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玉露は収穫前に20日以上かけて被覆します。黒いシートで日光を遮り、テアニンがカテキンへ変化するのを抑える。手間と時間をかけて生み出すのが、玉露の濃い旨味です。あさつゆは、その旨味を被覆なしで作り出します。太陽の下、開放された茶園で育ちながら、玉露に近い甘味と旨味を持つ。だから「天然玉露」と呼ばれます。

1953年に品種登録された、日本最古の登録品種のひとつです。やぶきたと同年に登録されました。それから70年以上が経った今も、あさつゆの名前を聞くと生産者も茶商も表情が変わります。それほど信頼され、愛され続けている品種です。

あさつゆとは?

あさつゆは1953年登録の日本茶品種で、国内で最も早く品種登録されたうちのひとつです。遺伝的にテアニン(旨味や落ち着きに関わるアミノ酸)が豊富で、カテキン(渋味の成分)が少ない構成になっています。この比率は、多くの非被覆品種とは逆です。日光下で育てた茶葉はカテキンが増えやすく、渋味が出やすい。あさつゆはその傾向に従いません。

だからこそ、あさつゆ煎茶は被覆なしでも玉露的な旨味を引き出せます。生産者によっては、さらに旨味を引き上げるためにあえて被覆をかけることもあります。その場合の味わいは、濃厚な出汁に近い深さです。被覆が成分や味わいにどのような影響を与えるかは、玉露の記事で詳しく確認できます。

早生品種で、やぶきたより約7日早く摘採できます。その早さは利点である一方、弱点にもなりうる特性です。新芽が出るのが早いぶん、春の気温が安定しない時期と重なりやすい。霜害のリスクが高く、耐寒性の低さは栽培地域を限定する要因です。摘採時期と品種の関係は、早生・晩生品種の記事で整理しています。あさつゆの甘味を受け継ぎつつ耐寒性を高めた品種として、つゆひかりも高く評価されています。

なぜ「天然玉露」なのか

玉露との比較は、加工法ではなく味の比較です。玉露は製法カテゴリ——品種を問わず、収穫前に20日以上被覆すれば玉露と呼べます。あさつゆは特定の品種であり、被覆なしでも玉露的なテアニンとカテキンの比率を生み出す品種です。

玉露が手間をかけて実現する「低カテキン・高テアニン」という状態を、あさつゆは遺伝子レベルで持っています。テアニンが多く、カテキンが少ない——その組み合わせが、やさしく甘く、旨味の深い一杯を作ります。

香りは穏やか。特有のクセがなく、柔らかい甘さと穀物系の落ち着いた雰囲気があります。肩の力を抜いて楽しめる一杯。ただ、しみじみと満足する。そういう特性のお茶です。

特徴あさつゆやぶきた玉露(被覆)
旨味の強さ高い中程度非常に高い
渋味少ない穏やか非常に少ない
被覆の必要なしなし20日以上必要
耐寒性低い高い品種による
主な産地鹿児島、南九州全国宇治、八女など

味わいと産地

甘く、まろやかで、渋味が少ない——あさつゆを語るときに繰り返される三つの言葉です。甘さは口の中に入った瞬間から明確で、後味まで続きます。ボディは丸くなめらか。非被覆品種とは思えない、シェードティーに近いとろりとした飲み心地があります。苦味はほぼなく、香りはおとなしい——かすかに花のような気配があり、それ以上主張しません。

鹿児島県が主な産地です。温暖な気候がこの品種の耐寒性の低さに合っており、早生品種としての特性を最大限に活かせる環境があります。南九州の一部(宮崎南部など)でも栽培されるものの、規模は限定的です。静岡でも一部栽培されていますが、冬の冷え込みが霜害リスクを高めるため、植えられる場所が限定されます。産地の詳細は、鹿児島の茶産地の記事で確認できます。

あさつゆの淹れ方

玉露と同様の低温アプローチが有効です。70℃前後が基準です。テアニン由来の甘味と旨味がしっかり出て、渋味が出てきません。旨味をさらに引き出したい場合は60〜65℃まで下げると、玉露に近い味わいに近づきます。温度が上がるほどカテキンが溶け出しやすくなり、せっかくのバランスが崩れます。

茶葉3〜4g、お湯150mLを基準に。60〜90秒蒸らして急須を傾け、最後の一滴まで注ぎ切ります。二煎目も充実した一杯です。葉が開き、旨味が少し深まります。三煎目は温度をほんの少し上げると、残った甘味を引き出せます。玉露の淹れ方を参考にすると、同じ考え方で淹れられます。

よくある質問

あさつゆと玉露は同じですか?
違います。共通しているのは味の印象であり、製法ではありません。玉露は製法カテゴリで、被覆栽培(20日以上)を経た茶葉を指します。品種は問いません。あさつゆは特定の品種であり、被覆なしでも玉露に似た味わいを出します。あさつゆ煎茶と玉露は異なる製品です。ただし、あさつゆを被覆して玉露仕立てにすることも可能で、その場合の旨味の濃さは格別です。
なぜあさつゆは希少なのですか?
耐寒性の低さと、病害への弱さが栽培地域を限定するからです。やぶきたのように日本各地で栽培できる品種と違い、あさつゆは主に温暖な南部でしか育ちません。限られた産地と、主要品種に比べた少ない収量が合わさって、総生産量は控えめに留まります。単一品種のあさつゆ茶が高値で取引されるのは、そうした背景があります。

あさつゆは、手間をかける価値のあるお茶です。手間を受け入れる農家の忍耐と、正しい温度でゆっくり旨味を引き出す飲み手の忍耐と。その両方がそろったとき、「天然玉露」という呼び名がただの修辞ではないことが、一杯の中で分かります。

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