お茶の農薬
お茶を栽培するにあたり必要なのが「農薬」。
病気や害虫の被害を受けやすい農作物は、安定供給のために農薬を使い栽培されます。
作物によって農薬を使う目的は様々ですが、今回はお茶の栽培時に使用される農薬について解説していきます。
お茶に使う農薬について
お茶の栽培時に使う農薬には、殺虫剤・殺菌剤・除草剤などがあります。
殺菌剤には、病気を予防するために使う保護剤と病気を治療するために使う治療剤があります。
農薬の使用に関しては農薬取締法や食品衛生法、水質汚濁防止法などの法令により、使用時期や使用方法、残留基準などが厳しく制限されています。
お茶の病気
お茶の病気は複数あり、侵される部分は新芽・葉・根・茎とそれぞれ異なります。
品種よってもかかりやすい病気が異なりますが、主なものとして、炭疽病・もち病・赤焼病・輪斑病・新梢枯死症などがあります。特に、炭疽病はお茶の代表的品種である「やぶきた」がかかりやすいため、全国の茶園でみられます。
これらの病気は農薬を使うことである程度防ぐことができます。
お茶の害虫
お茶の害虫は100種近くあり、多数の種類が存在しますが、そのうち防除を必要とするのは十数種類です。
主なものとしては、チャノキイロアザミウマ・カンザワハダニ・チャノミドリヒメヨコバイ・チャノホソガ・クワシロカイガラムシなどがあります。
種類によって、茶樹の樹液を吸うもの、新芽などの葉を食べるもの、幹や枝を枯れさせるものなどお茶栽培に及ぼす害は様々です。
農薬を使うメリット・デメリット
次に農薬を使うメリット、デメリットを解説していきます。
メリット
病害や害虫を防ぐためには、それらに耐性のある品種を栽培することが基本ですが、収量や品質の良さを兼ね備えた品種を育てることはなかなか難しいため、その欠点を補うために農薬を使います。
病気の発生しやすさは地形によって大きく異なり、病気が発生しやすい地域では、農薬を使わないと満足にお茶が育てられないこともしばしばです。
また雑草などが増えてしまうと、茶樹の生育に必要な養分が雑草に取られてしまうため、それを防ぐために除草剤をまき、雑草の増殖を防ぎます。
人手不足の続く農家にとっては労働の軽減にもつながります。
デメリット
殺虫や除草などの効果を発揮するためには強い毒性が必要となります。消費者だけでなく散布する農家も、その健康被害を懸念しています。
また、特定の虫や雑草だけに作用させることで生態系そのものを乱し、環境面への悪影響も否めないのが現状です。
昔に比べ、人体や環境に優しい農薬が増えましたが、いまだに多くの問題が残っています。
お茶の製造工程
皆さんは普段飲んでいるお茶がどうやって作られているのかご存知でしょうか。今回はお茶全体の製法や製造工程について大きくまとめました。収穫された生葉が出荷されるまでの主なプロセス、お茶を作る上で大切な「荒茶」と「仕上げ」について、さらに茶種ごとの製造工程の違いなどを解説していきます。
収穫された生葉が出荷されるまでの主なプロセス
お茶の葉は茶園で栽培され、収穫時期になると生葉は摘み取られます。その後、多くの製造工程を経た後、全国へと出荷されて私たちの手元に届くのです。この製造工程はお茶の種類によって様々ですが、主な流れとして「荒茶」と「仕上げ」の大きく2つに分けられます。その「荒茶」と「仕上げ」について見ていきましょう。
荒茶ができるまで
荒茶とは、仕上げがされる直前まで加工がされた茶葉のことで、出荷の直前まではこの荒茶の状態で保管がされます。
お茶の生葉には酸化酵素が含まれ、摘み取ったその瞬間から酵素の働きで発酵(酸化)が始まります。緑茶のように発酵させずに作るお茶は摘み取った後すぐに加熱処理を行い、生葉がもつ酵素を失活させます。その後、揉捻・精揉・乾燥などの工程を経て「荒茶」が完成します。
逆に紅茶のように茶葉を発酵させて作るお茶は、萎凋や揉みを行った後に高温多湿の発酵室で十分に発酵させます。しっかり発酵させた後に乾燥させて「荒茶」ができます。
発酵(酸化)
茶葉に含まれる酸化酵素の働きによって、摘み取った後すぐに発酵が進みます。この発酵は酸化酵素による酸化を指し、微生物が行う発酵とは異なります。
ただし、後発酵茶のように、微生物の発酵で作られるお茶も一部あります。
失活
加熱などの処理を行って酵素の働きを止め、発酵させないようにします。失活の方法としては、主に「蒸し製」と「釜炒り製」があります。
揉捻
茶葉に圧力をかけながら揉み、茶葉の水分を均一にしていくとともに、茶葉の成分が出やすいようにします。
精揉
茶葉に熱を加えて乾燥させつつ、一定方向にだけ揉みながら茶葉の形を整えます。
乾燥
念入りに熱風をあてて、茶葉をさらに乾燥させます。
これで「荒茶」の完成です。
仕上げ
荒茶の状態だと、形はまだ不揃いで水分が抜けきっていないため、このままだと製品としては出荷できません。そこで今度は「仕上げ」を行います。「仕上げ」は、「選別・整形 → 火入れ → 合組」の順に行われ、計量や検査・包装を経て出荷されます。「仕上げ」を行うことで、長期保存が可能になり、お茶の香味をよりよくする効果もあります。
選別・整形
荒茶をふるいにかけ、細かい茎などを取り除き、葉の大きさで選別します。さらに切断などの加工を行い、形を整えます。
火入れ
最後にもう一度火を入れて乾燥させることで、保存性を高めるだけでなく、お茶の香りを引き出します。
合組
最終調整として製品の配合や品質を均一にするために「合組(ブレンド)」を行います。
その後、計量や検査・包装を経て製品として出荷されていきます。
茶種による違い
お茶の製造工程は茶種によって少しずつ異なり、発酵の具合によって「不発酵茶」「半発酵茶」「発酵茶」「後発酵茶」の4つに分類されます。さらに、そのお茶を使って加工したものに「花茶」があります。では、それぞれについて解説していきます。
不発酵茶(緑茶・抹茶など)
「不発酵茶」は、生葉を摘み取った後、茶葉がもつ酸化酵素によって発酵が起こる前に加熱処理をし、発酵させずに作られるお茶です。
不発酵のため爽やかな香りと綺麗な緑色を保ち、ここに加熱の香ばしさが加わることで、上品な味と香りを生み出しています。
半発酵茶(烏龍茶など)
「半発酵茶」は、発酵を頃合いの良いときに止めて作られるお茶です。不発酵茶とは違い、まず生葉を萎れさせ発酵させることにより、酸化酵素などが働いて香気成分が作られ、特有の香りが生まれます。
緑茶と紅茶、それぞれの発酵度合いの、ちょうど中間ぐらいに位置します。
「半発酵茶」は発酵の度合いによってさらに細かく分けられ、「白茶(パイチャ)」「黄茶(ファンチャ)」「青茶(チンチャ)」などがあります。
発酵茶(紅茶)
「発酵茶」は、酸化酵素によって茶葉を十分に発酵させた後に作られるお茶です。半発酵茶と同様、生葉を萎れさせてから発酵させているため、酵素が働いて様々な香気成分が作られますが、半発酵茶より発酵時間が長いため、より華やかな香りが特徴です。
世界で最も消費されているのがこの「発酵茶」です。
後発酵茶(プーアル茶など)
「後発酵茶」は、酸化酵素ではなく微生物の働きによる発酵で作られます。
後発酵茶は使用される微生物によって味わいが変化し、麹菌の発酵によるものに中国の「プーアル茶」が、乳酸菌の発酵によるものには高知県の「碁石茶」などがあります。
花茶(ジャスミン茶など)
「花茶」は、緑茶や白茶、青茶などに花や果実で香り付けをして作られます。
代表的なのはジャスミン茶で、その上品な香りから日本でも人気の高いお茶の一つです。
ほうじ茶の製造方法について
日本のお茶として緑茶と同様に多くの人々に親しまれている「ほうじ茶」。「ほうじ茶」特有の香ばしい香りやあっさりとした口当たりは、一体どのようにして生み出されているのでしょうか。今回はその「ほうじ茶」の製造工程について詳しく解説していきます。
ほうじ茶の製造工程の特徴
ほうじ茶は、加工後の緑茶を、約200℃で褐色になるまで焙煎して作られます。本来は上等でないお茶を美味しく飲むための加工法であり、主に茎茶や番茶などの低級茶が使われていました。
一般に、一番茶の遅い時期の葉を原料にしたものは上質とされ、他にも上茎茶を焙じた「茎ほうじ茶」もあります。
焙煎で何が変わるの?
茶葉が焙煎されることにより香気成分である「ピラジン」が生成され、独特の香ばしい香りが茶葉に生まれます。さらにお茶独特の渋みが和らぎ、あっさりと飲みやすい口当たりに仕上がります。
元は緑色だった茶葉が茶色く変化するのも、このピラジンが生成されるためです。
ほうじ茶は自宅でも作れる?
本来は「際焙烙」と呼ばれる道具を使って焙じますが、実は家庭にあるフライパンでも焙煎ができます。今回はフライパンで簡単にほうじ茶を作る方法をご紹介します。
- フライパンを温める前に茶葉を平らに広げ、中火にかけます。
- すぐに混ぜずに、そのまましばらくじっと待ちます。
- 香りが立ち始めたら木べらで混ぜ、焦がさないよう注意しながら、好みの加減に色付くまで煎って完成です。
- 淹れるときは、香りを立たせるために熱湯を使い、少し濃いかな、と思う程度まで時間をおいて抽出させます。(目安は30秒ほど)
抹茶・碾茶の製造方法について
今では世界中で愛されるようになった「抹茶」。「碾茶(てんちゃ)」は抹茶の原料となるお茶ですが、「碾茶」は普通の緑茶と何が違うのでしょうか?
今回は「碾茶」がどのように作られ、さらにどのようにして「抹茶」に加工されていくのかを解説します。
抹茶・碾茶の製造工程の特徴
抹茶の原料となる「碾茶」は、煎茶と違い、茶葉を揉む作業を行わないのが特徴です。そして抹茶は、その碾茶を臼で挽き、粉末状に加工したものです。
揉捻の工程が無いため、荒茶の製造にかかる時間は煎茶より短くなりますが、茶葉を熟成させたり、臼で挽いたりする作業があるため、煎茶などと同様製造には手間と時間がかかります。
収穫された生葉が出荷されるまで
収穫された生葉はまず「碾茶」にまで加工されます。その後仕上げ工程を経て「抹茶」となり、各地へと出荷されます。
碾茶ができるまで
碾茶は「荒茶」と「仕上げ」の大きく2つの工程を経て作られます。まずは「荒茶」の工程を解説していきます。
蒸熱
収穫された生葉には酸化酵素が含まれ、収穫直後から発酵(酸化)が始まります。その働きを失活させるために蒸気で加熱するプロセスです。蒸し時間は煎茶より短く、鮮やかな黄緑色と「覆い香」を引き立てます。抹茶の色を濃くしたいときは蒸し時間を長くします。
冷却散茶
冷却用の散茶機に茶葉を移し、5mほどの機械の中で吹き上げては落とすのを繰り返して茶葉を冷やします。くっついた葉同士を離し、冷えた後も重ならないようにする効果があります。
荒乾燥・本乾燥
専用の乾燥炉で150℃を超える熱風を当てて乾燥させます。この乾燥炉は3層ほどのベルトコンベアーに分かれています。まず下段で急速乾燥させた後、上段に吹き上げられ、その後下の段に降りる間にゆっくりと乾燥させていきます。
これで碾茶の「荒茶」の完成です。
仕上げ
「荒茶」の状態では茶葉の茎の部分が乾き切っておらず、抹茶を作るには不向きなため、さらに「仕上げ」加工を行います。碾茶の仕上げ加工のことを「仕立て」ともいいます。
選別
つる切りという機械を使って茶葉から茎の部分を切り取ります。さらに硬い葉や残ってしまった茎などを選別し、質の良い葉の部分だけを集め、一定の長さに切り揃えます。
乾燥
選別の終わった茶葉に風を当てて、ゆっくり時間をかけて乾燥させます。風を当てることで取り除けなかった茎などを分離させます。
合組
好みの味や色に仕上げるため、種類の違う碾茶をブレンドします。これでやっと「碾茶」の完成です。
石臼挽き
徹底的に温度・湿度管理された碾茶を出荷直前に石臼で挽きます。これで「抹茶」の完成です。
抹茶・碾茶の産地
釜炒り茶の製造方法について
煎茶などの不発酵茶は、失活の方法によって「蒸し製」と「釜炒り製」の大きく2つに分けられます。日本緑茶の製法では「蒸し製」が主流ですが、中国緑茶の場合は「釜炒り製」がほとんどです。
今回は、この「釜炒り茶」の特徴や製法などを詳しく解説していきます。
釜炒り茶の製造工程の特徴
釜炒り茶は不発酵茶の一つで、生葉を摘んだ後、すぐに茶葉のもつ酸化酵素を失活させて作られます。その際、失活の方法として「釜炒り」を用いるのが特徴になります。
収穫された生葉が出荷されるまで
収穫された生葉は、摘み取られた産地の近くで「荒茶」にまで加工され、その後「仕上げ」加工が行われ、製品として各地へと出荷されます。
荒茶ができるまで
まずは「荒茶」の工程について詳しく解説します。
釜炒り
摘み取られた生葉は、300℃にものぼる熱い鉄釜でゆっくり丁寧に炒られます。火加減や仕上がりの見極めは、積み重ねられた経験や感覚が頼りです。
粗揉
強い力で揉み、適度な圧力を加えながら、熱風を当てて乾かします。茶葉を柔らかくし、茶葉のもつ水分を減らすための工程です。
揉捻
粗揉だけだと揉み足らないため、今度は加熱をせずに圧力だけで揉みます。茶葉の水分を均一にしていくとともに、細胞を破壊し、茶葉の成分が出やすいようにします。
中揉
揉捻後の茶葉は縮んで形も不揃いなため、中揉工程では熱風を当てながら茶葉を解きほぐし、細長い形に整え、さらに揉みます。
精揉
釜炒り茶の場合、この精揉のプロセスを行わないことが多いですが、 この工程を経たものをさらに「釜伸び茶」といいます。
茶葉の乾燥を促しつつ、一定方向にだけ揉みます。この工程で緑茶独特の針のような細長い形ができあがります。
乾燥
天日に当てて乾かし、旨味を引き出します。釜で攪拌しながら乾燥させる方法もあります。
これで「荒茶」の完成です。
仕上げ
「荒茶」の状態では水分が若干残っており、香ばしさにも欠けるため、さらに工程を加えて製品への「仕上げ」を行っていきます。
先火
選別や整形を行う前に、荒茶全体にまず火入れ(焙煎など)をします。
選別・整形
火入れ後の荒茶をふるいにかけ、細かい茎などを取り除き、葉の大きさで選別します。さらに切断などの加工を行い、形を整えます。
火入れ
最後にもう一度火入れして乾燥させることで、保存性を高めるだけでなく、お茶の香りを一層引き出します。
合組
最終調整として製品の配合や品質を均一にするために「合組(ブレンド)」を行います。合組を行うことで、バランスのいいお茶に仕上がります。
釜炒り茶の産地・特徴
釜炒り茶は15世紀ごろに中国から日本へ伝来しました。その頃の日本のお茶は、煎茶の製法が完成するまでの間ほとんどが釜炒り茶でした。今でも中国では「釜炒り製」が主流ですが、日本ではわずか1%未満しか生産されない希少なお茶になりました。
日本での主な産地は、佐賀県や長崎県、宮崎県などの九州地方に集中します。
「釜炒り茶」の特徴は、釜で炒ることで生まれる「釜香(かまか)」という香ばしい香り、渋みが少ないすっきりした味わい、淡い透き通った金色の水色が魅力です。
花茶(ジャスミン茶)の製造工程について
上品で穏やかな香り漂う「ジャスミン茶」。その「ジャスミン茶」がどうやって香り付けされているかご存知でしょうか。その香りを付けるためには複数の工程があり、時間と手間ひまがかけられています。ジャスミン茶は「花茶」と呼ばれるお茶の一つですが、他にも多数の「花茶」があります。
他の「花茶」にはどういったものがあるのか、また、どうやって茶葉に香り付けされているのか、詳しく解説していきます。
花茶の製造工程の特徴
「花茶」とは、白茶や青茶、緑茶などに花や果実の香りを付けたお茶です。
ジャスミン茶のように生の花を茶葉に混ぜて香りをつける製法もあれば、キンモクセイ茶のように乾燥させた花びらを茶葉に混ぜ込んで香り付けする製法もあります。
また、バラ茶のように茶葉を使わず、乾燥させた花のみで淹れる花茶もあります。
収穫された生葉が出荷されるまで
ジャスミン茶の場合、収穫された茶葉の生葉を荒茶まで加工した後、その荒茶に花を重ねて香り付けします。香り付けが終われば花を取り除き、袋詰めなどを経て製品として出荷されます。
荒茶ができるまで
花茶は一般に緑茶をベースにして作られます。緑茶には「香りを吸収する」性質があるため、他の茶種に比べて花茶作りに適しています。しかし中国では、緑茶だけでなく白茶や青茶を使うこともあります。
香り付け(ジャスミン茶の場合)
ここではジャスミン茶を例に上げて香り付けの工程を解説していきます。
花と茶葉を直接混ぜただけでも香り付けはできますが、ゆっくりと時間をかけて香り付けされることでジャスミン茶の価値は高まっていきます。高級品だと完成までに数ヶ月かかるものもあります。
1. 選別
ジャスミンの花はまだつぼみの状態のものを選び、一つずつ丁寧に手で摘んでいきます。摘んだつぼみは風通しの良いところに広げ、少しつぼみが開くまで寝かせます。その後、ふるいにかけて咲きかけのものだけを選別します。
咲きかけのものを選別するのは、最も強い香りを放つ状態で香り付けに適しているためです。
2. 堆積
選別の終わったジャスミンの花と茶葉を交互に何層にも積み重ね、茶葉に花の香りを移していきます。
3. 付香
この間に花の水分と一緒に茶葉へと香りが移っていきます。この水分量を適切に保つことも香り付けの重要なポイントになります。
4. 放熱
花は摘んだ後も呼吸し続けているため、次第に呼吸熱が発生します。その熱の影響により、花が枯れて香りが失われるため、熱を逃すために堆積させていたものを一度崩します。
温度が下がったら、茶葉と花を混ぜ合わせて香りを均一にしていきます。
5. 分離
しおれた花と茶葉をふるいで分けていきます。
この時の茶葉は花からの水分を含んでいるため、少し乾燥させ品質を安定させます。花の香りが飛ばないようにゆっくり乾燥させることがポイントです。
新鮮な花に取り替え、再度堆積から分離までの工程を繰り返していきます。繰り返す回数は3回が一般的ですが、高級品ほどその回数は多くなります。
6. 仕上げ
最後に新鮮な花を少量加え、袋詰めなどを行って出荷されます。ただ、高級品ほど花を加えず仕上げるため、花の量が多いものは質が劣るとされています。
ジャスミン茶と花茶について
ジャスミン茶が花茶の主流になったのは、ジャスミンの花は香りが強く長持ちし花茶には最適であるとされたからです。花茶の生産量の約80%を占め、今でも人気の高い花茶として多くの人に愛されています。
元々は香りを楽しむことが目的だった「花茶」ですが、種類によっては漢方薬のような役割を担うものも存在します。最近の日本ではその健康効果などに注目が集まり、ジャスミン茶だけでなく様々な種類の「花茶」を楽しめるようになってきました。
また「工芸茶」といわれるような、淹れたときの見た目を楽しむ「花茶」も生まれ、「花茶」の楽しみ方も多様化してきています。
後発酵茶の製造方法について
半発酵茶(中国茶・烏龍茶)の製造方法について
私たちが普段飲んでいる緑茶・紅茶・烏龍茶など、味も香りも色も異なるこれらのお茶が、全て同じ茶葉から作られているのを知っていますか?
これらのお茶が異なる味わいや香りを持つのは、製造方法の違いによるものです。
今回は、烏龍茶などの中国茶を始めとする「半発酵茶」の、製造工程や製法について詳しく解説していきます。
半発酵茶(中国茶)の製造工程の特徴
「半発酵茶」とは、発酵を途中で止めて作られるお茶をいいます。
元々お茶の生葉には酸化酵素が含まれていて、収穫後からその酵素の働きで酸化発酵が起こります。その発酵を、頃合いのいい頃に加熱処理によって止めることで、独自の色や風味を引き出したのがこの半発酵茶です。
発酵と酸化?
お茶の世界で使われる発酵とは、味噌やヨーグルトのように微生物(菌)によって起こる発酵とは違い、茶葉のもつ酸化酵素よって起こる酸化のことを指しています。
酸化とは、酸素と酵素が結びついて、もとの成分を変化させる反応をいいます。
一部、後発酵茶のように微生物の力で発酵させるお茶もありますが、基本的にお茶業界では酸化を発酵と呼んでいます。
半発酵茶の種類と違いについて
半発酵茶は、発酵の度合いで種類が分かれます。その種類について解説します。
半発酵茶の種類
- 白茶:白牡丹、銀針白毫 など
- 黄茶:君山銀針、蒙頂黄芽 など
- 青茶:烏龍茶、鉄観音茶 など
発酵度合いの違い
白茶
「白茶」は、茶葉が育って間もない、白毛の取れないうちに収穫された茶葉を使って作られるお茶です。発酵時間が短く、半発酵茶の中で唯一「揉捻」という作業を行わないことが特徴です。
黄茶
「黄茶」は、荒茶の工程中に軽い発酵を行って作られるお茶です。加熱処理後に茶葉に残った熱と湿気を利用して発酵を行う「悶黄」という工程があります。
青茶
「青茶」は、半発酵茶を代表する種類のお茶です。烏龍茶はこの青茶に分類されます。
発酵が進んで茶褐色になった茶葉と、不発酵でまだ緑色を保った茶葉が混じっている様子から「青茶」と呼ばれています。
収穫された生葉が出荷されるまで
どのお茶にもおいてもまず「摘採」といわれるお茶の葉を収穫するところからお茶作りは始まります。中国茶は日本のお茶と違い、開き具合の大きい茶葉を収穫していくのが特徴です。収穫された茶葉は、萎凋や発酵、揉捻、乾燥などを経て「荒茶」へと加工され、その後仕上げ加工が行われてから出荷されます。
荒茶ができるまで
茶種によって様々な工程がありますが、一般的な烏龍茶の製法を例に挙げると、「日干萎凋(晒青) → 室内萎凋(涼青) →回転発酵(揺青) →釜炒り(殺青)→ 締め揉み(包揉) → 揉捻 → 乾燥」という工程を経て「荒茶」となります。
1. 日干萎凋(晒青)
晴天時に日に当てて干し、お茶の葉をしおれさせる作業を行います。天候が悪い時には萎凋槽で熱風を当てて処理しますが、一般に天日に当てて干したものが品質が良いとされています。
2. 室内萎凋(涼青)
日干萎凋を行うと茶葉の温度が上がるため、一度室内の棚に広げて静かに冷まし、その後次の工程に入ります。
3. 回転発酵(揺青)
竹かごの中に茶葉を入れて回転させ、茶葉の周囲に傷を付けていきます。傷のついた部分から酸化発酵が活発になり、茶葉の周りは茶褐色、真ん中は緑色を保ったままの半発酵状態になります。
4. 釜炒り(殺青)
ちょうど良い発酵具合を見極め、釜で炒って殺青します(茶葉の酸化酵素を失活させて発酵を止めること)。斜め釜を用いて手で炒る方法が主流ですが、最近では機械化も進んでいます。
5. 揉捻
日本茶などと同様に圧力をかけて茶葉を揉みます。茶葉の水分を均一化させるとともに、茶葉の成分を抽出しやすくします。
6. 締め揉み(包揉)
風呂敷ほどの大きさの布に茶葉を包み、転がすように茶葉を絞りながら締めて形を整えます。この作業と次の工程である乾燥を20回ほど繰り返していきます。
7. 乾燥
きつく締めた茶葉の塊をほぐした後、茶葉の水分を抜くために乾かします。一気に乾いて茶葉の形が元に戻ってしまわないよう、じっくりと乾燥させます。その後、麻袋などに入れて保存し、仕上げ工場へと出荷されていきます。
仕上げ
乾燥が終われば「荒茶」の完成ですが、まだこの段階では製品として不十分なため、最後に「仕上げ」を行います。
8. 乾燥・火入れ
荒茶をじっくりと焙煎し、最終的な水分調整を行うとともに、好みの焙煎具合に仕上げることで、風味よく仕上げていきます。
これらの工程を経て、烏龍茶は完成となります。
お茶の肥料
お茶を栽培する際に使われる「肥料」。
肥料を適切に使うことで茶の香りや味を好みの味に仕上げることができます。
今回はその肥料の種類やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
お茶に使う肥料について
お茶に使う肥料の目的は、品質の高い茶葉を多く収穫するためです。そのために必要な養分を施していきます。このことを「施肥(せひ)」といいます。
施肥の中心となる成分は、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)で、肥料の三代要素と呼ばれています。
茶葉はアミノ酸を多く含む作物のため、特に窒素の供給が重要になります。
肥料は大きく2つの種類に分けられ、「化学肥料」と「有機肥料」に分類されます。
それぞれの肥料にどういった特徴があるのでしょうか。
化学肥料
化学肥料とは、植物の生育に不可欠な成分を化学的に操作し、その濃度を高めて作った肥料です。
窒素肥料やリン酸肥料、カリ肥料など、肥料成分単体で作られた「単肥(たんぴ)」と、これらを混ぜて作った「化成肥料」があります。
有機肥料
有機肥料とは、動物の糞や食べ物かすなどの有機物から作った肥料です。
菜種かすや大豆かすなどを使った植物質肥料と、魚かすや魚粉などを使った動物質肥料があります。また、これらの原料を微生物で発酵させた「ぼかし肥料」という肥料もあります。
肥料を使うメリット・デメリット
次に「化学肥料」と「有機肥料」それぞれにおいて、使うメリット・デメリットを解説していきます。
化学肥料のメリット
肥料が成分ごとに分かれているため、作用して欲しい内容に応じて肥料を使い分けることができます。成長をみながら肥料の種類や量を選べるため、肥料管理がしやすくなります。
特に窒素はお茶の旨味成分を左右するため、窒素肥料の量でお茶の旨味を好みに仕上げることが可能になります。
化学肥料のデメリット
茶樹には吸収できる肥料分の量に限界があるため、過剰に施肥をすると茶樹が吸収障害になってしまい、収量が減ったり品質が悪くなったりしてしまいます。
また化学的に作られた肥料であるため、環境への影響も懸念されています。
有機肥料のメリット
有機分を多く含むため、土壌に住む微生物のエサになりその働きを活発にさせてくれます。その微生物の作る生成物により土壌の質が良くなることで茶樹の育ちも良くなります。
また、食べ物などの有機物で作られた肥料のため環境にも優しいのが特徴です。
有機肥料のデメリット
化学肥料に比べ即効性がなく、施肥のタイミングが難しくなります。
誤った肥料管理をしてしまうと、生育を遅らせたり収量を減らしてしまったりする可能性があるため、土壌や気候、発育状態などに常に気を配りながら肥料を管理する必要があります。
お茶の被覆栽培・被せ
お茶の栽培方法の一つである「被覆栽培」。
この方法で作られた茶葉は「玉露」や「碾茶」「かぶせ茶」に加工されますが、なぜこれらのお茶を作るのに被覆栽培が行われるのでしょうか。
被覆栽培って?
被覆栽培とは新芽の育成中に茶樹に覆いをかけ、一定期間日光を遮って栽培する方法のこと。茶業界では「被せ」とも呼ばれる方法で、高品質な茶葉を作る際に多く行われる栽培方法です。
この被覆栽培を20日間前後、もしくはそれ以上の期間行って作られるのが玉露や碾茶(抹茶の原料茶)、それらよりも期間を短くし10日前後の被覆で作られるのがかぶせ茶です。
被覆栽培の目的は?
この被覆栽培、50mにも及ぶ長いネットを茶畑の畝一本一本にかけ、摘採前には再びそのネットを回収してから摘採を行うため、非常に手間と時間のかかる作業です。
では、そんな面倒な被覆栽培を行う目的は何なのでしょうか?
味・香り・水色の三つの観点から、被覆栽培のメリットについてご紹介します。
被覆栽培によって作られる濃厚な旨味
被覆栽培を行う一番の理由は、やはりお茶の「旨味」にあります。
お茶の主な旨味成分である「テアニン」は、日光に当たることで渋味成分である「カテキン」に変化するという性質を持っています。
被覆栽培では日光を遮って栽培することで、テアニンがカテキンに変化するのを防ぐことができ、旨味をたっぷりと蓄えたお茶を作ることができるのです。
また、カテキンよりもさっぱりとした苦味のカフェインは、遮光することでその量が増えるため、被覆栽培のお茶は露天栽培のお茶に比べ、渋味・苦味が軽くなり甘みを感じやすくなります。
被覆栽培で作られる香り「覆い香」って?
被覆栽培を行うことによって、茶葉には「覆い香」と呼ばれる、海苔のような独特の香りが付加されます。
これは「ジメチルスルフィド」という香気成分が作られることで生まれる香りで、この成分は多すぎると悪臭の原因となりますが、少量であれば他の香気成分と混じり合い、お茶の爽やかな香りを作り出してくれるのです。
被覆栽培を行って作られた証拠とも言える「覆い香」は、高級茶の証とも言える香りなのです。
ただし「覆い香」が付加される分、茶葉や品種そのものが持つ香りが若干弱まってしまうため、そういった香りを残したい場合には不向きな栽培方法です。
鮮やかな濃緑を作り出す被覆栽培
被覆栽培は、茶葉の色、ひいては水色も変化させます。
日光を遮ることで、茶葉はより少ない日光で光合成を行うために、茶葉中の葉緑素(クロロフィル)を増やします。葉緑素は葉の色素なので、通常の茶葉と比べて緑色が濃くなり、鮮やかな濃緑の茶葉に育つのです。
また、少しでも日光を浴びる面積を広げるために、茶葉はより大きく、そして薄く育ちます。通常の茶葉よりも薄く育った新芽は柔らかく、加工がしやすいため、ピンと針のように伸びた美しいお茶が作れることも、被覆栽培の目的の一つです。
被覆栽培で作られるお茶
上記のように、被覆栽培のお茶は露天栽培のお茶に比べ、鮮やかな緑色の水色になり、覆い香から生まれる芳潤な香り、そして濃厚な旨味を感じられる味わいが特徴です。
この鮮やかな色味、渋みの軽い味わいが「玉露」や「碾茶」に適しています。
日本最高級の緑茶「玉露」
「玉露」は最高級の緑茶とされており、作られる際には、20日間もの期間、被覆栽培が行われます。
多くの場合手摘みで作られ、被覆栽培の手間も含めて、非常に丁寧に作られるお茶です。
手間隙をかけて作られる、トロッとした舌触りと共に広がる濃厚な旨味と芳醇な香り。品評会で高い評価を受けたものは、1kg30万円もの値が付くこともある、正に最高級のお茶です。
鎌倉時代から続く伝統のお茶「碾茶・抹茶」
鎌倉時代初期に中国から伝わり、現代も茶道で使われる「抹茶」、そしてその原料となる「碾茶」も、20日間もの被覆栽培を経て作られています。
抹茶はその色が非常に重要となるため、鮮やかな水色を作り出すために被覆栽培が行われるのです。
玉露と煎茶の中間「かぶせ茶」
三重県で多く作られる「かぶせ茶」は、10日間前後の被覆栽培で作られる、ちょうど玉露と煎茶の中間のようなお茶です。
通常の煎茶と比べて旨味が濃く、覆い香も感じられるかぶせ茶は、日々のちょっとした贅沢にピッタリです。
お茶の有機栽培
お茶の栽培方法の一つである「有機栽培」。
そもそも有機栽培とはどういったものかご存知でしょうか。実は厳しい基準があり、それを満たさなければ有機栽培という表記は認められません。今回はその有機栽培について詳しく解説していきます。
有機栽培って?
有機栽培とは、「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと・遺伝子組み換え技術を利用しないこと・農業生産に由来する環境への負荷を出来る限り低減する」方法を用いて行われる農業です。
具体的には、禁止された農薬や化学肥料を使わず、自然が本来持っている生態系に配慮しながら栽培する方法を指します。
無農薬栽培というものもありますが、有機栽培とは規定が違うため全く同じではありません。有機栽培は農薬の散布の有無だけでなく、土壌づくりや種の仕入れ先に至るまで厳しい基準が設けられています。
JAS認証について
JAS認証とは、農産物や加工食品に対して、有機栽培の基準を満たしたものに付けられる証です。
農林水産大臣が定めたJAS法に基づいて、登録認定機関が調査し、この検査を通ったものだけが「有機」や「オーガニック」という表示を許されます。
JASマークをつける場合は、必ず検査を行った検査機関名と認定番号の記載が必要になります。
お茶の有機栽培
お茶の有機栽培は、化学合成農薬・化学合成肥料・化学合成土壌改良材を使わずに3年以上を経過し、堆肥などによる土づくりを行った場所で収穫されなければなりません。
肥料を使う場合は、基準を満たした有機肥料のみが使用可能です。有機栽培を行う農家が肥料を使う場合は、主に自家製のぼかし肥料(発酵肥料)を使っています。
また栽培中は、虫や病気が急激に増加しないよう、適切な時期に葉を刈り取ったり、茶樹に栄養を行き届かせるために雑草を刈り取るなど、手間と時間をかけて茶葉を育てます。
有機栽培のお茶の特徴
野生に近い状態で育つため、茶葉本来のもつ味わいが最大限まで引き出されたお茶がつくられます。
香りは力強いものの、それでいて苦味や渋味はきつくなりすぎず、ほどよいコクと爽やかな後味が楽しめます。
有機栽培のメリット
通常の茶葉の場合、お湯や水に淹れるとどうしても農薬も一緒に溶け込んでしまいます。
体に害はない量であっても、農薬を一緒に摂取してしまうことになり、長年摂取することに対して懸念されています。
しかし、有機栽培の茶葉はその心配が全くなく、化学物質過敏症でも安心して飲むことができます。
また、栽培に農薬を使わないことで、環境にも優しく、生態系に悪影響を及ぼしません。そのため、未来の農業の維持や安定に繋がることが期待されています。
有機栽培のデメリット
有機栽培への転換初期は病害虫の発生が多く収量が不安定になってしまいます。
有機肥料の扱いも難しく、化学肥料に比べ成分が安定しないため、常に土壌や作物の状態を見極めて肥料の管理をしなければなりません。
天候による不作や害虫や病気による茶樹への悪影響を受けやすくなるため、収量や品質の面で、毎年安定した生産が難しいとされています。
土壌が安定するまでの長い年月と、知識・技術がなければ、有機栽培で安定した収量を得ることは難しくなります。
また、除草剤を使わないため、畝間に生えた雑草を取り除く「草取り」の作業が、一年を通して発生するため、農作業の負荷が増えることもデメリットの一つと言えます。