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世界の中で、第10位のお茶の生産量を誇る日本。生産量自体はそこまで大きくはないものの、日本の緑茶は世界中に愛好家がおり、「日本茶」のブランド力は世界に健在です。
国内の各所には、「お茶の名産地」と呼ばれる場所が多々あります。ここでは、都道府県のお茶の生産量や、それぞれの産地の特徴などをご紹介します。
日本のお茶の産地
日本には、静岡県をはじめとするお茶の名産地が多々あります。
ここでは日本全体のお茶の生産量や、都道府県別の生産量などを見ていきましょう。
日本のお茶の生産量
2020年、天候の影響で一番茶の生産量が伸び悩んだり、新型コロナウイルスの影響で二番茶の生産が行われない地域が多かったりと、荒茶生産量が激減しました。
新茶関連のイベントが中止になったり、茶市場での価格の下落が原因で二番茶を作っても赤字になってしまう生産者が多かったりと、新型コロナウイルスが茶業に与えた影響は計り知れません。
都道府県別の生産量
2020年現在、日本では41の都府県でお茶が作られています。
ただし、お茶は寒冷地では育ちにくい農作物なので、新潟県や茨城県より北の地域では商用での栽培はほとんどされていません。
中でも最も生産量が多いのは静岡県と鹿児島県で、それぞれ日本全国の生産量の約36%、34%を占めています。
長年生産量トップを誇っていた静岡県ですが、近年は鹿児島県がその生産量を大きく伸ばしており、2021年にはその順位は逆転するのではないかとも言われています。
ちなみに、2020年の茶の産出額では鹿児島県が静岡県を初めて上回り、鹿児島県の茶業がいかに成長しているかがよくわかります。
3位以降には、三重県、宮崎県、京都府、福岡県が続きます。
都道府県別の作付け面積
2020年現在、都道府県別の作付け面積が最も大きいのは静岡県。
15,200ヘクタールもの土地でお茶が作られており、2位以降を大きく引き離しています。
2位以降は鹿児島、三重、京都、福岡がランクインするなど、基本的に生産量と作付け面積は相関しています。
鹿児島県の生産量が作付け面積に対して非常に大きいのは、その温暖な気候から二番茶・三番茶・秋冬番茶など、お茶が作れるシーズンが長いためです。
都道府県ごとの特徴
静岡県
静岡県は、上述した通りお茶の生産量・作付け面積が共に日本一の都道府県。
牧之原大地や愛鷹山、天竜川流域の山間部など、良質なお茶づくりに適した土地が多々あるのが特徴です。
ただし、茶業の経営の悪化や、後継者不足などの問題が起こってきているのもまた事実です。現在では、そのような状況を打開すべく、お茶を利用して観光客を呼び込む「グリーンツーリズム」などを展開しています。
鹿児島県
鹿児島県は、日本第2位のお茶の生産量を誇るお茶どころです。
南九州市や志布志市で行われる、温暖な気候と広大な平野部を利用し、後発地域としてのメリットを最大限享受した効率的なお茶作りが特徴的です。
それ以外にも、霧島市などの昼と夜の寒暖差が大きい山岳地帯の特性を生かした香り高いお茶など、県内のあらゆる地域で多様な味わいのお茶づくりを行なっています。
三重県
三重県で栽培されるお茶は「伊勢茶」とも呼ばれ、およそ1,000年もの長い歴史を持っています。
江戸末期から明治初期にかけて、お茶の輸出によって外貨を得るという重要な役割を担っていた地域でもありました。
現代では、茶園に覆いを被せて栽培する「かぶせ茶」の生産量が日本第1位の地域です。
宮崎県
宮崎県は、江戸時代からお茶の名産地として知られていた地域です。現在では日向市、都城市など、広大な土地を活かしたお茶作りが行われています。
また、五ヶ瀬や高千穂には山間部に作られた畑が多く、寒暖差を利用して作られる香り高いお茶が作られています。通常の煎茶とは違い、殺青を蒸しではなく釜炒りで行う「釜炒り茶」の製造が盛んな地域でもあります。
山間部の寒さにも耐えうる「きらり31」という品種のお茶の育成や、新型の製茶機の共同開発など、茶業の支援に積極的に取り組んでいます。
京都府
伝統的なお茶の産地として知られている京都府ですが、その基盤を作ったのは室町時代の3代将軍、足利義満。宇治茶のあまりの美味しさに惹かれた彼は、「宇治七名園」というお茶の名産地を切りひらいたと言います。
また、品質を重視する宇治茶の製法は現代の機械製茶にも受け継がれており、手揉みの工程をベースとして製造されているのが特徴です。
福岡県
福岡県のお茶は甘くて深みのある味わいが特徴的です。
八女で作られるの伝統本玉露は昔ながらの稲わらを使用して栽培されており、全国茶品評会で10年連続農林水産大臣賞を受賞している実績があります。
奈良県
奈良県は、「大和茶」というお茶の生産地です。大和茶は806年に始まったと言われており、およそ1,200年もの間受け継がれてきたことになります。
月ヶ瀬など、山間部に作られた畑が多く、厳しい寒さの中で作られる自然で優しい味わいのお茶が特徴的です。またその寒さから、国内でも最も一番茶の摘採が遅い地域の一つでもあります。
元々は煎茶やかぶせ茶、番茶などの生産が主でしたが、近年では抹茶の原料である「碾茶(てんちゃ)」の生産も行なっています。
佐賀県
佐賀県はお茶の名産地「嬉野」を擁する都道府県で、全国第8位の生産量を誇っています。
嬉野茶は、茶葉の香りや旨味が強いのが特徴のお茶。また、宮崎同様古くから釜炒り茶の製造が続いている地域でもあります。
幕末には輸出品として大量にイギリスに輸出されていた歴史があります。
埼玉県
埼玉県の狭山茶は、静岡茶・宇治茶と並んで日本三大銘茶に数えられる銘茶。
緑茶を栽培している中では北限に近い地域で、寒い冬を乗り越えることで力強く濃厚な味わいに仕上がることが特徴です。
寒冷な環境が原因で年2回しか収穫できないものの、品質や貯蔵性が非常に優れているのが魅力です。
岐阜県
岐阜県は、「美濃茶」と呼ばれるお茶の産地です。
3,000m級の山々を多く擁する恵まれた環境で、豊かな香りや味を持つお茶を栽培しているのが特徴です。
現代では、西美濃地域の「美濃いび茶」、美濃中央地域の「美濃白川茶」が二大銘柄として販売されています。