煎茶の入れ方で、いつもの一杯は驚くほど変わります。苦い、薄い、なんだか落ち着かない。そんな迷いの多くは、茶葉の質より先に、温度と量で決まってしまうものです。
私たちは、お茶の淹れ方が難しく見えるときほど、まずはこの2つだけを整えるのが近道だと考えています。煎茶の温度は70〜80℃、茶葉は200mLに4〜5g。これだけで、香りも旨味もぐっと素直になります。
煎茶を入れるのに必要な道具
煎茶を入れる道具は多くありません。横手急須、湯冷まし、湯のみ、そして茶葉。特別な茶席のしつらえより、湯をきちんと冷ませること、最後まで注ぎ切れること。そのほうがずっと大切です。
急須の選び方を知っておくと、毎日の入れ方が安定します。茶葉そのものの輪郭をつかみたい方は煎茶とはも参考にしてください。水の硬さが気になるなら、軟水と硬水も役に立ちます。

- 急須は横手急須が定番。注ぎ切りやすい形が向いています。
- 湯冷ましがない場合は、湯のみを使って温度を落としても十分です。
- 茶葉は4〜5g。大さじ約1杯が目安ですが、深蒸し煎茶は量りを使うとぶれにくくなります。
- 湯のみは複数あると、まわし注ぎで濃さをそろえやすくなります。
道具選びで迷ったら、まずは200〜350mLほどの小ぶりな急須から始めるのがおすすめです。煎茶は短時間で抽出するため、大きすぎる急須より、湯がだぶつかずに素早く出せるサイズのほうが扱いやすい。毎日使う道具だからこそ、気負わないことも大事です。
煎茶の入れ方 基本の手順
煎茶の入れ方は、沸かした湯を冷まし、量った茶葉に注ぎ、静かに待って、最後の一滴まで出し切ること。この順番だけです。けれど、味の差ははっきり出ます。
お湯を沸かして冷ます
まずは新しい水をしっかり沸騰させます。ただし、沸騰直後のお湯をそのまま急須へ注がないこと。ここが急所です。湯を湯冷ましや湯のみに移すと、およそ1回で10℃ほど下がります。90℃の湯なら80℃へ、もう一度移せば70℃近くへ。通常の煎茶ならこの70〜80℃が中心です。上級煎茶や玉露は、さらに低めに振ることもあります。


湯のみを経由して冷ます方法には、器を温められる利点もあります。冷えた器へいきなり煎茶を注ぐと、せっかく合わせた温度が落ちすぎることもあるからです。小さなひと手間ですが、香りの立ち方が整います。
茶葉を量って急須に入れる
次に茶葉です。200mLに対して4〜5g、大さじ約1杯が目安。煎茶は見た目のかさが茶葉ごとに違うので、本当に同じ入れ方を続けたいなら量りが便利です。とくに深蒸し煎茶は葉が細かく、さじ一杯でも出方が変わりやすい。ここで量が決まると、お茶の淹れ方全体が整います。


新茶のように軽やかな葉は、見た目の量のわりに軽いことがあります。反対に深蒸し茶は細かいぶん、同じ大さじでも実際の重さが乗りやすい。だからこそ、煎茶の入れ方で迷ったら、最初はグラムで覚えると再現しやすくなります。
お湯を注いで待つ
急須に茶葉を入れたら、70〜80℃の湯を静かに注ぎます。1煎目の抽出時間は60〜90秒。蓋をして待つだけで十分です。高温すぎると渋味と苦味が先に立ち、低すぎると輪郭がぼやけます。温度と時間の関係をもう少し掘り下げたい方は、温度と味の関係もどうぞ。



待つあいだに急須を大きく揺すったり、長く放置したりする必要はありません。葉が自然に開く時間をつくれば十分です。香りは青く、液色は明るい黄緑からやや濃い緑へ。見た目の変化も、入れ方を覚える目印になります。
注ぎ分ける
抽出できたら、湯のみへ少しずつ交互に注ぐ「まわし注ぎ」です。最初の滴は軽く、後半ほど濃くなるため、行ったり来たりしながら均一に整えます。急須はふたを親指で軽く押さえ、無理に振らず、一定の角度でゆっくり。落ち着いた所作。そこでも味は変わります。




そして最後の一滴まで注ぎ切ること。急須に湯を残すと、茶葉が浸かったままになり、次の煎で渋味が出やすくなります。一滴まで。煎茶らしいきれいな後味はここで決まります。
一煎目がうまく入ると、湯のみごとの濃さの差が小さく、口当たりにもばらつきが出ません。もし一方だけ薄い、もう一方だけ渋いと感じるなら、抽出時間より先に注ぎ方を見直すのが近道です。
深蒸し煎茶の入れ方
深蒸し煎茶は、通常の煎茶より蒸し時間が2〜3倍ほど長い茶です。葉が細かく砕けやすいため、抽出は速め。1煎目は45〜60秒を目安にすると、コクを残しつつ重たくなりすぎません。水色が濃く少し濁るのは正常で、むしろ深蒸し茶らしい表情です。

茶葉が細かいぶん、急須の茶こしは目の細かな陶器製や広い面で受けるタイプが向いています。90秒以上置くより、短めに出して二煎目へつなぐほうがきれいにまとまることが多い。深蒸しの入れ方は、速さの感覚が鍵です。
普通煎茶と同じつもりで長く置くと、旨味のあとに粉っぽさや詰まりを感じることがあります。そんなときは茶葉を減らすより、まず抽出時間を短くすること。深蒸し煎茶は「短く、きちんと出し切る」が基本です。
お湯の温度が味を変える理由
煎茶の味を左右する主役は、「テアニン」(旨味に関わるアミノ酸)と「カテキン」(渋味に関わるポリフェノール)です。テアニンは比較的低温でも溶け出しやすく、カテキンは80℃を超えるあたりからぐっと前に出てきます。苦味に関わるカフェインの出方も含めて見たい方は、緑茶のカフェインも参考になります。
だから70℃なら旨味がやわらかく立ち、80℃ならほどよい渋味も入ってバランス型、沸騰直後では一気に硬い印象へ。煎茶 温度の目安が繰り返し語られるのは、この差がはっきりしているからです。温度計がなくても、湯を器に移して冷ますだけで十分。お茶の入れ方は、理屈より先に湯の動きで覚えられます。
味がきついなら、茶葉を減らす前に湯温を下げてみる。反対に、ぼんやりしているなら時間を延ばす前に80℃側へ寄せてみる。その調整だけで、同じ茶葉がずいぶん違って感じられます。煎茶は繊細ですが、考え方は案外シンプルです。
2煎目・3煎目の楽しみ方
一煎目を出し切った茶葉は、まだ終わりません。2煎目は80℃前後で15〜30秒。香りよりも厚みが前に出やすく、味の輪郭が少し変わります。3煎目は30秒、熱湯に近い湯でも構いません。軽く、すっと抜ける余韻。良い煎茶なら3煎まで自然に楽しめます。

収穫時期も風味に大きく影響します。一番茶は旨み成分のテアニンが最も豊富で、すっきりとした甘みが特徴です。収穫時期による違いについては、一番茶・二番茶の解説もあわせてご覧ください。
水が味に与える影響を見直したい方は軟水と硬水を、冷たい抽出へ広げたい方は水出し緑茶の作り方をどうぞ。急須そのものを探しているなら、FETCの急須コレクションもご覧ください。入れ方が落ち着くと、煎茶はぐっと身近になります。
