夕食のあと、まだ湯気のやわらかい烏龍茶なら飲めそう。でも、夜に目が冴えないか、妊娠中でも大丈夫か、気になって検索する方は多いはずです。花香、焙煎香、ふっと残る苦味。落ち着く一杯ほど、カフェインが気になります。
先に数字を置くと、公的な目安は烏龍茶の「浸出液」(茶葉を湯で抽出した飲用状態の液体)100mLあたり20mgです。ただ、この数値は茶葉15g、90℃、650mL、0.5分という条件で測ったもの。ペットボトルのウーロン茶も、茶葉を多く使うリーフの烏龍茶も、同じ20mgで語り切れるわけではありません。
私たちが茶葉で淹れる烏龍茶を見るとき、気にしたいのは品種、発酵度、淹れ方の3つです。数字を知ると怖くなるというより、朝に岩茶、午後に高山烏龍、夜は水出しと選び分けやすくなる。ここが面白い所なんです。
烏龍茶のカフェイン量 — ひとつの数字では語れない
公的な目安は20mg/100mLですが、茶葉と淹れ方次第で一杯の量は大きく動きます。
厚生労働省のQ&Aでは、ウーロン茶の浸出液は100mLあたり20mg。抽出条件は茶葉15g、90℃のお湯650mL、0.5分です。150mLの湯のみなら約30mgほどで、コーヒーより穏やか。まずはここが基準です。
ただし、この20mgは特定条件の比較値にすぎません。Borosらの2016年研究では、市販烏龍茶の乾燥葉中カフェインは10.96〜39.71mg/gまで広がりました。Yongらが2022年に中国茶1,398検体を「HPLC」(成分を分離して量る分析法)で測った調査でも、烏龍茶の平均は約27mg/g。平均はあっても、幅が大きいのです。
つまり、同じ150mLでも急須や蓋碗でしっかり淹れた烏龍茶と、すっきり作られたペットボトルでは中身が違います。数字は入口で、実際の一杯は別の話。烏龍茶の成分の記事も合わせて読むと、この振れ幅が見えやすくなります。
なぜ品種によってこんなに違うのか
烏龍茶の差は、発酵度だけでなく芽葉の若さ、仕立て、焙煎の重なりで生まれます。
発酵度が変えるカフェインのバランス
烏龍茶は「半発酵茶」(途中まで酸化発酵を進めて止める茶)と呼ばれますが、実際の発酵度は15%前後から85%近くまでかなり広いです。軽発酵の高山烏龍は緑茶に近い軽さで、同じ烏龍茶の中ではカフェインも穏やかに出やすい傾向があります。一方、東方美人のような重発酵タイプは紅茶に近い仕立てで、抽出されるカフェインも比較的高めになりやすいのだそう。
もちろん、発酵度だけで決まるわけではありません。若い芽を多く使うか、茶葉をどれだけ細かく仕上げるかでも抽出量は変わります。それでも、軽発酵と重発酵で性格が変わるのは確か。烏龍茶の種類の記事を見ると、高山烏龍と東方美人が同じ烏龍茶に入る理由がよく分かります。
焙煎はカフェインを減らすのか
大紅袍や岩茶は強い「焙煎」(火入れで香りを整える工程)を経るため、カフェインもかなり減りそうに感じます。けれど、焙煎で大きく変わるのは主に香りです。香ばしさ、甘い余韻、苦味の輪郭。その一方で、カフェインの減少は限定的と見るほうが実態に近いです。
分かりやすい比較がほうじ茶でしょう。ほうじ茶も焙煎茶ですが、公的な標準値では煎茶と同じ20mg/100mLです。烏龍茶の焙煎も同じで、火入れしたから低カフェインになる、とは言い切れません。半発酵茶の製造工程の記事を読むと、焙煎が風味に効く工程だと分かります。
烏龍茶のカフェインはコーヒーより多い?緑茶・紅茶との比較
標準値では烏龍茶は20mg/100mLで、コーヒーより少なく紅茶よりやや少なめです。
食品成分表ベースで並べると、玉露160mg、コーヒー60mg、紅茶30mg、煎茶20mg、烏龍茶20mg、ほうじ茶20mg、玄米茶10mg/100mLです。烏龍茶は中くらい。強い部類ではありません。ただし玉露だけは別格で、同じお茶でも桁が変わります。
とはいえ、体感は量だけで決まりません。烏龍茶にも含まれる「テアニン」(お茶特有のアミノ酸)とカフェインの組み合わせは、覚醒感を鋭くしすぎにくいと考えられています。Owenらの2008年試験ではL-テアニン100mgとカフェイン50mgの組み合わせで注意課題の成績が向上し、Giesbrechtらの2010年試験では97mgと40mgの組み合わせで覚醒感が上がりつつ疲労感が減りました。烏龍茶そのものを試した研究ではありませんが、お茶を飲んだときの穏やかさを考える手がかりにはなります。
さらに烏龍茶には、「OTPP」(烏龍茶特有の重合ポリフェノール)があります。筑波大学のZhangらによる2020年の試験では、烏龍茶飲料とカフェイン単体のどちらも24時間の脂肪酸化を約20%高めましたが、睡眠中は烏龍茶のほうが脂肪酸化の低下が小さく、睡眠構造も損なわれませんでした。カフェインだけでは説明しきれない所です。関連する成分の基礎はカフェインの記事、テアニンの記事、緑茶のカフェイン記事も参考になります。
カフェインを調整して烏龍茶を楽しむ
温度と時間を少し変えるだけで、烏龍茶のカフェインはかなり調整しやすくなります。
まず扱いやすいのが水出しです。低温ではカフェインの抽出が進みにくく、苦味も立ちすぎません。夜に飲みたいときや、妊娠中で量を慎重に見たいときに向いた方法です。作り方は水出し茶の淹れ方が参考になります。
次に効くのが煎を重ねること。一煎目にカフェインが出やすいため、二煎目、三煎目は相対的に軽くなります。烏龍茶は何煎も楽しめるお茶なので、午後以降は二煎目から飲むという選び方も実用的です。温度を80℃前後まで下げるのもひとつの手。香りを保ちつつ、抽出を少し穏やかにできます。
量の目安も見ておくと安心です。EFSAは健康な成人の習慣的な摂取量として1日400mgまでを安全上の目安とし、これは標準値の烏龍茶なら150mLで13杯強に当たります。就寝に近い時間帯は、EFSAが100mgの単回摂取でも睡眠に影響しうると示しているため、150mLなら3杯強がひとつの境目です。寝る2〜3時間前から控えると無難でしょう。
妊娠中はさらに慎重に見ます。EFSAは1日200mgを目安とし、WHOも300mg/日を超える高摂取を減らすよう勧告しています。標準値の烏龍茶なら150mLで5〜6杯ほどですが、コーヒー、紅茶、チョコレートまで合算で考える必要があります。私たちなら、気になる時期は少なめの茶葉か水出し、あるいは日中の一杯に寄せます。淹れ方の基本は烏龍茶の淹れ方でも確認できます。
FETCとして烏龍茶を見ていると、「20mg」というひとつの数字では足りないと感じます。品種で変わり、発酵度で変わり、淹れ方で変わる。朝の目覚めには岩茶、午後のリラックスには高山烏龍、夜は水出し。そうやって場面に合わせて選べるのが烏龍茶の魅力です。
カフェインは避けるための数字というより、選ぶための数字です。知っていれば、烏龍茶はもっと自由になります。香りで選び、時間帯で選び、その日の体調で選ぶ。数字の先にある、暮らしの一杯です。
参考リンク
- 文部科学省 食品成分データベース
- 厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A
- EFSA Safety of caffeine
- WHO Restricting caffeine intake during pregnancy
- Boros et al. (2016) Theanine and Caffeine Content of Infusions Prepared from Commercial Tea Samples
- Yong et al. (2022) Quantitative probabilistic assessment of caffeine intake from tea in Chinese adult consumers
- Zhang et al. (2020) Oolong tea and fat oxidation trial
- Owen et al. (2008) L-theanine and caffeine
- Giesbrecht et al. (2010) L-theanine and caffeine
