お茶の被覆栽培

お茶の栽培方法の一つである「被覆栽培」。

この方法で作られた茶葉は「玉露」や「碾茶」「かぶせ茶」に加工されますが、なぜこれらのお茶を作るのに被覆栽培が行われるのでしょうか。

被覆栽培って?

被覆栽培とは新芽の育成中に茶樹に覆いをかけ、一定期間日光を遮って栽培する方法のこと。茶業界では「被せ」とも呼ばれる方法で、高品質な茶葉を作る際に多く行われる栽培方法です。

この被覆栽培を20日間前後、もしくはそれ以上の期間行って作られるのが玉露や碾茶(抹茶の原料茶)、それらよりも期間を短くし10日前後の被覆で作られるのがかぶせ茶です。

被覆栽培の目的は?

この被覆栽培、50mにも及ぶ長いネットを茶畑の畝一本一本にかけ、摘採前には再びそのネットを回収してから摘採を行うため、非常に手間と時間のかかる作業です。

では、そんな面倒な被覆栽培を行う目的は何なのでしょうか?

味・香り・水色の三つの観点から、被覆栽培のメリットについてご紹介します。

被覆栽培によって作られる濃厚な旨味

被覆栽培を行う一番の理由は、やはりお茶の「旨味」にあります。

お茶の主な旨味成分である「テアニン」は、日光に当たることで渋味成分である「カテキン」に変化するという性質を持っています。

被覆栽培では日光を遮って栽培することで、テアニンがカテキンに変化するのを防ぐことができ、旨味をたっぷりと蓄えたお茶を作ることができるのです。

また、カテキンよりもさっぱりとした苦味のカフェインは、遮光することでその量が増えるため、被覆栽培のお茶は露天栽培のお茶に比べ、渋味・苦味が軽くなり甘みを感じやすくなります。

被覆栽培で作られる香り「覆い香」って?

被覆栽培を行うことによって、茶葉には「覆い香」と呼ばれる、海苔のような独特の香りが付加されます。

これは「ジメチルスルフィド」という香気成分が作られることで生まれる香りで、この成分は多すぎると悪臭の原因となりますが、少量であれば他の香気成分と混じり合い、お茶の爽やかな香りを作り出してくれるのです。

被覆栽培を行って作られた証拠とも言える「覆い香」は、高級茶の証とも言える香りなのです。

ただし「覆い香」が付加される分、茶葉や品種そのものが持つ香りが若干弱まってしまうため、そういった香りを残したい場合には不向きな栽培方法です。

鮮やかな濃緑を作り出す被覆栽培

被覆栽培は、茶葉の色、ひいては水色も変化させます。

日光を遮ることで、茶葉はより少ない日光で光合成を行うために、茶葉中の葉緑素(クロロフィル)を増やします。葉緑素は葉の色素なので、通常の茶葉と比べて緑色が濃くなり、鮮やかな濃緑の茶葉に育つのです。

また、少しでも日光を浴びる面積を広げるために、茶葉はより大きく、そして薄く育ちます。通常の茶葉よりも薄く育った新芽は柔らかく、加工がしやすいため、ピンと針のように伸びた美しいお茶が作れることも、被覆栽培の目的の一つです。

被覆栽培で作られるお茶

上記のように、被覆栽培のお茶は露天栽培のお茶に比べ、鮮やかな緑色の水色になり、覆い香から生まれる芳潤な香り、そして濃厚な旨味を感じられる味わいが特徴です。

この鮮やかな色味、渋みの軽い味わいが「玉露」や「碾茶」に適しています。

日本最高級の緑茶「玉露」

「玉露」は最高級の緑茶とされており、作られる際には、20日間もの期間、被覆栽培が行われます。

多くの場合手摘みで作られ、被覆栽培の手間も含めて、非常に丁寧に作られるお茶です。

手間隙をかけて作られる、トロッとした舌触りと共に広がる濃厚な旨味と芳醇な香り。品評会で高い評価を受けたものは、1kg30万円もの値が付くこともある、正に最高級のお茶です。

鎌倉時代から続く伝統のお茶「碾茶・抹茶」

鎌倉時代初期に中国から伝わり、現代も茶道で使われる「抹茶」、そしてその原料となる「碾茶」も、20日間もの被覆栽培を経て作られています。

抹茶はその色が非常に重要となるため、鮮やかな水色を作り出すために被覆栽培が行われるのです。

玉露と煎茶の中間「かぶせ茶」

三重県で多く作られる「かぶせ茶」は、10日間前後の被覆栽培で作られる、ちょうど玉露と煎茶の中間のようなお茶です。

通常の煎茶と比べて旨味が濃く、覆い香も感じられるかぶせ茶は、日々のちょっとした贅沢にピッタリです。