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鹿児島県の2020年のお茶の生産量は全国第2位。しかもその生産量は年々増えており、静岡県に迫る勢いです。2020年の生産量は23,900トンと、国内生産量の約34%にあたります。

品種としては、”やぶきた”を筆頭に”ゆたかみどり””さえみどり””あさつゆ””おくみどり”などが栽培されています。中でも”ゆたかみどり”は、鹿児島県が最大の生産地であり、日本全国で”やぶきた”に次いでシェア第2位の品種です。

今回は、そんな鹿児島県のお茶づくりの歴史や産地をご紹介します。

鹿児島県のお茶の特徴

鹿児島県では、色々な種類のお茶が県内の至るところで作られています。

地域によって差異はありますが、毎年日本全国数十件の生産者とお会いする私たちが感じる鹿児島のお茶の特徴をご紹介します。

被せ・深蒸しの旨味のお茶

鹿児島県のお茶の特徴を一言で表すなら、「被せ・深蒸し」です。

特に、日本で最大の生産量を誇る市区町村・南九州市では、広大な平野部を活かしたお茶作りが行われており、長い日照時間からお茶の葉が厚く、苦渋味の強いお茶に育ちます。

そのため収穫前には被覆栽培を行い苦渋味を抑え、蒸しを長く行うことでまろやかな味わいに仕上がる深蒸し煎茶の生産が主流となりました。

鹿児島県の新茶は日本一早い?

本土最南端のお茶どころである鹿児島県では、その温暖な気候と日照時間の長さから、新茶の出荷が日本で一番早いことも特徴です。

通常静岡や京都では4月の中旬から5月上旬にかけて収穫がされるのに対し、鹿児島は4月上旬から、種子島では3月下旬から、収穫が始まります。

この新茶は「走り新茶」または「大走り新茶」とも呼ばれ、最も早く市場に出回るおとなります。

一般的に新茶は、市場に出るのが早ければ早いほど高値が付く傾向にあります。

日本で最も早くお茶が作られる鹿児島県では、そのスピードを求めて”ゆたかみどり”、”さえみどり”、”あさつゆ”などの早稲品種が多く作れらています。

“ゆたかみどり”の一大産地

国内の生産量シェアで、”やぶきた”に次いで2番目に多く生産されている緑茶向け品種”ゆたかみどり”は、そのほとんどが鹿児島県内で生産されています。

旨味が濃く、同時に渋味も強いこの品種は、被覆栽培で旨味をしっかりと蓄えさせ、深蒸しで渋味を抑えて作ることで、非常にバランスの良いお茶に仕上がります。

また、温暖な気候を好む早稲品種でもあり、新茶としてのスピードが求められる鹿児島という産地にぴったりの品種なのです。

打倒静岡?国内生産量1位になる日も近い

長らく、国内最大のお茶どころとして君臨してきた静岡県ですが、近年は山間部でこ農作業の効率化が図れないことと後継者不足から、その生産量は伸び悩んでいます。

それに対して後発地域としての利点を最大限に活かし、大規模で効率化された茶生産が盛んな鹿児島県の生産量は急速に伸びており、2020年の生産量は、静岡県が25,200トン、鹿児島県が23,900トンと肉薄しています。

2020年 都道府県別荒茶生産量
出典:農林水産省

2021年には、この順位は逆転するとも言われており、茶産地として鹿児島県が日本一に輝く日も近いかもしれません。

鹿児島県のお茶づくりの歴史

鹿児島県でお茶の栽培がはじまったきっかけには、いくつかの説があります。

ひとつは、鎌倉時代の初期、平家の落人によって金峰町阿多・白川に伝えられたという説。もうひとつは、室町時代に、宇治からお茶の種を取り寄せて吉松町(いまは合併により湧水町)に蒔いたという説です。

その後、島津藩政時代にお茶の栽培が奨励されるようになりましたが、本格的なお茶の栽培や生産がはじまったのは、第二次世界大戦以降のこと。

後発地域としての利点を生かし、機械化による低コストかつ大量生産の設備を早期から導入し、その生産量を大きく伸ばしました。平坦な栽培地が多いのも、機械化が大きく進んだ要因の一つです。

農業の法人化も進んでいて、大規模な農家が多いことも鹿児島県のお茶栽培の特徴といえます。特に南九州市は、茶農家一人当たりの平均農耕面積が日本で最も大きいく、機械化の恩恵を大きく受けた茶産地といえます。

鹿児島県のお茶の産地とブランド茶

九州の南端にある鹿児島県では、温かい気候と長い日照時間を生かして、多くの地域でお茶の栽培が行われています。

特に南九州市は、茶の生産量が静岡県の市区町村を抑えて全国1位の市であり、日本最大のお茶どころとなっています。

鹿児島県で作られるお茶を、総称して「かごしま茶」と呼び、その中でもブランド茶として有名なのが「知覧茶」です。

広大な平野部で作られる深蒸し茶「知覧茶」

南九州市知覧の茶畑

元々は南九州市知覧町で作られるお茶のみを示す「知覧茶」ですが、平成29年の市町村合併により、別々のブランド茶であった「知覧茶」「頴娃茶」「川辺茶」をまとめて「知覧茶」として扱うようになりました。

温暖な気候と日照時間を活かした「被せ・深蒸し」のお茶が盛んに作られる、国内最大のお茶どころです。

かつては他県の茶商に買われ、他県のお茶と混ぜてブレンド茶として販売されることも多かったものの、近年では品質も上がっており、ブランド茶としての評価が高まっています。

香りを活かした山のお茶「霧島茶」

霧島市の茶畑

鹿児島空港のすぐ側、高千穂峰の麓に広がる霧島市は、その地名の通り「霧」が深く立ち込め、厳しい寒暖差と恵まれた土壌から、美味しいお茶が作られています。

標高が高く、気温の低い霧島市は、摘採時期が南九州市と比べて2〜3週間ほど遅く、新茶としては若干出遅れてしまうため、品質にこだわったお茶が多く作られる地域です。

近代的な大規模茶園が広がる志布志市

志布志市は、鹿児島県で南九州市に次いで2番目に生産量の大きい地域です。

その背景には、機械メーカーとの協業により実現した、作業効率を極めた超大規模な茶園があります。ドローンによる摘採時期の見極めや摘採の全自動化など、広大な平野部を活かした近代的なお茶作りが行われています。

まだまだブランド茶としては無名な志布志のお茶ですが、茶業の未来をかけた実験的な農園に、近年注目が集まっています。

2023年, 1月 09日