煎茶を一口飲んだ後に舌の奥で感じる、なじみのある乾いて引き締まるような渋味は、カテキンが唾液中のタンパク質と結合することで起こります。緑茶の渋味は主に、茶葉に含まれる「ポリフェノール」の一種であるカテキンから生じます。この相互作用は渋味の説明につながります。
中でも「EGCG(エピガロカテキンガレート)」は緑茶の全カテキンのおよそ50〜70%を占め、最も多く、最も研究が進んでいるカテキンです。EGCGは抗酸化活性、抗菌特性、心血管系の指標について研究されています。ただし、カテキンの効果を正しく理解するには、「試験管の中での結果」と「お茶を飲んで実際に得られること」の間にある距離感を知っておくことが大切です。風味とともに、研究で示されていることと、まだ示されていないことを理解しておきたいところです。
緑茶の主要なカテキン4種と役割
カテキンは単一の化合物ではありません。緑茶の主要なカテキンは、構造が少しずつ異なるポリフェノールであるEGCG・EGC・ECG・ECの4種類です。
| カテキン種(略称) | 全カテキンに占める割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| エピガロカテキンガレート(EGCG) | およそ50〜70% | 最も多く、最も研究が進んでいる抗酸化成分 |
| エピガロカテキン(EGC) | 割合は茶葉・条件により変動 | 非ガレート型 |
| エピカテキンガレート(ECG) | 割合は茶葉・条件により変動 | ガレート型で渋味に寄与 |
| エピカテキン(EC) | 割合は茶葉・条件により変動 | 非ガレート型で、引用された比較では渋味が穏やか |
出典:Khan & Mukhtar(2018)のEGCGの割合、Deliusら(2017)の唾液との結合比較。
EGCGが最も多く、日常的に「緑茶の抗酸化成分」と呼ばれるのは通常EGCGです。4種のうち、EGCGとECGは「ガレート型」と呼ばれ、渋味の大部分をもたらします。EGCとECは「非ガレート型」で、渋味は控えめ。緑茶を飲んだときに感じるあの引き締まる感覚は、主にガレート型カテキンが唾液中のタンパク質と結合することで起きています。4種はいずれもフラボノイドの仲間です。
また、カテキンは酸化に弱い成分です。烏龍茶や紅茶の製造工程では、酸化によってカテキンの一部が「テアフラビン」や「テアルビジン」などの別のポリフェノールに変わります。これが紅茶の深い琥珀色と、緑茶とは異なる、よりまろやかな渋味の正体です。残るカテキンの量は、茶や製造条件によって変わります。カテキン量は茶の細かな種類や入手元、淹れ方によって変わり、全茶種の固定順位を裏付ける根拠はありません。緑茶の成分全体の記事では、テアニンやカフェインとともに、茶と抽出物を比べる際の成分組成と摂取形態について紹介しています。
EGCGについて研究が示唆すること
EGCGは広く研究されています。研究結果は興味深いものですが、実験室での結果と、一杯のお茶が実際に体へ届けるものとの間には隔たりがあることも覚えておきたいところです。
抗酸化作用
EGCGは実験室条件で高い抗酸化能を示します。実験室条件では、EGCGが電子を供与して自由基を効率よく中和します。試験管内の抗酸化活性を、飲茶によるヒトの効果にそのまま当てはめることはできません。飲茶がヒトの体内で意味のある抗酸化効果をもたらすかどうかは別の問題で、証拠はまだ発展途上です(Higdon & Frei, 2003)。緑茶の抗酸化作用の記事では、茶の抗酸化成分の働きと茶種間の比較を紹介しています。
抗菌作用
EGCGは実験室条件で、特定の細菌やウイルスに対して活性を示します。日本の高校生を対象に緑茶うがいと水うがいを比べた試験では、検査で確認されたインフルエンザの発症率に有意差は認められませんでした(Ideら, 2014)。実験室の条件と複雑なヒトの免疫系は異なるため、これらの結果は慎重に解釈する必要があります。実験室での結果がそのままヒトの体内でも再現されるわけではなく、飲用での効果については引き続き研究中です。
心血管系の指標
成人の無作為化比較試験では、緑茶飲料や抽出物の摂取と血中脂質が調べられています。Zheng et al.(2011)のメタ分析では複数の研究を統合してLDLの小幅な低下を確認しています。ただし、試験結果と同じ変化が普通の一杯で得られるとは限りません。
体内での吸収について
研究の数が多い一方で、EGCGは吸収率が低いことがわかっています。Chow & Hakim(2011)によると、緑茶カテキンの吸収と経口バイオアベイラビリティを調べた研究の多くは実験動物を対象とし、あるラット研究ではEGCGの経口バイオアベイラビリティが1.6%と報告されています。濃縮抽出物や精製EGCGを使う研究もあり、投与量や摂取形態は一般的な茶の浸出液とは異なります。このことがお茶に価値がないことを意味するわけではありませんが、高用量の実験室での結果を日常の飲茶に直接当てはめるのは単純ではありません。
研究ではカテキンの有用性が示唆されています。ヒトの臨床効果に関わる具体的な機構や必要用量は、まだ明確になっていません。普段の飲茶と健康との関連を広く見るには、緑茶の健康効果の記事で疫学的な観点を紹介しています。こちらもあわせて読むと理解が深まります。
お茶の種類とカテキン量の違い
同じ「緑茶」でも、カテキン量は栽培方法と製法で変わります。日光の量も栽培条件の一つです。
| 茶種 | カテキン量の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 煎茶(露天栽培) | 含量は品種・栽培条件などで変動 | 露天栽培 |
| 番茶(成熟葉など) | 含量は原料・製法により変動 | 成熟葉という名称だけで一定の順位は決められない |
| 玉露(被覆栽培) | 含量は遮光条件などで変動 | 遮光条件が成分組成に影響 |
| 抹茶(被覆栽培・粉末) | 摂取量は粉末量と製品の含量による | 懸濁した粉末も飲むが、他の茶より摂取量が多いとは限らない |
| 烏龍茶 | 含量は製法などで変動 | 発酵工程でポリフェノール組成が変化 |
| 紅茶 | 含量は製法などで変動 | 酸化によりカテキンの一部が別のポリフェノールに変化 |
日光や遮光の条件は、茶葉のテアニンやカテキンの含量に影響します。実験では成分ごとの変化が異なり、日光が多いほど全カテキンが増えるとは限りません。遮光条件によっては、露天栽培よりアミノ酸が保持されることが報告されています。
「被覆栽培」(収穫前に遮光シートで日光を遮る栽培法)の詳細は、被覆栽培の記事で読めます。煎茶については煎茶の記事も参考になります。
また、ほうじ茶の場合は少し事情が異なります。ほうじ茶は、番茶や煎茶などを焙煎して作るお茶です。ほうじ茶の成分については別の記事でまとめています。
淹れ方でカテキン抽出量と風味はどう変わるか
カテキンは熱に溶けやすい成分です。一定の抽出条件では高温ほどカテキンが溶出しやすくなることがありますが、その結果は時間とカテキンの種類にも左右されます。長時間の加熱では成分が変化することもあります。カテキンの抽出は渋味にも関わりますが、渋味は茶葉、茶水比、時間などによっても変わります。
一方、テアニンは低温でも溶け出します。低温ではアミノ酸やカテキンの抽出が変わることがあり、成分の割合は茶葉や抽出条件によって変わります。これは、緑茶を淹れるときの風味の基本的なトレードオフです。抽出中の湯温の変化も条件の一つです。器の素材については別の記事で紹介しています。
- 高温ではカテキンの抽出量が増えることがありますが、渋味は茶葉・茶水比・時間によっても変わります。
- 低温では抽出される成分のバランスが変わることがありますが、温度だけで甘味や高いテアニン比率が保証されるわけではありません。
- 水出しでも、非ガレート型を含むカテキンは溶出することがあります。量は茶葉、温度、時間によって変わります。
- 一定の抽出条件では時間を延ばすとカテキンが増えることがありますが、長時間の加熱では成分が変化したり分解したりすることもあります。
カテキン量は収穫期、品種、栽培条件で変わることがあり、遅い時期の収穫ほど多いとは限りません。収穫期によって成分組成は変わりますが、実際のカテキン量や風味は品種・栽培条件・抽出条件にも左右されます。
淹れる温度は、自分で最も調整しやすい変数です。お茶と温度の記事では、水温がそれぞれの茶種にどう影響するかを説明しています。抹茶は粉末も飲むため、摂取するカテキン量は使う粉末の量とその含量によって変わります。抹茶の成分については抹茶・碾茶の記事もどうぞ。
茶にはテアニンやカフェインも含まれ、抽出物との比較では成分組成と摂取形態も考える必要があります。
私たちの茶葉コレクションには収穫期や産地の異なる煎茶があり、カテキン量は茶葉と淹れ方によって変わります。
この記事の健康に関する情報は、公表された研究に基づき、教育目的でのみ紹介しています。医療上のアドバイスではありません。健康に関するご不安や判断については、資格を持つ医療専門家にご相談ください。
参考文献
- Khan & Mukhtar, Nutrients (2018) — EGCGが全カテキンの50〜70%を占めると記載した総説です。
- Cabrera et al., Journal of the American College of Nutrition (2006) — 緑茶の成分と関連するヒト研究を扱う総説です。
- Higdon & Frei, Critical Reviews in Food Science and Nutrition (2003) — 茶カテキンとポリフェノール、代謝、抗酸化機能の研究を扱うレビュー論文です。
- Zheng et al.(2011), American Journal of Clinical Nutrition — 成人の緑茶摂取と血中脂質指標に関する無作為化比較試験のメタ分析です。
- Manach et al., American Journal of Clinical Nutrition (2004) — 食事性ポリフェノールの供給源と生体利用性を扱う総説です。
- Chow & Hakim, Pharmacological Research (2011) — 茶のヒト薬物動態と化学予防研究を整理したレビュー論文です。
- 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂) — 茶類の浸出液におけるタンニン(カテキン類を含むポリフェノール)の値を掲載しており、カテキン量そのものは公表していません。
- NIH国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Green Tea」 — 研究、安全性、薬との相互作用の概要です。
よくある質問
カテキンとEGCGの違いは何ですか?
EGCGはカテキンファミリーのひとつで、最も多く含まれ、最も研究が進んでいる成分です。「緑茶のカテキン」と言うとき、数値的な主役はEGCGです。EGC・ECG・ECも緑茶の主要なカテキンで、その割合は変動します。
煎茶からカテキンをより多く摂るにはどうすればよいですか?
煎茶のカテキン量は、茶葉と淹れ方によって変わります。一定の抽出条件では、湯温を高くしたり浸出時間を長くしたりするとカテキン抽出量が増えることがありますが、長時間の加熱ではカテキンが変化したり分解したりすることもあります。渋味は茶葉・茶量と水量の比率・時間によって変わります。緑茶の成分全体では、テアニンやカフェインもあわせて紹介しています。
カテキンはどのくらい吸収されますか?
緑茶で最も多いカテキンのEGCGは、吸収率が低いことがわかっています。カテキンの吸収を調べた研究の多くは実験動物を対象としています。濃縮抽出物や精製EGCGを使う研究もあり、投与量や摂取形態は一般的な茶の浸出液と異なるため、高用量の実験結果を日常の飲茶にそのままあてはめることには慎重さが必要です。この情報は医療上のアドバイスではありません。健康に関するご不安は医療専門家にご相談ください。
お茶の渋味は何から生まれますか?
緑茶の渋味の主役はカテキンです。とくにEGCGとECGというガレート型カテキンが渋味の多くを担い、唾液中のタンパク質と結合して、一口飲んだあとに口が引き締まる感覚を生みます。
淹れるときの熱はカテキンにどう影響しますか?
一定の抽出条件では、湯温を高くするとカテキン抽出量が増えることがありますが、結果は時間やカテキンの種類にも左右されます。渋味は茶葉・茶量と水量の比率・時間によって変わり、温度だけで甘味やテアニンの割合が高まることは保証されません。





