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ほうじ茶のカテキン量は、煎茶の約半分。浸出液100mLあたりおよそ30mgが目安です。

煎茶や玉露に豊富な「カテキン」(渋味や苦味のもとになる成分)は、焙煎の熱で変性し大きく減ります。渋味が消えるのは、成分が引き算されるから。その代わり、焙煎の化学反応が新しい成分を生み出します。炒った穀物のような香ばしさを運ぶ「ピラジン」、琥珀色の水色を作る「メラノイジン」。ほうじ茶の個性は、引き算と足し算の両方でできています。

カフェイン、カテキン、タンニン、テアニン、ピラジン、メラノイジン、ビタミン——ほうじ茶の主要成分について、煎茶との比較を交えながら解説します。数値は特記のない限り、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)の浸出液データに基づいています。

上の表は100mL浸出液あたりの目安値です。1杯150〜200mLで飲む場合は1.5〜2倍になります。茶葉量、お湯の温度、浸出時間によって数値は変わるため、あくまでも参考としてご利用ください。また、ほうじ茶は浅煎りから深煎りまで多様な焙煎度合いがあり、深煎りになるほどピラジンとメラノイジンが多く、カテキンとテアニンが少なくなる傾向があります。

成分 ほうじ茶(100mLあたり) 煎茶(100mLあたり) 焙煎による変化
カフェイン 約20mg 約20mg ほぼ変わらない
カテキン(EGCG等) 約30mg 約80mg 焙煎で約半分以下に
タンニン(ポリフェノール) 約30mg 約70mg 焙煎で変性・減少
テアニン 約5mg 約10mg やや減少
ピラジン 含む 微量 メイラード反応で生成
ビタミンC ほぼ0 約6mg 焙煎で分解

焙煎がお茶の成分を変える仕組み

ほうじ茶は、煎茶や番茶を200〜220℃前後の高温で焙じることで作られます。この加熱の過程で、茶葉の成分は大きく書き換えられます。

鍵になるのが「メイラード反応」(アミノ酸と糖が加熱されることで起こる化学反応)です。パンやコーヒーの焼き色と同じ仕組みで、褐色物質と香気成分が生まれます。同時に、カテキンをはじめとするポリフェノール類は熱で変性し、含有量が減少します。ビタミンCは加熱に弱く、焙煎の段階でほぼ分解されます。

引き算と足し算。カテキンの渋味が後退する代わりに、ピラジンの香ばしさとメラノイジンの甘味が前に出てくる。この入れ替わりが、ほうじ茶の飲みやすさの正体です。

焙煎温度と時間は、成分の変化の程度を左右します。浅煎り(低温・短時間)は緑茶の風味をある程度残しつつカテキンを穏やかに変性させ、深煎り(高温・長時間)はよりカテキンを減らして香ばしさを強くします。市販のほうじ茶が商品によって色合いや味わいが異なるのは、この焙煎条件の違いによるものです。同じ茶葉でも、焙煎の設定次第でまったく異なる成分プロフィールになることをご理解いただくと、飲み比べがさらに楽しくなります。

製造の詳細はほうじ茶の製造工程で詳しく読めます。

なお、上の表の数値は「浸出液100mL」あたりの値です。実際に飲む際のカップ1杯(約150〜200mL)で計算すると、各成分量はこの1.5〜2倍になります。また茶葉の量、お湯の温度、浸出時間によっても数値は変動します。あくまで参考値としてご活用ください。

カテキンとタンニン — 煎茶との違い

ほうじ茶のカテキン量は、煎茶の約3分の1〜半分。100mLあたり約30mgが目安で、煎茶の約80mgと比べると大きく減少しています。

「カテキン」は緑茶特有のポリフェノールで、EGCGをはじめとする複数の種類があります。渋味のもとになる成分ですが、焙煎の熱にさらされると変性します。変性したカテキンは活性が変わり、生茶葉のときとは異なる形で存在します。これがほうじ茶の渋味が穏やかな理由です。

「タンニン」はポリフェノールの一種で、お茶の渋味・収斂味に関わる成分の総称です。カテキン類もタンニンに含まれるため、ほうじ茶ではカテキンの減少とともにタンニン量も下がります。煎茶で約70mg/100mLあるタンニンが、ほうじ茶では約30mg前後まで変性・減少するとされています。渋味が穏やかで食事に合わせやすいのは、この変化の結果です。

抗酸化作用の観点から見ると、カテキンは依然としてほうじ茶に含まれており、煎茶の約半分以下の濃度ながら活性を持ちます。さらに焙煎によって生まれたメラノイジンやピラジンも抗酸化性を持つことが研究で示唆されています。成分の絶対量は減少しますが、抗酸化プロフィールそのものが消えるわけではありません。種類と量のバランスが異なる、というのが正確な理解です。玄米茶や番茶と比較した場合も、ほうじ茶は焙煎由来成分の含有量が多い点で独自のポジションを持ちます。

カテキンの詳細はカテキンの成分記事に整理しています。ほうじ茶全般の成分との比較は緑茶の成分記事も参考になります。

カフェインとテアニン

「ほうじ茶はカフェインが少ない」と思われがちですが、これは半分だけ正しい話です。

カフェインは煎茶とほぼ同量。文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)によると、ほうじ茶の浸出液は100mLあたり約20mg。煎茶も同じく約20mgです。カフェインの昇華点は178℃ですが、ほうじ茶の焙煎温度(200〜220℃前後)では完全には飛びません。高温抽出が多いほうじ茶は、カフェインが溶け出しやすい面もあります。

「テアニン」(お茶特有のアミノ酸で、穏やかな気分に関わる成分)は、ほうじ茶では煎茶の半分程度まで減少します。メイラード反応でアミノ酸がメラノイジンに変化するためです。また、ほうじ茶の原料には番茶や二番茶が多く使われることもあり、もともとテアニン量が少ない傾向があります。旨味がある一方、煎茶のような強い甘味や旨味は出にくくなります。テアニンの働きについてはテアニンの成分記事に詳しくまとめています。

カフェインを抑えたい場合は、淹れ方の工夫が有効です。低温(60〜70℃)・短時間(30秒〜1分)で淹れると、カフェインの溶出量を抑えられます。完全にゼロにはなりませんが、同じ条件で淹れた場合と比べて明確に差が出ます。夕方以降の時間帯に楽しみたい方は、この方法をお試しください。

カフェインについてはほうじ茶のカフェイン量を詳しくまとめた記事があります。カフェインの基礎知識テアニンの働きも合わせると理解が深まります。

ピラジンとメラノイジン — 焙煎で生まれる成分

ほうじ茶が緑茶と最も違うのは、焙煎によって生まれる成分を持つことです。

「ピラジン」は焙煎の香ばしさの正体。アミノ酸と糖が高温で反応するメイラード反応で生成される香気成分で、コーヒーや炒った穀物にも含まれます。ほうじ茶に特有の炒り穀物のような香り、少しナッツに近い温かい匂いは、このピラジンが作っています。研究では、ほうじ茶に含まれる特定のピラジン成分(2,3,5-トリメチルピラジン)が副交感神経を活性化させる可能性が示唆されています。テアニンとは異なるメカニズムで、ほうじ茶ならではのリラックス作用です。

「メラノイジン」は同じメイラード反応で生まれる褐色の物質。ほうじ茶の琥珀色から赤褐色の水色はこの成分によるもので、生茶葉にも煎茶にも含まれていません。パンの焼き色やコーヒーの色と仕組みは同じです。

ほうじ茶ラテのような飲み方ではこの香ばしさが特に際立ちます。ピラジンとメラノイジンの量は焙煎の深さによって変わります。深煎りほどメイラード反応が進み、両成分の含有量が増えます。浅煎りのほうじ茶が淡い黄緑がかった色なのに対し、深煎りが濃い赤褐色になるのはこのためです。香ばしさとリラックス効果を重視するなら、深煎りのほうじ茶がより向いているといえます。ただし深煎りほど元の茶葉の風味は薄れていきます。

香気成分の詳細はお茶の香り成分の記事で読めます。

本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医療アドバイスの代わりにはなりません。健康上の懸念がある場合は、医師または医療専門家にご相談ください。

参考文献

本記事の数値は以下の一次資料に基づいています。

よくある質問

Q. ほうじ茶にカテキンは含まれていますか?
含まれますが、煎茶の約3分の1〜半分程度です。焙煎の熱でカテキンが変性するため、渋味が少なく飲みやすくなります。抗酸化作用は依然ありますが、煎茶より低濃度です。

Q. ほうじ茶のカフェインは少ないですか?
実は煎茶とほぼ同じ量です。浸出液100mLあたり約20mgで、「カフェインが少ない」は誤りです。就寝前に気になる方は、低温・短時間で淹れるとカフェインを抑えやすくなります。

Q. ほうじ茶にタンニンは多いですか?
煎茶より少なめです。焙煎でカテキン系タンニンが変性するため、渋味が穏やかになります。食事中や食後に飲んでも主張しすぎない飲みやすさはここから来ています。

Q. ほうじ茶の抗酸化作用はどの程度ですか?
煎茶より低くなりますが、ゼロではありません。カテキンは変性しながらも活性を持ち、さらに焙煎で生まれたメラノイジンやピラジンにも抗酸化性が確認されています。成分の種類が違う、という理解が正確です。

Q. ほうじ茶と玉露・抹茶との成分の違いは何ですか?
玉露・抹茶はテアニンが非常に多く(玉露は100mLあたり約20〜25mg)、カテキンも豊富。旨味・甘味が際立つ飲み物です。一方ほうじ茶は焙煎でテアニンとカテキンが大幅に減り、代わりにピラジンとメラノイジンが多い。甘さより香ばしさを楽しむ設計です。

健康効果についてはほうじ茶の健康効果で詳しく読めます。番茶との成分の違いは番茶とほうじ茶の違いも参考になります。

ほうじ茶の成分バランスについて

焙煎は、お茶の成分を「組み替える」加工です。カテキンの渋味を手放す代わりに、ピラジンの香ばしさを手に入れる。タンニンが穏やかになる代わりに、メラノイジンが琥珀色の水色を添える。引き算と足し算が同時に起きています。

私たちがほうじ茶をすすめる場面のひとつが、夕食から就寝前の時間帯です。カフェインは煎茶と同程度ある一方、カテキンとタンニンが穏やかになり、ピラジンの香りがゆっくりとした時間を作ってくれます。飲みやすさは成分の引き算から、香ばしさは足し算から。この両方を知ると、ほうじ茶の一杯がもう少し深く感じられるかもしれません。

もうひとつ付け加えるなら、ほうじ茶の成分バランスは「誰でも飲みやすい」設計に向いています。カフェインが気になる方は淹れ方で調整でき、渋味を嫌う方にも向き、香ばしさがあるためミルクや砂糖を加えなくても飲み飽きません。食事中・食後・ひと休みの時間など、場面を選ばず日常使いできるのは、この成分の組み合わせがあってこそです。成分の面から見ると、ほうじ茶は「焙煎による引き算で広がった選択肢」を持つ、ユニークなお茶といえるかもしれません。どの焙煎度合いのほうじ茶を選ぶかで、成分のバランスが変わることも覚えておくと選ぶ楽しさが増します。

ほうじ茶の原料となる番茶との違いも成分の観点から確認できます。玄米茶との比較はサポニンの成分記事も参考になります。ほうじ茶全般についてはほうじ茶とは?で整理しています。お気に入りの一杯を探す方はほうじ茶コレクションもご覧ください。

よくある質問

焙煎すると、ほうじ茶のカフェインは緑茶より少なくなりますか?

文部科学省の標準成分値では、ほうじ茶のカフェインは100mLあたり約20mgで、煎茶とほぼ同じです。香ばしくやさしい飲み口でも、カフェインが大きく減っているわけではありません。飲みやすさは、カテキンや渋味成分が焙煎で減ることの影響が大きいです。

焙煎後のほうじ茶には、どんな抗酸化成分やポリフェノールがありますか?

ほうじ茶にもカテキンは残りますが、焙煎で減少し、目安は100mLあたり約30mgです。煎茶の約80mgと比べると少ない一方で、焙煎によってメラノイジンやピラジンが生まれます。研究では、これらの焙煎由来成分にも抗酸化性が示唆されています。

ほうじ茶は子どもやカフェインに敏感な人にも向いていますか?

ほうじ茶はノンカフェインではないため、カフェインに敏感な方は量や時間帯に注意が必要です。低温で短時間に淹れるとカフェインの溶出は抑えやすくなりますが、ゼロにはなりません。お子さま、妊娠中の方、持病や摂取制限がある方は、医師にご相談ください。

ほうじ茶のピラジンとは何ですか?

ピラジンは、焙煎中にアミノ酸と糖が反応して生まれる香気成分です。ほうじ茶の炒った穀物やナッツに近い香りは、この成分が大きく関わっています。研究では、2,3,5-トリメチルピラジンが香りを通じて副交感神経の働きに関わる可能性が示唆されています。

お湯の温度や浸出時間で、ほうじ茶の味はどう変わりますか?

高温で長めに淹れると、焙煎香と色がしっかり出て、カフェインや苦味も溶け出しやすくなります。60〜70℃くらいの低めの温度で30秒〜1分ほどにすると、軽くなめらかな味に寄せやすいです。香ばしさを強く出したいか、やさしく飲みたいかで調整できます。

ほうじ茶の栄養成分は、抹茶や煎茶とどう違いますか?

煎茶と比べると、ほうじ茶はカフェイン量が近い一方で、カテキン、テアニン、ビタミンCは少なめです。抹茶は茶葉を丸ごと飲むため、ビタミンやカテキンを取りやすい茶です。ほうじ茶の特徴は、栄養量の多さよりも、焙煎で生まれるピラジンやメラノイジンにあります。