜香」という火入れ由来の乾いた温かさがあります。ほうじ茶のように強く前に出る香りではなく、後口に静かに残るタイプです。ゆめかおりのロットでは、その上に花のような香りが重なります。

よくある質問

宮崎の釜炒り茶は嬉野の釜炒り茶とどう違いますか

どちらも釜で炒る日本の緑茶ですが、背景は少し異なります。歴史的な系譜をたどるなら佐賀県嬉野が重要で、現在の生産量や山の個性で見ると宮崎の存在感が大きい。違いは佐賀県・嬉野の記事でも比べられますが、宮崎は高千穂の高地条件と、さえみどりやゆめかおりの使い方が味に出やすい産地です。

宮崎県では煎茶も多く作られていますか

はい。県内生産量の約80%は煎茶で、量の主役はあくまで煎茶です。釜炒り茶は全国全体では1%未満の希少な製法ですが、宮崎では県の輪郭をはっきり見せる存在として残っています。

宮崎の茶産地を訪ねるならいつがよいですか

一番茶が始まる4月下旬から5月上旬は、畑の動きが最も見えやすい時期です。平野部では新芽の勢いを、山の高千穂では涼しさの残る空気と釜炒り茶の現場を感じやすい季節でもあります。

私たちが宮崎のお茶を見るとき、惹かれるのは量の多さより、南国の平野と山の釜が同じ県のなかで共存していることです。そこに静かな説得力があります。まずは煎茶で土地の明るさを、次に釜炒り茶で火の余韻を確かめてみると、宮崎という産地の輪郭が自然に立ち上がります。

よくある質問

宮崎の釜炒り茶は嬉野の釜炒り茶とどう違いますか

どちらも釜で炒る日本の緑茶ですが、背景は少し異なります。歴史的な系譜をたどるなら佐賀県嬉野が重要で、現在の生産量や山の個性で見ると宮崎の存在感が大きい。違いは 佐賀県・嬉野の記事 でも比べられますが、宮崎は高千穂の高地条件と、さえみどりやゆめかおりの使い方が味に出やすい産地です。

宮崎県では煎茶も多く作られていますか

はい。県内生産量の約80%は煎茶で、量の主役はあくまで煎茶です。釜炒り茶は全国全体では1%未満の希少な製法ですが、宮崎では県の輪郭をはっきり見せる存在として残っています。

宮崎の茶産地を訪ねるならいつがよいですか

一番茶が始まる4月下旬から5月上旬は、畑の動きが最も見えやすい時期です。平野部では新芽の勢いを、山の高千穂では涼しさの残る空気と釜炒り茶の現場を感じやすい季節でもあります。 私たちが宮崎のお茶を見るとき、惹かれるのは量の多さより、南国の平野と山の釜が同じ県のなかで共存していることです。そこに静かな説得力があります。まずは煎茶で土地の明るさを、次に釜炒り茶で火の余韻を確かめてみると、宮崎という産地の輪郭が自然に立ち上がります。