Far East Tea Company 編集チーム 約 15 分
目次

注意:本記事は情報提供を目的としており、医学的助言ではありません。メチル化カテキンと花粉症症状に関する研究は現在も継続中です。健康上の不安がある方、またはアレルギー疾患と診断されている方は、食事や摂取方法を変更する前に医療専門家にご相談ください。

一口飲むと、渋味が先に来ます。べにふうき緑茶は、多くの方が飲み慣れている煎茶よりも明らかに渋味が強く、口の中にしっかりと存在感を残します。これは欠点ではありません。カテキンが本来の働きをしている、ということです。べにふうきは「メチル化カテキン」と呼ばれる成分を豊富に含む日本の茶品種で、その特性が過去30年間にわたり、日本の食品科学の世界で研究対象となってきました。

もともと紅茶用品種として開発されたべにふうきは、農研機構(NARO)の研究者たちがそのメチル化カテキン含有量に着目したことで、緑茶としての用途が広がりました。現在は酸化発酵させず、蒸して加工する緑茶として栽培されるのが主流です。有効成分をカップの中まで届けるためには、この加工方法の選択が決定的に重要です。

べにふうきとは?

べにふうきは、1993年に農研機構が品種登録した日本の茶品種です。日本の紅茶品種「べにほまれ」を母、インドのアッサム系統を持つ「枕Cd86号」を父とした交配から生まれました。アッサム系の遺伝を受け継いでいることで、カテキン生産量が際立って高く、それがべにふうき特有の渋味とメチル化カテキンの豊富さにつながっています。

日本の茶品種のほとんどは中国系の小葉種(Camellia sinensis var. sinensis)に由来しますが、べにふうきは異なります。アッサム系(Camellia sinensis var. assamica)の血を引くことで、葉は大きめで、タンニンが強く、紅茶に適した風味の骨格を持っています。長い間、べにふうきは日本産紅茶の優れた品種としてもっぱら知られていました。

緑茶としての生産が広がったのは2000年代以降、メチル化カテキンと花粉症症状に関する研究が注目を集めてからです。今日のべにふうきは、日本茶の中でも独特の立ち位置を占めています。紅茶のために生まれ、緑茶として育ち、研究の舞台でも主役を張る品種。

もう少し制度面まで見てみると、べにふうきの歩みは日本の茶品種育成史そのものでもあります。農研機構の解説では、べにふうきは1993年に「命名登録」、1995年に「種苗登録」された、日本初の紅茶・半発酵茶兼用品種と整理されています。農林水産省は「品種登録制度」を通じて新品種の登録を管理しており、お茶のページでも国費で育成された茶品種のハンドブックを案内しています。名前だけではなく、系統、用途・栽培適地まで含めて公的に整理されている品種だということ。品種の背景がはっきりしている点は、べにふうきを理解するうえで大切です。参考: 農研機構農林水産省の品種登録制度農林水産省「お茶のページ」

成分の見方にも、公的な基準があります。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」では、せん茶やその浸出液について標準化した抽出条件とともに、カフェインや「タンニン」値が示されています。べにふうき固有の数値ではありませんが、緑茶の渋味成分やポリフェノールの抽出を比べるときの基礎資料になるものです。べにふうきの渋味がただ強いだけではなく、成分の設計図を持った渋味であること。そこにこの品種の個性があります。参考: 文部科学省 食品成分データベース(せん茶/浸出液)

べにふうきと花粉症:メチル化カテキンの研究

一般的な緑茶に含まれるカテキンはよく知られています。EGCG、EGC、ECG、EC——これらはどの品種にも含まれます。べにふうきはこれらに加え、「EGCG3"Me」(エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート)と呼ばれるメチル化カテキンを含んでいます。この成分は通常の緑茶品種にはほとんど含まれておらず、べにふうきではやぶきたや他の多くの登録品種と比較して顕著に高い濃度で検出されます。

農研機構の前田(山本)万里氏らが中心となった研究では、EGCG3"Meがアレルギー反応に関与するヒスタミンや他のメディエーターの放出を抑制する可能性があることが示唆されています。実験室での研究および臨床研究において、花粉症シーズンの前から一定期間継続してべにふうき緑茶を摂取することで、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状が軽減する可能性があることが報告されています。

「可能性がある」「示唆されている」という表現は意図的なものです。研究は特定の摂取量・期間を前提としており、すべての方に同じ効果が現れるわけではありません。また、べにふうきが発酵・酸化処理された場合、メチル化カテキンは大きく分解されます。これが重要な点です。メチル化カテキンを摂取するためには、べにふうきは緑茶として加工・飲用する必要があります。紅茶や烏龍茶では同じ成分は期待できません。

べにふうきのカテキン構造とその潜在的な抗アレルギー特性の関係は、日本茶研究の中でも注目度の高い領域の一つです。「べにふうき」と書かれたラベルを見たとき、品種、加工方法、葉の形態のすべてが意味を持つことを、この研究は示しています。

研究の中心にいる前田万里博士らは、細胞レベルの機序研究とヒト試験の両方を積み重ねてきました。2004年の論文では、茶葉由来の「O-メチル化カテキン」が、アレルギー反応の初期段階で重要な「Lyn」「Syk」「Btk」といったタンパク質キナーゼの働きを抑えることが報告されています。これにより、マスト細胞からのヒスタミン放出、ロイコトリエン放出、サイトカイン産生が弱まる可能性があります。つまり、症状が出た後に無理やり押さえ込むというより、反応の引き金になりやすいシグナル伝達を穏やかにする方向の研究です。参考: Maeda-Yamamoto et al., J Immunol. 2004農研機構 専門解説

臨床面では、農研機構が公表した二重盲検プラセボ対照試験がよく参照されます。2003年の成果情報では、軽度のスギ花粉症患者を対象に、メチル化カテキン高含有緑茶2gを熱湯300mLで抽出したものを朝と昼に継続飲用した群で、プラセボ群と比べて症状悪化の度合いが有意に抑制されたと報告されています。さらに血中IgEの上昇抑制が示される一方、好中球貪食能やNK活性には有意差がなく、正常な免疫反応を一律に弱めるものではない可能性が示されました。食品としては興味深い結果ですが、被験者数は大規模ではなく、すべての人に同じ変化が出るとまでは言えません。参考: 農研機構 2003年成果情報

飲み始める時期についても、研究プロトコルに特徴があります。農研機構の2008年成果情報では、スギ花粉症のある36人を2群に分け、EGCG3"Meを1本あたり17mg含む飲料を1日2本ずつ飲用して比較したところ、飛散後に飲み始める群より、飛散1か月以上前から飲み始める群のほうで、鼻かみ回数や咽頭痛、生活の質の指標で悪化抑制が報告されています。2014年の無作為化二重盲検プラセボ対照試験も、シーズン前からの継続摂取という考え方を補強する内容でした。私たちが「花粉シーズン前から」と書くのは、この積み重ねがあるからです。参考: 農研機構 2008年成果情報Masuda et al., 2014

一方で、べにふうきは医薬品ではありません。抗ヒスタミン薬のような即効性を前提に使うものではなく、研究で検討されているのは、一定量を一定期間続けたときの変化です。農研機構自身も、古いアーカイブ研究であることへの注意を示していますし、空腹時の飲用で胃の不快感が出た例にも触れています。べにふうきの研究は、あくまで食品としての潜在的な可能性を示すもの。個人差があり、症状が強い方や治療中の方は、必ず医師や薬剤師に相談してください。参考: 農研機構 2008年成果情報Maeda-Yamamoto et al., 2007農研機構(NARO)

べにふうきの味わい

正直に言えば、渋味が主役です。やぶきたが旨味・甘味・渋味をバランスよく表現するのに対し、べにふうきはまず渋味で主張します。メチル化カテキンを含む高いカテキン量が、しっかりとした骨格と引き締まった飲み口を生み出しています。

渋味の奥には、確かなコクがあります。液体は薄くなく、舌の上に重さを感じる仕上がりです。香りは草原のように青く、清潔感があります。被覆栽培した玉露や玉露に特有の海藻や磯のような深い香りはなく、テアニン含有量が比較的少ないため、旨味は控えめです。存在はしますが、主役ではない。

蒸し製の煎茶スタイルで加工されたべにふうきは、明るく青みのある風味が特徴です。粉末タイプも市販されており、成分を濃縮して摂取できる点で、機能性を意識した飲用に向いています。

冷水出しにすると、熱いお湯で淹れたときの輪郭の強い渋味はやや丸くなり、青草の香りがより静かに立ちます。口当たりも軽く、後半に残る渋味は細く長い。一方で熱いお湯では、立ち上がりから骨格がはっきりし、舌の中央から奥にかけて渋味が押し寄せ、飲み込んだ後に乾いた余韻がじわりと戻ってきます。同じ茶葉でも、温度で印象がかなり変わるお茶です。

この後味の強さは、食事と合わせたときに魅力になります。特に揚げ物や肉料理のような脂のある皿と合わせると、べにふうきの渋味が口中を切り替え、次の一口を軽く感じさせてくれます。旨味を前面に出す茶ではなく、食卓の流れを整える茶。私たちは、単独でじっくり味わうだけでなく、こってりした食事の合間に挟む飲み方にも向いていると感じます。

味わい比較:べにふうき vs やぶきた vs 一般的な煎茶
特性 べにふうき やぶきた 一般的な煎茶ブレンド
渋味 強い 中程度 中程度
旨味 弱〜中程度 中〜強い 中程度
コク・重さ 豊か 中程度 軽〜中程度
メチル化カテキン 高(特徴的) ごく少量 ごく少量
香りの特性 青草系・清澄 爽やか・バランス型 青草〜野菜系

産地と栽培

べにふうきの主産地は鹿児島県と静岡県で、生産量は鹿児島が多い傾向にあります。アッサム系の遺伝から、温暖な気候を好む品種ですが、日本の育種家たちが耐寒性の改良を重ね、現在は東海地方以西のほとんどの地域で栽培可能になっています。

とくに鹿児島県南九州市のように、冬の冷え込みが比較的穏やかで、年間を通じて温暖かつ雨量の多い地域では、べにふうきが勢いよく生育しやすく、機能性成分を意識した生産とも相性がよいと考えられています。葉が厚く育ちやすく、春先の立ち上がりも早いため、メチル化カテキンをしっかり持った茶葉を一番茶で揃えやすいのです。産地名を見る意味は、単なるブランド性だけではありません。

地域の研究体制にも、この品種の特徴が表れています。鹿児島県農業開発総合センター茶業部では、茶の新品種育成、優良品種の選定、高品質茶の生産安定・効率化や高付加価値化技術の確立を研究内容として掲げています。べにふうきのように、品種特性と加工適性の両方を見ながら育てる必要があるお茶では、こうした地域研究機関の知見がとても重要です。参考: 鹿児島県農業開発総合センター茶業部農林水産省「茶の主な産地はどこですか。」

収穫のタイミングは、メチル化カテキン含有量に直接影響します。春の一番茶で最も高い濃度が得られます。二番茶以降でも収穫できますが、EGCG3"Me の濃度は徐々に下がっていく傾向があります。機能性を重視する生産者ほど、一番茶の早い段階に収穫を集中させます。

一番茶でメチル化カテキンが高くなりやすいのは、春の新芽がまだ柔らかく、冬を越えて蓄えた成分バランスを比較的よく保っているからです。二番茶になると気温上昇と生育速度の影響で葉がやや硬くなり、収量は取りやすくても、機能性を重視したときの密度は落ちやすい。べにふうきが現在の形にたどり着いた背景にも、農研機構と各産地の茶農家が連携し、紅茶用品種としての資質に加えて、日本の畑で安定して育ち、緑茶加工にも応えられるよう改良を重ねてきた歴史があります。

加工において重要なのは、蒸し製(不発酵)か酸化製(発酵)かの選択です。メチル化カテキンは蒸し製の緑茶加工で保持されます。同じ葉を紅茶として酸化加工すると、メチル化カテキンは分解されてしまいます。べにふうき紅茶そのものは品質の高いお茶ですが、EGCG3"Me を目的とするなら緑茶加工のものを選ぶ必要があります。この点は覚えておく価値があります。

べにふうきの効果的な淹れ方

べにふうきの抽出温度は、多くの高級緑茶より高めが適しています。玉露が50〜60℃で繊細な旨味を引き出すのに対し、べにふうきは80〜90℃で淹れるのが基本です。高温のほうがカテキンの抽出効率が上がるためです。

べにふうきの淹れ方パラメータ
項目 茶葉タイプ 粉末タイプ
お湯の温度 80〜90℃ 80℃
茶葉量・粉末量 200mLに対して3〜4g 200mLに対して0.5〜1g
抽出時間 2〜3分 すぐに溶かす(抽出時間なし)
備考 渋味が出るのは正常。品種の個性です 一杯あたりのカテキン摂取量が多くなる傾向

この条件で淹れると、渋味はしっかり感じられます。通常の煎茶より明らかに引き締まった飲み口になりますが、それはべにふうきの個性です。強さが気になる場合は、抽出時間を短くするか、温度を少し下げると和らぎます。ただし、カテキンの抽出量も同時に下がります。

メチル化カテキンを意識して飲む場合、花粉シーズン中に散発的に飲むよりも、シーズン前から毎日継続して飲むことが、研究プロトコルに近い飲み方です。ただし、個人差があることは念頭に置いてください。

べにふうき vs やぶきた

べにふうき vs やぶきた:主な違い
比較項目 べにふうき やぶきた
遺伝的系統 アッサム系交配(べにほまれ×枕Cd86号) 中国系品種の選抜
登録用途 紅茶・半発酵茶用 緑茶(煎茶)用
メチル化カテキン 高い(EGCG3"Me) ごく微量
味わいの特性 渋味強め・コクあり・青草系 バランス型・爽やか・中程度の旨味
耐寒性 中程度(温暖地向き) 高い(全国栽培可能)
主産地 鹿児島、静岡 全国(静岡、鹿児島、三重、京都)
最適な用途 緑茶(機能性目的)、日本紅茶 煎茶、ほうじ茶、日常ブレンド

参考文献

よくある質問

べにふうきは花粉症に効くのですか?

研究は、その可能性を示唆しています。農研機構の前田(山本)万里氏らによる研究では、二重盲検プラセボ対照試験を含む臨床研究において、EGCG3"Meを含むべにふうき緑茶を継続摂取することで、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状が軽減する可能性が示されています。提案されているメカニズムは、ヒスタミン放出やその他のアレルギーメディエーターの抑制です。ただし、研究は進行中であり、効果の程度は個人によって異なります。べにふうきは医療行為の代替ではありません。アレルギー疾患と診断されている方は、引き続き医療専門家の指示に従ってください。お茶として、研究の観点から非常に興味深い特性を持つ食品です。

花粉シーズン前、いつから飲み始めるべきですか?

農研機構の研究で参照されている臨床試験では、花粉シーズン開始の約6〜8週間前から摂取を開始し、シーズン終了まで継続するプロトコルが多く見られます。日本では、スギ花粉の飛散が温暖地で1月下旬〜2月頃から始まることが多いため、12月中旬〜1月上旬頃の開始が一つの目安になります。ただし、これは研究プロトコルに基づく情報提供であり、医学的推奨ではありません。べにふうきを花粉症対策として取り入れる場合は、他の治療方法と合わせて医師にご相談ください。

べにふうきで紅茶を作ることはできますか?なぜ緑茶加工でなければいけないのですか?

できます。そして、べにふうきの紅茶はとても品質の高いお茶です。アッサム系の遺伝により、リナロール・ゲラニオール・インドールといった芳香成分を豊富に生成し、深みのある複雑な紅茶香をもたらします。緑茶として飲むときに感じる渋味は、紅茶では骨格のあるコクとして作用します。ただし、酸化発酵の過程でメチル化カテキンは分解されます。EGCG3"Meを目的とするなら、緑茶加工のべにふうきを選ぶ必要があります。同じ葉でも二つの異なる道があります。緑茶加工ではアレルギー研究で注目されたメチル化カテキンが保持されますが、紅茶加工では酸化によって異なる香り成分が発展します。紅茶として飲む場合、同じ成分は期待できません。

べにふうきとやぶきたの違いは何ですか?

やぶきたは日本茶の主力品種で、日本の茶畑の約70%を占めています。バランスが良く、中程度の旨味、中程度の渋味、爽やかな香りが特徴で、日本緑茶の標準的な味わいの基準を定めています。べにふうきはこれとは大きく異なります。主な違いは遺伝的系統とカテキンプロファイルにあります。やぶきたは中国系統(Camellia sinensis var. sinensis)の遺伝子を持ち、メチル化カテキンの含有量はごく微量です。一方、べにふうきはアッサム系統(Camellia sinensis var. assamica)の血を引き、葉が大きく、タンニンが強く、カテキン総生産量が高く、特にEGCG3"Meの濃度が顕著に高くなっています。風味の面では、べにふうきはやぶきたより渋味が強く、コクがあり、旨味の前面への出方は控えめです。べにふうきはやぶきたの土俵で競うものではなく、全く異なる個性を持っています。