海外の抹茶売り場で必ずといっていいほど目にする「セレモニアルグレード」の表示。日本のお茶業界にいると違和感を覚えることもある言葉ですが、使い方を知ると実は便利な入口でもあります。ただし、この言葉だけでは品質の全体像は見えてきません。
日本国内にはセレモニアルグレードという公的な基準がありません。輸出市場で「飲用向きの抹茶」と「調理用の抹茶」を分けるために生まれた表現で、日本の産地では薄茶向き・濃茶向き・加工用という用途の言葉のほうが通ります。名前が間違っているというより、見ている軸が違うんです。
日本では抹茶をどう分類しているか
日本の茶業者が品質を語るとき使うのは、用途に基づく分類です。
「薄茶」(うすちゃ)向きは、茶筅で点てて泡を立てる一般的な飲み方に適した抹茶。旨味と甘味が均衡し、苦味が穏やかなものが選ばれます。「濃茶」(こいちゃ)向きはさらに繊細で、少量の湯で練るように点てるため、雑味があると隠しようがありません。最高品質の碾茶だけが濃茶に耐えます。
料理・ラテ用はまた別の設計です。ミルクや砂糖に負けない味の強さが求められるので、あえて渋味や苦味のしっかりした材料が使われることもある。薄茶向きの繊細な抹茶をラテに使うと、良さが消えてしまうことも。用途が違えば、「良い抹茶」の定義が変わるのだそう。
品質を決めるもの — 碾茶・品種・被覆・石臼
抹茶の品質は、粉になる前の「碾茶」(てんちゃ)で決まります。碾茶は被覆栽培で20〜30日間遮光して育てた葉を蒸し、揉まずに乾燥させたもの。遮光によって「テアニン」(旨味に関わるアミノ酸)が増え、「カテキン」(渋味・苦味の成分)の生成が抑えられます。
品種の影響も大きい。さみどりは旨味が深く色が鮮やかで、宇治の薄茶の定番。おくみどりは穏やかなバランス型で日常使いに向きます。ごこうは濃厚な甘味を持ち、濃茶に選ばれることが多い品種です。同じ「抹茶」の名前でも、品種が変われば一碗の性格はかなり変わります。
石臼も見逃せません。花崗岩の石臼は1時間に数十グラムしか挽けませんが、粒子が細かく口当たりがなめらか。泡立ちもきめ細かくなります。工業用のボールミルで大量に挽いた粉末と比べると、舌触りの差は歴然です。製造工程の全体は抹茶・碾茶の製造工程の記事でまとめています。
自宅でできる品質の見分け方
品質を見分けるのに専門の分析器は要りません。茶こしで2gほどふるい、75〜80℃の湯を60〜70mL注いで茶筅で10〜15秒振る。同じ条件で試すと差が見えてきます。点て方の詳しい手順は抹茶の点て方を参考にしてください。
色は鮮やかな深い緑が目安。黄色やオリーブ色に寄っていたら、遮光不足か鮮度の問題。香りは青草の中に甘味や海苔のようなニュアンスがあるのが良いサイン。干し草っぽい香りは劣化の可能性。泡は細かく持続するほど挽きが良い証拠で、大きな泡がすぐ消えるなら粒子が粗い可能性があります。
味は旨味が先に来て、甘味がその下に流れ、苦味は最後にほんの少し。苦味が最初に来るなら、グレードが低いか保存状態の問題です。開封後は密封して冷蔵保存し、1か月以内に使い切るのが風味を保つ目安。
セレモニアルグレードという言葉との付き合い方
この言葉は間違いではないけれど、それだけで品質は判断できない。産地名(宇治、西尾)、品種名、薄茶向きか濃茶向きかの表記、石臼挽きかどうか。そういった具体的な情報のほうが、一碗の味を予測する手がかりになります。
私たちFETCが日本の産地で抹茶を選ぶとき、セレモニアルグレードかどうかより先に見るのは碾茶の素性です。どの畑か、何日遮光したか、どの品種か、いつ挽いたか。ラベルの向こうにある茶葉の履歴。そこに品質の答えがあります。
抹茶と碾茶のつながりについて詳しくは抹茶・碾茶の記事をご覧ください。
カフェイン量については抹茶のカフェインで詳しく解説しています。
抹茶ラテの作り方は「抹茶ラテの作り方|本格レシピとコツ」で詳しく紹介しています。
