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シングルオリジン茶を探していると、度々見かけるこの”さやまかおり”という品種。

今回は、煎茶向け品種でありながら、その特徴的な香りから、時には紅茶に加工されることもあるこの”さやまかおり”についてご紹介します。

「狭山」で作られた「香り」高い緑茶向け品種

読んで字の如く、埼玉県狭山地区で作られた品種である”さやまかおり”。

品種名の由来は様々ありますが、”藤枝かおり”、”むさしかおり”、”ゆめかおり”など、名前に「かおり」と付く品種は、特徴的な香りを持つ傾向があります。

”さやまかおり”も、青さのあるフレッシュな香りを持つことから、この名前が付けられました。

”さやまかおり”の特徴

”さやまかおり”には、以下のような特徴があります。

圧倒的な収量の生産者の味方!

”さやまかおり”の一番の特徴として挙げられるのが、その収量性の高さ。茶園を眺めていても、その芽数の多さは一眼で”さやまかおり”だとわかるほどです。

品種や育て方によって茶の芽の数は異なり、芽の数を重視する「芽数型」の生産者もいれば、芽の品質を重視する「芽重型」の生産者もおり、そのスタイルは様々なのですが、ごく一般的な話として、生産量が多すぎて困るということはほぼありません。

同じ面積で比較しても、他の品種よりも圧倒的に収穫量が多いこの品種は、生産量を安定させるのに一役買ってくれる、生産者にとってありがたい品種なんです。

優れた耐寒性

狭山は日本の茶産地の中でも比較的冷涼な地域で、そんな地域で作られた”さやまかおり”は、高い耐寒性を持っています。

よほどの高地でなければ、日本中の生産地で栽培することができ、炭疽病を除けば病気や害虫にも強く、全国的に非常に栽培しやすい品種だと言えます。

ただし、温暖な地域での品質は”やぶきた”よりも劣るため、南部の温暖な地域よりも、静岡県の山間部や狭山など、冷涼な地域でよく見られる品種です。

”やぶきた”よりも1〜2日早く摘める中生品種

”さやまかおり”は、”やぶきた”と同じ中生品種ですが、”やぶきた”よりも1〜2日早く摘採時期を迎えます。

お茶の摘採時期は非常に短く、一番茶の時期などは、毎日新芽を摘んでもベストなタイミングに間に合わないこともあるほど。そんな多忙な生産者にとって、たった1日でも摘採時期をずらすことができるというのは、農作業の負荷を軽減する意味でも非常に重要なんです。

収穫量・耐寒性・摘採時期、生産者にとって非常に魅力的な特徴を兼ね備えたこの”さやまかおり”。その味わいは、どんなものなのでしょうか?

”さやまかおり”の味わい

きな粉やゴマのようなドライな香り

香りに特徴のある”さやまかおり”。その香りは”やぶきた”と比較するととても力強く、少しクセがあると感じる人も。

特に「萎凋」させて作られた”さやまかおり”の煎茶は、その香りがより強く引き出され、きな粉のような少し甘さのある香りや、炒りゴマのような香ばしさを伴う香りを持っていて、どこかドライな印象が魅力的なお茶です。

産地によっては、爽やかなハーブ様の香りを持つこともあり、清涼感のある香りに仕上がる場合もあります。

キレのある爽やかな渋味

”さやまかおり”は、”やぶきた”と比べると渋味がやや強い品種です。

一般的に「渋味」と聞くと、ネガティブな印象を持ちがちですが、お茶における渋味は、その味わいを構成する大切な要素の一つ。渋味は味わいに奥行きを与え、余韻やキレを演出してくれるのです。

上手く作られた”さやまかおり”の煎茶は、爽やかな渋味を持っており、適した温度帯で淹れることで、渋味の美味しさを楽しむことができます。

煎茶だけでなく紅茶にも

「萎凋」に適した品種である”さやまかおり”は、煎茶だけでなく紅茶に加工されることもあります。

”さやまかおり”で作られた紅茶は、品種の持つ香りが最大限に引き出され、清涼感のある爽やかな印象に仕上がります。

アッサムやセイロンの紅茶のような、華やかさのある芳醇な香りとは違い、和紅茶らしいすっきりとした味わいの紅茶なので、興味がある方は是非一度試してみてください。

”さやまかおり”はとても優秀!

以上のように、生産者にとっても消費者にとっても良い側面が多いこの”さやまかおり”。

シングルオリジン茶を探す中で出会うことも多い品種だと思うので、気になったからはぜひお試しください!

2023年, 9月 20日