茶種|発酵茶(紅茶)
みなさんが普段から飲んでいる紅茶の事を「発酵茶」といいます。
この記事では世界で一番飲まれているお茶、発酵茶(紅茶)について詳しくご紹介します。
発酵茶(紅茶)って?
発酵茶とは、茶葉をしっかり発酵させて作ったお茶のことで、「紅茶」がこの発酵茶にあたります。
お茶の品種や種類は沢山ありますが、元を辿ると「中国種」と「アッサム種」の2種類のみ。発酵茶(紅茶)の多くは、茶葉の発酵が進みやすい「アッサム種」の茶の木から作られています。
発酵茶(紅茶)の味・香り・色の特徴
発酵茶(紅茶)は美しい赤色と、華やかで優しい香りと味わいが特徴です。
ただし、発酵茶(紅茶)は山地の気候や風土によって味や香りが大きく異なります。
特に世界三大紅茶に選ばれた紅茶、インドのダージリン・スリランカのウバ・中国のキーモンは、味も香りも独特で、私たちが普段から口にすることが多いペットボトルの紅茶や、ティーバッグの紅茶とは全く異なる味と香りです。
味と香りが幅広いのも発酵茶(紅茶)の特徴であり、魅力です。
発酵茶の成分の特徴
発酵茶(紅茶)には、茶葉そのものの成分に加え、茶葉を発酵することによって作られる成分が含まれています。
アロマのような香りを出してくれる香気成分、お茶の色を美しい赤に変える成分テアフラビン・テアルビジンなどが代表的です。
発酵茶の製造工程の特徴
発酵茶はその名の通り発酵させて作るお茶です。
紅茶の香り・味・コク・水色を作るために重要な酸化酵素を活性化する揉捻(じゅうねん)という作業を行います。
その後、発酵、乾燥・選別(等級分け)などの工程があり、商品として並びます。
発酵茶(紅茶)について
最後に発酵茶の山地や起源をご紹介します。
紅茶の主な産地
日本では緑茶がメジャーですが、実は紅茶は世界20カ国以上で生産されており、世界のお茶の生産量の70%を占めています。中でも特に有名な紅茶の産地をご紹介します。
インド
紅茶大国として有名なインドは、紅茶の生産量もダントツの世界一、その生産量は年間100万トンにも昇ります。
インドで生まれたダージリンは世界三大紅茶の1つに選ばれており、その香りの良さは「紅茶のシャンパン」と称えれるほど。日本でも多く飲まれている紅茶です。ちなみに、ダージリンと同じくらい有名なアッサムもインド産です。
スリランカ
スリランカの紅茶は「セイロン紅茶」と呼ばれ、世界中で愛されています。
世界三大紅茶「ウバ」の生産地であるスリランカでは、主に山脈周辺で栽培されているのですが、その高度によって品質のランクが分かれています。
生産量は世界2位の32万トンです。
ケニア
日本だと、ケニアといえばコーヒーのイメージが強いですが、実は紅茶生産量は世界3位で、その量はスリランカにせまる30万トン。主にヨーロッパに輸出されています。意外と歴史も長く、第一次大戦後から茶園が開拓されています。
中国
世界三大紅茶「キーモン」の産地でもある中国は、烏龍茶などの中国茶の印象が強いですが、実は紅茶の発祥の国でもあります。紅茶の年間生産量は5万トンとほかの紅茶の名産地に比べると少ないですが、近年紅茶生産に力を注いでおり急激に生産量が増えています。
和紅茶
日本で作られた紅茶のことを和紅茶といいます。
あまり知られていませんが、実は明治時代から栽培されていて、食の国際大会で金賞をもらうほど品質の良い紅茶です。万人に好かれるようなクセのないまろやかな味と香りです。
インドネシア
現在の紅茶生産量は世界4位ですが、第二次世界大戦で茶園が燃えてしまう前はインドに並ぶ紅茶大国でした。特徴はセイロンティーに似ており、マイルドでクセのない味わいが特徴ですが、ややコクが足りないため主にブレンド用に使われます。年間生産量は13万トン。
紅茶の起源
お茶の歴史は中国に始まり、その歴史は紀元前までさかのぼりますが、紅茶の歴史は比較的新しく、1720年以降だといわれています。
紅茶の起源には諸説ありますが、福建省に集められていた半発酵茶の「武漢茶」が西ヨーロッパのお茶の主流になり、そこから発酵度を上げたりと試行錯誤し開発を繰り返すことで生まれたのが、今私たちの身近にある紅茶とされています。
その後、紅茶に向いている品種「アッサム種」がインドで発見され、インドやその周辺のスリランカなどでお茶の栽培が活発になり、紅茶が世界に広がりました。
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後発酵茶の製造方法について
最近よく見かけるようになった「プーアール茶」や「碁石茶」ですが、その独特の風味がどうやって生み出されているのかご存知でしょうか。実はある微生物の力を借りてその味や香りが生み出されています。微生物を使う製法から「プーアール茶」や「碁石茶」は「後発酵茶」とも呼ばれているのですが、一体なぜそのように呼ばれているのか、詳しく解説していきます。
後発酵茶の製造工程の特徴
「後発酵茶」とは、茶葉を発酵させる際に微生物を加えて発酵させることで作られるお茶をいいます。
一般にお茶の世界では「発酵」というと酸化発酵を意味し、この発酵は酵素の働きによって行われます。しかし、後発酵茶の「発酵」は微生物による働きをいい、いわゆるカビ菌や乳酸菌などが作用することで行われます。
使う菌による違い
後発酵茶では、麹菌のような酸素を好むカビ菌、乳酸菌のように酸素を嫌う菌の主に2パターンの菌を使い分けます。カビ菌だけを使うものに「プーアール茶」、乳酸菌だけを使うものに「阿波番茶」、カビ菌と乳酸菌の2つを使って二段階に発酵させるものに「碁石茶」などがあります。
後発酵茶の製造工程
「後発酵茶」の製造工程は使う菌ごとに違います。先ほど紹介した「プーアール茶」「阿波番茶」「碁石茶」もそれぞれの製法に違いがあります。この3つのお茶を例に解説していきます。
プーアール茶
「プーアール茶」はカビ菌を茶葉につけて数ヶ月以上発酵させて作ります。中には10年以上も熟成させたものもあり、熟成具合で味や効能も変化します。
1. 殺青(蒸熱)
収穫した茶葉を蒸気で蒸して、茶葉がもつ酸化酵素の働きを止めます。
2. 揉捻
熱いうちに揉んで、茶葉の水分を均一にし、茶葉の成分が出やすい状態にします。
3. 握堆(カビ付け)
カビ菌を加え、特定の温度・湿度管理を行いながら発酵させます。この工程の精度で品質や味・香りに差が出るため、重要な役割を担っています。
4. 乾燥
固まった茶葉をほぐして乾燥させれば、「プーアール茶」の完成です。
阿波番茶
「阿波番茶」は、元々桶などに住み着いている土着菌を利用して発酵させて作ります。
昔から徳島県で作られている個性的な郷土茶の一つです。
1. 殺青(茹でる)
収穫した茶葉を茹でて、酸化発酵が起こらないよう酵素の働きを止めます。他にも発酵の邪魔をする雑菌の繁殖を抑える効果もあります。
2. 揉捻
茶葉を揉んで、水分を均一にさせ、茶葉の成分が出やすい状態にします。
3. 漬け込み
揉捻後の葉を大きな桶に詰めて葉の茹で汁をかけ、上から突いて空気をしっかり抜きます。木の蓋を乗せ、その上から重石を乗せます。
この間に乳酸菌によって発酵が進み、大体2週間〜1ヶ月ほど漬け込まれます。
4. 乾燥(桶出し)
発酵が終わったら取り出して天日乾燥させます。その後、大きな茎などを取り除く選別作業を行えば「阿波番茶」の完成です。
碁石茶
「碁石茶」はカビ菌と乳酸菌の2種類を使い、二段階に発酵させて作ります。
高知県で江戸時代から作られており、今でもその製法が受け継がれています。
このお茶も土着菌の存在が欠かせず、昔から榁(むろ)やむしろに住み着いている菌を使います。
1. 殺青(蒸熱)
茶葉の収穫は、葉を摘むのではなく枝ごと刈り取っていきます。
枝ごと収穫した葉を蒸気で蒸して、茶葉のもつ酸化酵素の働きを止めます。
2. カビ付け
蒸し上がった茶葉をカビ付け室のむしろに広げて積み上げ、約1週間ほど寝かせて発酵させます。この間に乳酸菌が茶葉へ育まれていきます。
3. 漬け込み
カビが一面に生えてきたら、今度は桶に詰め替え、茶葉を蒸した時に出た汁をかけて重石を乗せます。ここで数週間漬け込むことで乳酸菌発酵がされます。
4. 裁断
発酵が終わったら固まりになったものを取り出し、3〜4cm角に専用の包丁で切っていきます。
5. 乾燥
切り終えたものむしろの上に並べ、天日乾燥させれば「碁石茶」の完成です。
茶葉は乾燥していくと黒く変化し、その色と茶葉の並ぶ様子が碁石のように見えることから、「碁石茶」と呼ばれるようになったと言われています。
発酵茶(紅茶)の製造方法について
私たちが普段飲んでいる緑茶・紅茶・烏龍茶など、味も香りも色も異なるこれらのお茶が、全て同じ茶葉から作られているのを知っていますか?
これらのお茶が異なる味わいや香りを持つのは、製造方法の違いによるものです。
今回は、なぜ紅茶が発酵茶と呼ばれるのか、紅茶の香りはどうやって生み出されるのかを、製造工程と共に解説していきます。
発酵茶(紅茶)の製造工程の特徴
発酵茶とは、酵素による発酵を完全に進めて作るお茶をいいます。
煎茶や深蒸し煎茶のような不発酵茶とは逆に、茶葉のもつ酸化酵素の働きを利用して、酸化発酵をさせるのが特徴です。
元々は約200年前に中国で生まれた「工夫製法(手作り製法)」でしたが、今では機械で作られることが多くなりました。
主な製法としては「オーソドックス製法」と「アン・オーソドックス製法」の二つがあり、さらにこの二つを組み合わせた製法も生み出されています。
ここでは、伝統的な「オーソドックス製法」をご紹介します。
発酵と酸化?
お茶の世界で使われる発酵とは、味噌やヨーグルトのように微生物(菌)によって起こる発酵とは違い、茶葉のもつ酸化酵素よって起こる酸化のことを指しています。
酸化とは、酸素と酵素が結びついて、元の成分を変化させる反応をいいます。
一部、後発酵茶のように微生物の力で発酵させるお茶もありますが、基本的にお茶業界では、この酸化発酵を発酵と呼んでいます。
収穫された生葉が出荷されるまで
収穫時期になると茶葉は摘み取られ、摘み取られた生葉は揉みや乾燥の工程を行った「荒茶」へと加工されます。その後「仕上げ」を行い、製品として出荷されていきます。
荒茶ができるまで
生葉は摘み取られた後「萎凋 → 揉捻 → 玉解き・ふるい分け → 発酵 → 乾燥」という工程を経て「荒茶」へと加工されます。
1. 萎凋
生葉に含まれている水分を均一に取り除くため、しおれさせていく作業を萎凋と呼びます。
以前は日陰干しが多かったのですが、現在は萎凋槽を使って大量の温風でしおれさせる「人工萎凋」が行われています。
2. 揉捻
茶葉の細胞を破壊し、葉の中の酸化酵素の働きを促して形を整えていきます。
酸化酵素が空気中の酸素に触れると活性化し、カテキンやペクチン、葉緑素が酸化発酵します。この酸化酵素こそが、紅茶の香り・味・コク・水色を作る重要な要素であり、紅茶と緑茶の違いへと繋がります。
この工程では大体45〜90分発酵させますが、酸化発酵が一気に進みすぎないように発酵を抑える目的で玉解機にかけ、冷却してから再び揉む作業を繰り返します。
3. 玉解き・ふるい分け
揉捻で茶葉は塊になるので、これを解いて平均的に空気に触れるようにし、酸化発酵をさらに促進していきます。この工程では20〜30分ごとに玉解機にかけます。
機械のメッシュで茶葉をふるい、下にふるい落とされたものは「ふるい下」といい、次の工程に移します。ふるいに残った大きい葉は「ふるい上」といって再び揉捻の工程に戻されます。
4. 発酵
室温25〜26度、湿度90%の発酵室に、厚み4〜5cmほどに均一に広げ、2〜3時間放置します。この工程の間に、緑色だった葉が鮮やかな赤銅色になり、紅茶らしい香りも漂い始めます。
ただし、発酵しすぎると紅茶本来の香りが台無しになってしまい、水色も黒っぽくなるため、発酵を止めるタイミングを見極める必要があります。
5. 乾燥
発酵終了時の茶葉はまだ水分が多く、そのままだと発酵が続いてしまうため、乾燥機に入れて100度前後の高温熱風で乾燥させます。乾燥させることで酸化酵素を失活させ、水分を5%以下にまで減らしていきます。
仕上げ
乾燥まで終えると「荒茶」は完成しますが、「荒茶」ではまだ製品として出荷できません。そこで「仕上げ」として「選別・整形 → ブレンド」を行うことで、ようやく製品として出荷することができます。
6. 選別(等級分け)
荒茶を何度もふるいにかけ、大きさや葉の形で選別します。この選別によって茶葉は等級に分けられていきます。この等級を「リーフグレード」といいます。
7. ブレンド
最後に茶葉をブレンド(配合)します。約20種類以上の茶葉を使いますが、様々な種類を混ぜるのではなく、同じ産地内のものを合わせて品質を安定させるのが目的です。ブレンドが紅茶の価値を左右するため、いかに消費者の好みにあったブレンドを行えるかがポイントになります。