ほうじ茶カフェイン: 知っておきたい意外な事実
ほうじ茶の成分について
普段からほうじ茶を飲む方はたくさんいらっしゃると思いますが、その中でもほうじ茶に含まれている成分にまで詳しい方は少ないのではないでしょうか?
煎茶や番茶、茎茶を高温で焙じることで作られるほうじ茶は、その加熱の過程で含まれる成分も変化しています。
褐色の水色や独特の香ばしい香り、渋味と苦味の際立ったキレのある味わいは、どのように生まれているのでしょうか。
今回は、そんなほうじ茶に含まれる成分に関してご紹介していきます。
ほうじ茶に含まれる成分
ほうじ茶の一番の特徴は、「焙煎」です。ローストされた香ばしい香りと、すっきりと飲みやすい味わいを作り出すのは、ほうじ茶特有の加工方法である「焙煎」によるものです。当然成分も、加工前の緑茶から変化しています。
カフェイン
ほうじ茶にはカフェインが含まれていない、という話を聞いたことがある方も多いかと思いますが、実はこれは誤りで、ほうじ茶にもカフェインは含まれています。
カフェインは高温で昇華する特性がありますが、その昇華点は178℃と高く、ほうじ茶の加工は200℃前後なので製品によってはカフェインが昇華しきらず、茶葉に残っているものもあるのです。その場合は煎茶や紅茶と同程度のカフェインが含まれています。
お茶の苦味成分であるカフェインは高温で抽出が進むので、高温で淹れることが多いほうじ茶にはカフェインが溶け出しやすいといえます。
カテキン
フラボノイド系のポリフェノールの一種であり、タンニンとも呼ばれるカテキンは、お茶特有の渋み成分です。加熱では含有量が変化しにくい成分なので、煎茶と同程度のカテキンが、ほうじ茶にも含まれています。
褐色物質(メラノイジン)
ほうじ茶特有の褐色の水色は、褐色物質(メラノイジン)によるものです。
生葉の状態や緑茶にはこの褐色物質は含まれていませんが、加工の段階で加熱されるほうじ茶の場合、アミノ酸と糖類を一緒に加熱することでメイラード反応が生じ、褐色物質であるメラノイジンが生まれるのです。
サポニン
茶葉にごく微量含まれる物質であるサポニンは、お茶の苦味を構成する物質の一つであり、界面活性剤としての特性を持ち合わせているため、お茶が泡立つ原因の物質でもあります。
非常に微量なので効能は期待できませんが、ほうじ茶のエグ味・苦味を左右する物質です。
アミノ酸
お茶の旨味成分であるアミノ酸の、およそ50%はテアニンという、お茶に特有のアミノ酸で構成されています。
ほうじ茶の場合、前述のメイラード反応によりアミノ酸がメラノイジンに変化してしまうため、アミノ酸の含有量が緑茶に比べて少ない場合が多いです。
また、ほうじ茶には番茶が使われる場合も多いため、煎茶や玉露と比べると、そもそも生葉の時点でアミノ酸の含有量が少ない場合もあります。
ピラジン(香気成分)
ほうじ茶の一番の特徴である香ばしい香りは、ピラジンという香気成分に依るものです。このピラジンもまたアミノ酸と糖を加熱した際の反応によって生まれる成分で、お茶以外にも様々な食品を加熱することで生まれる物質です。
ほうじ茶のローストしたような香ばしい香りはほぼほぼピラジンによって構成されており、他のお茶には見られない、ほうじ茶特有の成分です。
ビタミン
茶葉にはビタミンA、C、E、B群が豊富に含まれているのですが、ほうじ茶の場合は加熱の段階でビタミンの酸化が進んでしまうため、加工後の茶葉にビタミンはほとんど含まれていません。
クロロフィル(葉緑素)
植物の緑色の色素成分であるクロロフィル(葉緑素)は、当然茶葉にも含まれています。
熱を加えても破壊されにくいのでほうじ茶のにも含まれていますが、クロロフィル自体は脂溶性の成分なので、水には溶け出しにくく、ほうじ茶を飲むだけではほとんど摂取できません。
ほうじ茶には栄養がたっぷり?
以上のように、煎茶に含まれる成分の種類と含有量のバランスは非常にユニークで、それによって飲むことで得られる効能も他のお茶とは変わってきます。
お茶の成分|香気成分
お茶に含まれる「香気成分」は、香ばしい香りや若葉の香りなど、様々な香りを構成しています。
お茶にはこの香気成分が数百種類以上も含まれており、お茶の複雑で繊細な香りを作り出しているのです。
今回は、お茶に含まれる主な香気成分や、それぞれの香気成分がどのような香りを構成しているのかをご紹介していきます。
お茶の香りは繊細で複雑
「お茶の香り」と一口に言っても、そこには香ばしい香りや若葉の香り、甘い香りや華やかな香りなど、様々な香りが存在します。
それらの香りを構成しているのが、数百種に及ぶ「香気成分」です。
お茶は香気成分を多く含む飲料で、緑茶で200種類ほど、紅茶・烏龍茶には600種類以上の香気成分が含まれています。 お茶の繊細かつ複雑な香りは、様々な香気成分が組み合わさって作られているのです。
紅茶・烏龍茶と緑茶の違い
紅茶・烏龍茶・緑茶は、全て同じチャの葉を原料として作られるお茶です。
しかし、それぞれのお茶は同じ原料から作られたとは思えないほど香りが異なります。その理由は、それぞれの製造方法の違いにあります。
緑茶
緑茶を製造する際には、製造の初期段階で摘みたての茶葉を加熱して「殺青」を行います。これによって、それ以上の酸化発酵が起こらなくなり、茶葉本来の爽やかな香りが保たれるのです。
茶葉の香気成分は、酸化発酵によってより多くの成分が生まれます。酸化発酵をさせずに作られる緑茶は、お茶本来の香りを感じられるお茶なのです。
紅茶・烏龍茶
紅茶や烏龍茶は、緑茶のように初期段階で茶葉を加熱することはせず、まずそれらを萎れさせる「萎凋」という工程を行います。この「萎凋」の最中に酸化発酵が進み、様々な香気成分が生まれます。
緑茶に含まれる香気成分は200種類程度でしたが、紅茶や烏龍茶に含まれる香気成分はなんと約600種類以上。
緑茶にはない花や果物のような華やかな香りが加わり、紅茶や烏龍茶の味わいが作られます。
このように、同じ茶葉でも酸化発酵によって香気成分の種類や量が変化するのです。
主な香気成分
お茶に含まれる香気成分の内、主要なものについて解説します。
リナロール
リナロールは、スズランのような軽く爽やかな香りを持つ香気成分です。
細菌やウィルス感染を防ぎ、免疫力を高める効果があります。
ゲラニオール
ゲラニオールは、バラの花のような香りを持つ香気成分です。
シトラスなどのフレーバーや、ビタミンEやAの製造原料として用いられることもあります。
青葉アルコール
青葉アルコールは、若葉の爽やかな香りを持つ香気成分です。
人造花精油や食品香料などにも用いられています。
シス-ジャスモン
シス-ジャスモンは、ジャスミンやクチナシのような、甘くて重厚感のある香りを持つ香気成分です。
特に紅茶の中に多く含まれるほか、フルーツ系やフローラル系の調合香料によく用いられます。
ジメチルスルフィド
ジメチルスルフィドは、青海苔のような香りを持つ香気成分です。
ノリやワサビなどの食品に含まれており、大量に使用すると悪臭の原因にもなります。
ただし、お茶にはごく微量しか含まれておらず、かつ他の香気成分と混じり合って存在しているため、爽やかな香りを演出する一翼を担っています。
ジメチルスルフィドは被覆栽培によって生まれる成分で、かぶせ茶・玉露・抹茶などの高級茶に良くみられる香りです。その栽培方法から、「覆い香」と呼ばれることもあります。
インドール
インドールは、青苦く重い香りを持つ香気成分です。
ジャスミン油やコールタールなどの中にも含まれています。
単体だとヂメチルスルフィドと同様、悪臭の原因ともなる成分ですが、低濃度であれば花のような香りとして感じられます。
ピラジン
ピラジンは、加熱によって生じる香ばしい香りを持つ香気成分です。
「火香」とも呼ばれ、煎茶やほうじ茶で感じられる香ばしい香りは、このピラジンによるものです。
※参考文献:『日本茶のすべてがわかる本』、『現代用語の基礎知識2019』、『日本大百科全書』、『デジタル化学辞典(第2版)』
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お茶の成分|ビタミン
お茶は、ビタミンCをはじめとして、様々なビタミンを含む飲料です。中でもビタミンCは、体の免疫機能を保つ役割を担っている重要な成分で、お茶の健康効果を高める成分でもあります。
ここではビタミンCの基本情報や詳しい効能、効率よくお茶からビタミンCを摂る方法などについてお伝えしていきます。
お茶に含まれるビタミン
お茶に豊富に含まれているビタミンは、以下の3つです。
- ビタミンC
- ビタミンA
- ビタミンE
13種類あるビタミンは水溶性のものと脂溶性のものに分類されますが、ビタミンCは水溶性のビタミン、ビタミンAとビタミンEは脂溶性のビタミンです。
「水溶性」や「脂溶性」という言葉を使うと難しく感じますが、水溶性は水に溶けやすい性質、脂溶性は水に溶けにくい性質のことです。
そのため、茶葉からお茶を淹れて飲む場合、水溶性であるビタミンCは効率的に摂取できますが、脂溶性であるビタミンAやEはほとんど摂取できません。
ビタミンCの効能
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構の調査によると、お茶に含まれるビタミンCの効能は以下の通りです。
- 抗壊血病
- かぜ予防
- 白内障予防
- 抗アレルギー作用
- 免疫機能増強
- 抗酸化作用
- ニトロソアミンの生成抑制
このうち、抗アレルギー作用や免疫機能増強などの効能は良いとして、「抗酸化作用」や「ニトロソアミン」といった言葉には聞き覚えのない方もいると思います。
ここではその2つについて簡単に解説します。
抗酸化作用
抗酸化作用とは、体内の余分な物質を無毒化するはたらきのことです。
「すべての病気の予防になる」と言われるほど重要な機能で、組織の老化を防ぐ役割を担っています。
ニトロソアミンの生成抑制
ニトロソアミンとは化学物質の一種で、強い発がん性を持つ成分です。
ビタミンCを摂取するとニトロソアミンの生成が抑えられるため、結果的にがんの予防につながります。
お茶からビタミンCを摂るためには?
ビタミンCを多く摂りたい場合にオススメなのは「煎茶」です。
ビタミンCは日光を浴びることで生成されるので、直射日光を浴びて栽培される煎茶に多く含まれています。
逆に、覆いをして栽培する玉露や抹茶は、煎茶に比べるとビタミンCの含有量はあまり多くありません。
また烏龍茶や紅茶は、発酵(酸化)の過程でほとんどのビタミンCが変化してしてしまうので、ビタミンCはほぼ含まれていません。
お茶から全てのビタミンを摂取するには?
前述の通り、お茶に含まれる脂溶性のビタミンはお湯には溶け出しませんし、水溶性のビタミンも、その全てが溶け出す訳ではありません。
では、お茶に含まれる全てのビタミンを摂取するためにはどうすれば良いのでしょうか?
粉末茶を選ぶ
お茶に含まれるビタミンは、「粉末茶」を選ぶことによって余すことなく摂取することが可能です。粉末茶は茶葉を粉砕して作られているものなので、茶葉に含まれる成分をそのまま体内に取り込むことができるからです。
ただし、粉末茶を購入する際には、同じく顆粒のお茶である「インスタント茶」と間違えないよう注意してください。
出がらしの茶葉を食べる
茶葉に残ったビタミンを全て摂取するためには、出がらしをそのまま食べるのもおすすめです。
おすすめの食べ方は お茶のおひたしにして食べること。簡単で意外にも美味しく食べられるので、是非試してみてください。
ビタミンEは強い抗酸化作用、ビタミンAはお肌を健康に保つ作用のある成分なので、健康効果だけでなく美容効果も得たい方は是非試してみてください。
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お茶の成分|カテキン
「カテキン」は、お茶に特有のポリフェノールの一種で、悪玉コレステロール値の低下や、ストレス減少など、さまざまな効能を持つ成分です。
ここでは、カテキンの基本情報や、効率よくお茶からカテキンを摂るための方法をご紹介します。
カテキンって?
「カテキン」はポリフェノールの1種で、お茶の渋味の元となるお茶特有の成分です。
タンニンと呼ばれることもありますが、厳密にはタンニンは広く「皮をなめす性質を持った物質」のことを指すため、カテキンと全く同じ意味合いではありません。
お茶の中に含まれるカテキンは、主に以下の4種類。
- エピカテキン
- エピカテキンガレート
- エピガロカテキン
- エピガロカテキンガレート
「ポリフェノールは健康に良い」という話を耳にしたことのある方は多いと思いますが、カテキンも医学的に健康効果が実証されている成分のひとつです。
それぞれ微妙に異なる効果を持っていますが、「悪玉コレステロールを抑える」などの基本的な効能は同じです。
カテキンはお茶の渋味成分
カテキンは、お茶の渋味を構成する成分です。
カテキンにはタンパク質と結合し凝集する性質があります。これが舌で起こると、舌のタンパク質と結合して収斂作用が起き、渋味を感じるのだと言われています。
適度な渋味があることで、お茶の味わいに奥行きが生まれたり、キレのあるお茶になったりと、お茶の味わいを作り上げるのになくてはならない成分なのです。
紅茶・烏龍茶の色が赤いのは、カテキンのせい
カテキンは酸化することで、テアフラビン・テアルビジン類の合体カテキンへと変化します。
カテキンは水溶液中では無色な成分ですが、これらの合体カテキンは赤っぽい色をしているため、酸化発酵を経て作られる紅茶や烏龍茶の水色は赤銅色なのです。
カテキンの効能
カテキンの主な効能には、以下のものが挙げられます。
- 抗菌・解毒作用
- 抗酸化作用
- 悪玉コレステロールを抑える作用
- 脂肪の吸収を抑える作用
- 認知症を予防する作用
- 消臭作用
- ストレスの低下作用
抗菌・解毒作用
カテキンは抗菌・解毒作用を持つ成分です。
O-157やインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎の原因菌に対しての抗菌作用を持ち、赤痢菌・コレラ菌などの食中毒菌やピロリ菌の増殖抑制作用があることも明らかになっています。
また、植物の毒素に多いアルカロイドと結合しやすいため、解毒作用もあります。
抗酸化作用
カテキンには、「抗酸化作用」という健康効果があります。
「抗酸化作用」は、体の中にある余分な物質(活性酸素)を無毒化してくれるはたらきのこと。「すべての病気の予防になる」と言われるほど重要な機能で、組織の老化を防ぎ、免疫力を保つ役割を担っています。
カテキンの抗酸化力はビタミンCやビタミンEの数十倍ともいわれるほど。お茶にはカテキン以外にもビタミンC・Eなどの抗酸化ビタミン類も含まれているので、非常に強い抗酸化作用を持つ飲みものなのです。
悪玉コレステロールを抑える作用
悪玉コレステロールを抑えることもカテキンの効能のひとつ。
コレステロールには「HDLコレステロール(善玉)」と「LDLコレステロール(悪玉)」の2種類がありますが、カテキンはこの内、LDLコレステロールのはたらきを抑える効果を持っています。
中でも、お茶に豊富に含まれる「エピガロカテキンガレート」はその効果が強いと言われています。
脂肪の吸収を抑える作用
カテキンは、食事とともに摂取することで、脂肪の吸収を抑える効果を持っています。
市販されている特保のお茶にもこのカテキンの効能を利用したものがあるように、様々な生活習慣病の原因となる肥満の対策にもぴったりな飲み物です。
認知症を予防する作用
記憶障害や判断力の低下を引き起こし、社会問題の一つにもなっている認知症。
あるアメリカの研究によると、カテキンは特にアルツハイマー型の認知症の予防に効果があることが明らかになっています。
消臭作用
カテキンには消臭作用があることも明らかになっており、口臭の抑制や出がらしを再利用した消臭剤など、様々な製品・利用法が見出されています。
1991年に宇井美樹氏らが行なった研究では、カテキンを含んだチュイーンガムに口臭抑制効果があることがわかっています。
ストレスの低下作用
お茶を飲むと心が落ち着く、と感じたことはありませんか?
実は、お茶を飲むことがでストレスや緊張を取り除く効果があることは科学的に立証されています。
2012年に大和孝子氏らが発表した研究によると、市販の一般茶やカテキン茶を飲むことで以下のような効果が得られたと言います。
- 緊張や不安を取り除く
- 疲労感を回復させ、気分を改善する
また、市販されている高濃度のカテキン茶を飲むと、さらに抑うつや落ち込みを軽減させる効果があったとのこと。
お茶を摂取することで、精神的なストレスを緩和することができるのです。
お茶からカテキンを摂るためには?
カテキンの含有量は、品種や栽培方法、摘採時期によって大きく変化します。品種によって渋味の多寡が変わりますし、日本で多く作られている中国種よりも、インドなどで作られているアッサム種の方がカテキンの含有量は高くなります。
被覆栽培によってカテキンの生成が抑制される場合もありますし、逆に日照時間の長い二番茶・三番茶は、一番茶と比べて多くのカテキンを含んでいます。
ですのでここでは、一般的にお茶からカテキンを多く摂取する方法を以下3点に分けてお伝えしていきます。
- 高温のお湯で淹れる
- 二番茶・三番茶を購入する
- 出がらしの茶葉を食べる
高温のお湯で淹れる
カテキンは「低い温度では水に溶け出しにくい」という性質を持っています。
そのため、70度以上の高温で淹れることで、カテキンの成分がしっかりと溶け出したお茶になります。渋味はやや強くなりますが、カテキンを多く摂るには、高温で淹れるのがオススメです。
二番茶・三番茶を購入する
お茶の葉は、その収穫される時期から一番茶(新茶)、二番茶、三番茶などに分類されます。
一般的には一番茶が最も香りが良く、品質も高いと言われていますが、日照時間が長い時期に育つ二・三番茶は、光の作用によって生成されるカテキン類を、一番茶よりも多く含んで育ちます。
カテキンを多く摂りたい場合には、二番茶・三番茶を選ぶのがおすすめです。
出がらしの茶葉を食べる
カテキンは水溶性の物質ではありますが、その全てがお湯に溶け出す訳ではありません。茶葉に含まれるカテキンを全て摂取するためには、出がらしを食べるのが一番です。
おすすめはお茶のおひたしにして食べること。簡単で意外にも美味しく食べられるので、是非試してみてください。
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お茶の成分|カフェイン
カフェインは、コーヒーやお茶に含まれるアルカロイドの一種で、眠気覚ましや消化・吸収を促進する効能などを持っています。
今回は、カフェインの基礎知識や詳しい効能、お茶から摂取できるカフェインの量についてご紹介します。
カフェインって?
カフェインは、お茶やコーヒーに含まれる「アルカロイド」という化合物の一種です。
お茶・コーヒー・紅茶といった飲料に含まれるほか、栄養ドリンクに配合されていたり、頭痛薬や咳薬などの医薬品にも利用されています。
カフェインはお茶の苦味成分
カフェインは、カテキンやテアニンと同じく、お茶の味わいを構成する成分の一つで、お茶の苦味を構成する成分です。
カテキンが渋味を持つ一方、カフェインはさっぱりとした軽い苦味を演出します。
カフェインを発見したのは?
カフェインは1819年、ドイツの医師であるルンゲという人物によって発見されました。
1819年は日本でいうと江戸時代の後期に当たるので、カフェインの存在はかなり早い時期からヨーロッパで知られていたことになります。
カフェインは、当初コーヒーの中から発見されましたが、1827年にはお茶にも含まれていることが明らかに。
その後、カフェインの持つ多くの効能が確認されるようになりました。
カフェインの効能
カフェインには、以下のような効能があります。
- 眠気を覚ます
- 心臓や腎臓に作用し、利尿を促す
- 胃酸分泌を促し、食物の消化や吸収を助ける
- 体脂肪の分解を促進する
また、カフェインは飲んでからすぐに体に吸収されるので、即効性があるのが特徴です。
カフェインは摂りすぎに注意!
摂取することでさまざまなメリットがあるカフェインですが、摂りすぎるとかえって体に悪いことが分かっています。
たとえば、栗原久氏が2015年に発表した研究によれば、以下のようなことが明らかになっています。
- カフェインは100mg以上摂取すると、睡眠障害のリスク因子となる
- カフェイン200mg以上の摂取から1時間以内は、心筋梗塞の発症リスクが高まる
そのため、眠気を覚ましたいからといって過度にカフェインを摂取することはおすすめしません。
ただし、一般的な煎茶一杯(60ml)に含まれるカフェインの量がおよそ16mg程度なので、あくまで普通にお茶を楽しむ分には健康に問題はありません。
お茶とコーヒーはどっちがカフェインが多い?
「カフェインと言えばコーヒー」というイメージが強いですが、同量の茶葉とコーヒー豆を比べると、カフェイン含有量が多いのはお茶です。
例えば煎茶ならコーヒーの1.7倍、玉露であれば2.7倍程度のカフェインを含んでいます。
ただし、カップ一杯分で比べると、一杯あたりの茶葉・豆の使用量の関係から、お茶よりもコーヒーの方がカフェインを摂取できる量が多くなります。
たとえば、コーヒーとお茶の、100mlあたりのカフェイン含有量を比べると以下のようになります。
- レギュラーコーヒー:約60mg/100ml
- 煎茶:20mg/100ml
- 紅茶:30mg/100ml
- 烏龍茶:20mg/100ml
つまり、カフェインを摂りたい場合には、煎茶よりもコーヒーの方が効率よく摂取することができるのです。
お茶からカフェインを摂るためには?
コーヒーと同様にカフェインを含むお茶ですが、その種類や淹れ方によって、摂取できるカフェインの量が変わります。
ここでは、お茶からカフェインを多く摂る方法についてご紹介します。
玉露・抹茶を選ぶ
カフェインは、成熟した芽よりも、まだ若く柔らかい芽に多く含まれています。抹茶や玉露などの高級茶は、若い芽のみを摘んで作られるため、他のお茶と比べてカフェインの含有量が多いのです。
高温で淹れる
カフェインは低温だと溶け出しにくく、高温に溶け出しやすい成分です。80度以上の熱湯を使って淹れることで、より多くのカフェインを摂取することができます。
ただし、玉露はその豊かな旨味や甘味を味わうお茶です。高温で淹れると、苦渋味が強く出てしまい、折角の玉露の風味を台無しにしてしまうので、その点には注意してください。
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お茶の成分|テアニン
「テアニン」はお茶に含まれるアミノ酸類の一種で、ストレス解消や全身の血行を良くする効能を持っています。
ここでは、テアニンの基礎知識や詳しい効能、テアニンを多く摂れる方法までご紹介していきます。
テアニンって?
「テアニン」とは、お茶に特有のアミノ酸の一種です。
お茶にはテアニン以外にも、以下のようなアミノ酸類が含まれています。
- グルタミン酸
- アルギニン
- アスパラギン酸
- セリン
- その他
中でもテアニンは、お茶に最も豊富に含まれるアミノ酸で、お茶に含まれるアミノ酸類全体の50%程度をテアニンが占めています。
テアニンはお茶の甘味・旨味成分
テアニンはお茶の甘味や旨味を構成する成分です。お茶の旨味は、テアニンとその他のアミノ酸との相乗効果で作り上げられています。
コーヒーやココアには含まれず、お茶を飲むことでしかテアニンの演出する爽やかな甘味や旨味を感じることはできません。
テアニンを発見したのは日本人
テアニンは、1950年に酒戸弥二郎という人物によって、玉露から発見された成分です。
テアニンという名前の由来もお茶にあり、チャの古い学名である「thea sinensis」にちなんで「theanine」と名付けられました。
テアニンの効能
お茶特有の成分であるテアニンには、以下のような効能があります。
リラックス効果
テアニンはお茶の旨味・甘味を司るだけではなく、摂取することで「脳から出るα波が上昇する」という効能があります。
α波とは「リラックスしているときに出る脳波」のことで、科学的には「動物の脳が発生する電気的信号(脳波)のうち、8〜13ヘルツ成分」を指します。
(参考:浅野祐太(2010)「アルファ波とリラックス効果に関する研究」平成22年度電気関係学会東北支部連合大会)
このα波が脳から出ると、以下のような効果が得られます。
- 記憶力の向上
- 集中力のアップ
- 全身の筋肉がほぐれ、血行が良くなる
- ストレスが緩和される
このように、多くの効能を享受できることから、海外ではテアニンを抽出したサプリメントなども販売されており、その健康効果からリラックスをしたい時や集中力を高めたい時などに効果的です。
カフェインの興奮を抑制する
お茶には興奮作用を持つカフェインが含まれており、本来であればお茶にはコーヒーのように強い興奮作用があるのですが、実際にそのような興奮は感じられず、とても穏やかな興奮作用で留まります。
これは、カフェインの興奮作用をテアニンが抑制するためです。
そのため、カフェインから得られる興奮作用をマイルドにし、穏やかな興奮を持続させることができます。
お茶からテアニンを摂るためには?
テアニンは、お茶の中でも特にかぶせ茶・玉露・抹茶などの高級茶に多く含まれる傾向があります。これは、被覆栽培によってテアニンからカテキンが生成されるのを抑制して作られるためです。
また二番茶・三番茶よりも、一番茶に多く含まれており、一番茶の中でも若く柔らかい芽により多く含まれます。一番茶の中でもベストなタイミングで摘採されたお茶に、最も多くのテアニンが含まれているのです。
そのため、「テアニンをしっかりと摂りたい」という方は普段よりも少しお高めのお茶を選んでみてください。
また氷水や低温のお湯でお茶を淹れると興奮作用のあるカフェインの溶出が抑えられます。
そのため、高温で淹れた際よりもテアニンのリラックス効果や旨味をはっきりと感じることができるでしょう。
※参考文献:日本茶検定協会監修(2008)『日本茶のすべてがわかる本』農山漁村文化協会
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緑茶(煎茶)に含まれる成分・効能について
烏龍茶に含まれる成分・効能について
紅茶の成分・効能について
お茶の成分|サポニン
サポニンは配糖体の一種で、お茶にごく微量に含まれる成分です。
抗菌や解熱、抗喘息などの効能があります。
ここでは、サポニンの基本情報から味、効能までご紹介していきます。
サポニンって?
サポニンは配糖体の一種で、お茶にごく微量に含まれる成分です。
石鹸を意味する「シャボン」と語源が同じで、抹茶の泡立ちなどに関与しています。
サポニンはすごく苦い?
サポニンは、独特の苦味や渋味、えぐみを持つ成分です。
ただ、前述の通りサポニンはお茶にごく微量にしか含まれていません。
したがって、サポニンによってお茶が著しく苦くなるということはありません。
サポニンは動物界にも存在する?
サポニンは、植物界の中に多く存在する成分です。
例を挙げると、キキョウや甘草、ナツメの実の中にサポニンが含まれています。
ただし、サポニンは植物に限定された成分というわけではなく、ナマコやヒトデなどの動物もサポニンを保持しています。
※参考:『岩波生物学辞典(第5版)』
サポニンの効能
サポニンには、以下のような効能があります。
- 抗喘息
- 抗菌・抗ウィルス
- 消炎・解熱
- 鎮静
- 血圧を下げる
- 抗肥満
※参考:薬学用語解説(公益社団法人日本薬学会)、機能性成分・活用性等調査(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構)、『日本茶のすべてがわかる本』(農文協)
効能として「抗菌・抗ウィルス」を挙げましたが、サポニンは特にインフルエンザウイルスを撃退するのに効果的だと言われています。
そのため、体調の悪い時には薬と併せてお茶でうがいなどをするのも良いでしょう。