香ばしい香り、琥珀色の水色、すっきりとした飲み口。ほうじ茶の個性は、すべて「焙煎」という加工から生まれています。
緑茶の茶葉を高温で焙じることで、成分の構成が大きく変わるのがほうじ茶。どの成分が残り、どの成分が新たに生まれるのかを、他のお茶と比較しながらご紹介します。
| 成分 | ほうじ茶 | 煎茶 | 抹茶 | 役割 |
|---|---|---|---|---|
| カフェイン | 約20 mg/100mL | 約20 mg/100mL | 約64 mg/2g | 覚醒、苦味 |
| カテキン | 中程度(熱に強い) | 多い | 非常に多い | 抗酸化、渋味 |
| テアニン | 少ない | 中程度 | 多い | リラックス、旨味 |
| ピラジン | 多い(焙煎で生成) | なし | なし | 香ばしい香り、リラックス |
| メラノイジン | 多い(メイラード反応) | なし | なし | 褐色の水色 |
| ビタミン(A, C, E) | ごく微量(加熱で分解) | 中程度 | 豊富 | 抗酸化 |
焙煎で何が変わるのか
ほうじ茶の一番の特徴は「焙煎」。ローストされた香ばしい香りと、すっきりと飲みやすい味わいは、150〜200℃の加熱で起こる化学反応から生まれます。
アミノ酸と糖類が加熱されると「メイラード反応」が起こり、褐色物質(メラノイジン)と香気成分(ピラジン)が生成。同時にビタミン類が分解され、アミノ酸の一部はメラノイジンに変化します。
カフェイン
「ほうじ茶にはカフェインが含まれていない」という話を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、これは誤り。カフェインの昇華点は178℃で、ほうじ茶の加工温度(約200℃)では完全には昇華しきりません。
煎茶や紅茶と同程度のカフェインが残っているケースも多く、高温で淹れることが多いほうじ茶は、カフェインが溶け出しやすい面もあります。詳しくは「ほうじ茶のカフェイン」をご覧ください。
カテキン
カテキンは加熱では含有量が変化しにくい成分。煎茶と同程度のカテキンがほうじ茶にも含まれています。渋味が少なく感じるのはカテキンが減ったからではなく、メイラード反応で生まれた甘味や香ばしさが味のバランスを変えているためです。
ピラジン(香気成分)
ほうじ茶の香ばしい香りの正体は「ピラジン」という香気成分。アミノ酸と糖が加熱されるメイラード反応で生まれるもので、他のお茶には見られない、ほうじ茶特有の成分です。
伊藤園の2025年の研究では、ほうじ茶のピラジン(特に2,3,5-トリメチルピラジン)が副交感神経を活性化させる効果が確認されています。テアニンとは異なるメカニズムでリラックス効果をもたらす、ほうじ茶ならではの特徴。
メラノイジン(褐色物質)
ほうじ茶特有の琥珀色は、メラノイジンという褐色物質によるもの。緑茶や生葉には含まれておらず、焙煎のメイラード反応で初めて生まれる成分です。パンの焼き色やコーヒーの色と同じ仕組み。
アミノ酸・テアニン
テアニンをはじめとするアミノ酸は、ほうじ茶では少なめ。理由は2つあります。
ひとつは、焙煎のメイラード反応でアミノ酸がメラノイジンに変化すること。もうひとつは、ほうじ茶の原料に番茶や二番茶が使われることが多く、一番茶の煎茶や玉露に比べてそもそもアミノ酸の含有量が少ないこと。旨味はあるものの、煎茶ほど強くはありません。
ビタミン
茶葉にはビタミンA、C、E、B群が含まれていますが、焙煎の過程で酸化が進み、加工後のほうじ茶にはほとんど残りません。ビタミンをお茶から摂りたい場合は、茶葉をまるごと摂取できる抹茶が適しています。
ほうじ茶の成分が意味すること
ほうじ茶は「緑茶から成分が減ったお茶」ではなく、焙煎によって成分のバランスが組み替えられたお茶。カフェインの刺激はマイルドに、カテキンの抗酸化力はそのままに、ピラジンの香りでリラックス効果が加わる — 他のお茶にはない独自のバランスです。
ほうじ茶の効能について詳しくは「ほうじ茶の健康効果」をご覧ください。ほうじ茶全般については「ほうじ茶とは?」も合わせてどうぞ。
