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お茶に含まれる「香気成分」は、香ばしい香りや若葉の香りなど、様々な香りを構成しています。
お茶にはこの香気成分が数百種類以上も含まれており、お茶の複雑で繊細な香りを作り出しているのです。
今回は、お茶に含まれる主な香気成分や、それぞれの香気成分がどのような香りを構成しているのかをご紹介していきます。
お茶の香りは繊細で複雑
「お茶の香り」と一口に言っても、そこには香ばしい香りや若葉の香り、甘い香りや華やかな香りなど、様々な香りが存在します。
それらの香りを構成しているのが、数百種に及ぶ「香気成分」です。
お茶は香気成分を多く含む飲料で、緑茶で200種類ほど、紅茶・烏龍茶には600種類以上の香気成分が含まれています。 お茶の繊細かつ複雑な香りは、様々な香気成分が組み合わさって作られているのです。
紅茶・烏龍茶と緑茶の違い
紅茶・烏龍茶・緑茶は、全て同じチャの葉を原料として作られるお茶です。
しかし、それぞれのお茶は同じ原料から作られたとは思えないほど香りが異なります。その理由は、それぞれの製造方法の違いにあります。
緑茶
緑茶を製造する際には、製造の初期段階で摘みたての茶葉を加熱して「殺青」を行います。これによって、それ以上の酸化発酵が起こらなくなり、茶葉本来の爽やかな香りが保たれるのです。
茶葉の香気成分は、酸化発酵によってより多くの成分が生まれます。酸化発酵をさせずに作られる緑茶は、お茶本来の香りを感じられるお茶なのです。
紅茶・烏龍茶
紅茶や烏龍茶は、緑茶のように初期段階で茶葉を加熱することはせず、まずそれらを萎れさせる「萎凋」という工程を行います。この「萎凋」の最中に酸化発酵が進み、様々な香気成分が生まれます。
緑茶に含まれる香気成分は200種類程度でしたが、紅茶や烏龍茶に含まれる香気成分はなんと約600種類以上。
緑茶にはない花や果物のような華やかな香りが加わり、紅茶や烏龍茶の味わいが作られます。
このように、同じ茶葉でも酸化発酵によって香気成分の種類や量が変化するのです。
主な香気成分
お茶に含まれる香気成分の内、主要なものについて解説します。
リナロール
リナロールは、スズランのような軽く爽やかな香りを持つ香気成分です。
細菌やウィルス感染を防ぎ、免疫力を高める効果があります。
ゲラニオール
ゲラニオールは、バラの花のような香りを持つ香気成分です。
シトラスなどのフレーバーや、ビタミンEやAの製造原料として用いられることもあります。
青葉アルコール
青葉アルコールは、若葉の爽やかな香りを持つ香気成分です。
人造花精油や食品香料などにも用いられています。
シス-ジャスモン
シス-ジャスモンは、ジャスミンやクチナシのような、甘くて重厚感のある香りを持つ香気成分です。
特に紅茶の中に多く含まれるほか、フルーツ系やフローラル系の調合香料によく用いられます。
ジメチルスルフィド
ジメチルスルフィドは、青海苔のような香りを持つ香気成分です。
ノリやワサビなどの食品に含まれており、大量に使用すると悪臭の原因にもなります。
ただし、お茶にはごく微量しか含まれておらず、かつ他の香気成分と混じり合って存在しているため、爽やかな香りを演出する一翼を担っています。
ジメチルスルフィドは被覆栽培によって生まれる成分で、かぶせ茶・玉露・抹茶などの高級茶に良くみられる香りです。その栽培方法から、「覆い香」と呼ばれることもあります。
インドール
インドールは、青苦く重い香りを持つ香気成分です。
ジャスミン油やコールタールなどの中にも含まれています。
単体だとヂメチルスルフィドと同様、悪臭の原因ともなる成分ですが、低濃度であれば花のような香りとして感じられます。
ピラジン
ピラジンは、加熱によって生じる香ばしい香りを持つ香気成分です。
「火香」とも呼ばれ、煎茶やほうじ茶で感じられる香ばしい香りは、このピラジンによるものです。
※参考文献:『日本茶のすべてがわかる本』、『現代用語の基礎知識2019』、『日本大百科全書』、『デジタル化学辞典(第2版)』