お茶にカフェインが含まれているのはよく知られていますが、同じ量のカフェインでも、コーヒーとお茶では体への感じ方がかなり違います。先に数字をお伝えすると、煎茶は100mLあたり約20mg、玉露は約160mg、抹茶は粉末2g分で約64mg、ほうじ茶・烏龍茶はそれぞれ約20mgが目安です。
ただ、数字だけでは伝わらないことがあります。お茶のカフェインがコーヒーと違う感覚をもたらす理由は、一緒に含まれるテアニンとカテキン(EGCG)にあります。ここでは「どのくらい含まれるか」ではなく「なぜそう感じられるのか」という仕組みを見ていきます。茶種別の具体的な量は、下のナビテーブルの専用記事をご参照ください。
茶種別カフェイン量と詳細記事
| 茶種 | カフェイン量(100mL換算) | 詳細記事 |
|---|---|---|
| 煎茶 | 約20mg — 一般的な急須で適量 | 緑茶のカフェイン詳細ガイド |
| 玉露 | 約160mg — 煎茶の8倍 | 緑茶のカフェイン詳細ガイド |
| 抹茶(薄茶1杯、粉末2g) | 約64mg/杯(MEXT八訂 抹茶粉末 3,200mg/100g × 2g) | 抹茶のカフェイン詳細ガイド |
| ほうじ茶 | 約20mg | ほうじ茶のカフェイン詳細ガイド |
| 烏龍茶 | 約20mg | 烏龍茶のカフェイン詳細ガイド |
出典:日本食品標準成分表(2020年版〈八訂〉)文部科学省
なぜお茶のカフェインはコーヒーと違うのか
お茶とコーヒー、どちらも脳内のアデノシン受容体に働きかけるのは同じです。違うのは、カフェインと一緒に何が届くか。
お茶に含まれるテアニンは、脳のアルファ波活動を促すアミノ酸です。アルファ波は「リラックスしながら集中している状態」に関連します。カフェインが促すベータ波(高い覚醒・緊張感)とは対照的。Owen et al.(2008年、Nutritional Neuroscience)の研究では、テアニンとカフェインを同時に摂取した場合、認知課題の成績がそれぞれ単独で摂った場合より高かったと報告されています。
もうひとつ、EGCG(カテキンの一種)がカフェインの吸収や作用プロファイルを穏やかに変えている可能性も議論されています。ただし、人を対象とした大規模試験では十分に検証されておらず、現時点ではあくまで「可能性のある仕組み」として捉えてください。
実感としては、コーヒーは飲んでから15〜45分でカフェインがピークに達し、3〜4時間後に急落しやすい。お茶はピークが緩やかで、作用も長く続く傾向があります。テアニンの効果なのか、EGCGの仮説なのか、単純にコーヒーより濃度が低いからなのか——おそらくその組み合わせです。
テアニンの仕組みについてはテアニンの詳細記事、EGCGを含むカテキンについてはカテキンの詳細記事をご覧ください。
カフェイン量を左右する3つの要因
一杯のカフェイン量を決めるのは、茶葉の育ち方、製法、そして淹れ方の3つです。
| 要因 | カフェインへの影響 | 具体例 |
|---|---|---|
| 被覆栽培(遮光) | 増加 | 玉露・抹茶——遮光ストレスでカフェイン産生が増える |
| 葉の成熟度 | 若い芽ほど高い | 新茶 > 番茶、芽の部分 > 茎の部分 |
| 摘採時期 | 春が最も高い | 一番茶 > 二番茶や三番茶 |
| 焙煎 | わずかに低下 | ほうじ茶は若干低め、劇的な差はない |
| お湯の温度 | 高温ほど多く抽出される | 90℃は水出しより大幅に多い |
| 浸出時間 | 長いほど多い | 3分 > 1分 |
カフェインは本来、茶の木が虫から身を守るために作る苦味成分です。若い芽や環境ストレスを受けた葉ほど多く産生されます。被覆栽培では光が遮られてテアニンからカテキンへの変換が抑制されるため、カフェインとテアニンが同時に高まる——これが玉露の深みのある旨味と集中感をもたらす一因です。被覆栽培の仕組みについては被覆栽培の記事で詳しく説明しています。
酸化(烏龍茶や紅茶)や焙煎(ほうじ茶)によるカフェインへの影響は、一般に思われているほど大きくありません。量を左右するのは、遮光・摘採時期・抽出条件という順番です。温度と時間の関係はお茶と温度の記事も参考になります。
よくある質問
お茶とコーヒー、カフェインが多いのはどちら?
乾燥した茶葉とコーヒー豆を同じ重さで比べると、茶葉のほうがカフェインを多く含む場合があります。しかし一杯で比べると、コーヒーが上回ります。コーヒーは1杯あたりの使用量が多く、高温で抽出するためです。コーヒー200mLで80〜100mg程度に対し、煎茶200mLは約40mgが目安。茶葉に多く含まれていても、カップで飲み比べると差が出るわけです。
一煎目を捨てればカフェインを減らせる?
ある程度は減らせます。短い一煎目(30秒ほど)でカフェインの10〜20%程度が抽出されると研究では示されています。ただし同時にテアニンや風味成分も流れ出るため、肝心の「穏やかな覚醒」をもたらす効果まで一緒に捨てることになります。確実に低カフェインを求めるなら、ほうじ茶や番茶・茎茶、または水出し緑茶を選ぶほうが合理的です。
カフェインはお茶の困った成分ではなく、テアニン・カテキン・温度・葉の育ち方と組み合わさってお茶独自の効き方をつくっている成分です。仕組みを知れば、その日の気分や場面に合った一杯を選びやすくなります。
毎日のカフェイン摂取量と茶種の使い分け
茶の風味を楽しみつつ、日常のカフェイン管理もしたい——この両立のために、厚生労働省はリスク情報の中で「健康な成人は一般に1日400mgが目安」と紹介しつつ、妊娠中や授乳中、カフェインに敏感な方はそれより低く抑えることを推奨しています。100mL換算で考えると、煎茶3杯(約60mg)+抹茶1杯(約64mg)=1日合計124mgで、上限の三分の一程度。玉露は濃度が高く、100mL1杯(約160mg)で1日推奨量の4割を使うイメージです。
また「カップサイズ」も意外と効きます。日本の家庭茶事は50〜100mLの小ぶりな湯のみで分けて淹れるのが一般的で、1煎あたりの実摂取量は式で計算する200mL単杯よりかなり少なくなります。大きめのマグ1杯を、「一煎を3杯に分ける」流儀に変えるだけで風味のニュアンスもカフェイン量も細かくコントロールできます。ベースの使い分けは緑茶のカフェインガイドやお茶と温度が参考になります。
敏感な方向けの順序として、まずはほうじ茶や番茶、茎茶、水出し緑茶を日中の主軸にし、集中したいときだけ抹茶や玉露を選ぶ運用がおすすめです。空腹時に高カフェイン茶を単独で飲むのも避けたほうが安全です。服薬中の方、心血管系の懸念がある方、不眠傾向の方、妊娠中の方は、どんな飲用計画でも医師や専門家に相談してから運用するのが基本です。
時間帯別:おすすめの茶種と淹れ方
朝は抹茶や玉露で集中モードへ、昼は煎茶や包種茶、烏龍茶でバランス、午後はほうじ茶や番茶でリラックスに切り替える——このように「時間帯×茶種×水温」を1枚の表のように管理すると、1日を通してカフェインと風味の両方を設計できるようになります。同じ煎茶でも、70℃ではまろやかな甘味、85℃なら渋味とキレが立つ、という個性の違いがあります。「お茶と温度」記事の対照表を手元に置いておくと役立ちます。
もう一つの実用視点:健康成人が100mgのカフェインを摂取した場合、血中濃度のピークはおよそ30分後、半減期はおよそ5時間です。夜の入眠に敏感な方は、午後3時を1つの線として「その後は低カフェイン茶に切り替える」と決めておくと、睡眠の質を守りやすくなります。このルールは妊娠・授乳中、長期服薬中の方にも適用しやすく、自分自身のペースに合わせた細かな調整は医師や専門家の個別アドバイスが優先です。
ここまでの要点をまとめると、お茶のカフェインは「強い刺激物」ではなく、「設計できる変数」です。茶種、水温、抽出時間、カップサイズという4つのダイヤルを少し動かすだけで、風味も効き方も柔らかく変化していけます。テアニンの詳細記事とカテキンの詳細記事を合わせて読むと、分子レベルの背景もつかみやすくなります。
参考文献
- 日本食品標準成分表(2020年版〈八訂〉), 文部科学省 — 日本茶浸出液・抹茶粉末のカフェイン値
- Owen et al., 2008, Nutritional Neuroscience — L-テアニンとカフェイン同時摂取による認知課題成績の向上
- 農研機構(NARO) — 茶の栽培・製茶研究における機能性成分データ(学術・産業)
- 厚生労働省 — カフェイン摂取のリスクに関する情報提供
緑茶に含まれる成分をもっと広く知りたい方は緑茶の成分概要を、健康効果の全体像は緑茶の健康効果をご覧ください。茶葉のラインナップはこちらのコレクションから——産地や栽培方法も記載しています。
本記事は情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。カフェインへの感受性には個人差があります。健康上の懸念がある方は医師または専門家にご相談ください。
