抹茶・碾茶の製造方法について
今では世界中で愛されるようになった「抹茶」。「碾茶(てんちゃ)」は抹茶の原料となるお茶ですが、「碾茶」は普通の緑茶と何が違うのでしょうか?
今回は「碾茶」がどのように作られ、さらにどのようにして「抹茶」に加工されていくのかを解説します。
抹茶・碾茶の製造工程の特徴
抹茶の原料となる「碾茶」は、煎茶と違い、茶葉を揉む作業を行わないのが特徴です。そして抹茶は、その碾茶を臼で挽き、粉末状に加工したものです。
揉捻の工程が無いため、荒茶の製造にかかる時間は煎茶より短くなりますが、茶葉を熟成させたり、臼で挽いたりする作業があるため、煎茶などと同様製造には手間と時間がかかります。
収穫された生葉が出荷されるまで
収穫された生葉はまず「碾茶」にまで加工されます。その後仕上げ工程を経て「抹茶」となり、各地へと出荷されます。
碾茶ができるまで
碾茶は「荒茶」と「仕上げ」の大きく2つの工程を経て作られます。まずは「荒茶」の工程を解説していきます。
蒸熱
収穫された生葉には酸化酵素が含まれ、収穫直後から発酵(酸化)が始まります。その働きを失活させるために蒸気で加熱するプロセスです。蒸し時間は煎茶より短く、鮮やかな黄緑色と「覆い香」を引き立てます。抹茶の色を濃くしたいときは蒸し時間を長くします。
冷却散茶
冷却用の散茶機に茶葉を移し、5mほどの機械の中で吹き上げては落とすのを繰り返して茶葉を冷やします。くっついた葉同士を離し、冷えた後も重ならないようにする効果があります。
荒乾燥・本乾燥
専用の乾燥炉で150℃を超える熱風を当てて乾燥させます。この乾燥炉は3層ほどのベルトコンベアーに分かれています。まず下段で急速乾燥させた後、上段に吹き上げられ、その後下の段に降りる間にゆっくりと乾燥させていきます。
これで碾茶の「荒茶」の完成です。
仕上げ
「荒茶」の状態では茶葉の茎の部分が乾き切っておらず、抹茶を作るには不向きなため、さらに「仕上げ」加工を行います。碾茶の仕上げ加工のことを「仕立て」ともいいます。
選別
つる切りという機械を使って茶葉から茎の部分を切り取ります。さらに硬い葉や残ってしまった茎などを選別し、質の良い葉の部分だけを集め、一定の長さに切り揃えます。
乾燥
選別の終わった茶葉に風を当てて、ゆっくり時間をかけて乾燥させます。風を当てることで取り除けなかった茎などを分離させます。
合組
好みの味や色に仕上げるため、種類の違う碾茶をブレンドします。これでやっと「碾茶」の完成です。
石臼挽き
徹底的に温度・湿度管理された碾茶を出荷直前に石臼で挽きます。これで「抹茶」の完成です。
抹茶・碾茶の産地
釜炒り茶の製造方法について
煎茶などの不発酵茶は、失活の方法によって「蒸し製」と「釜炒り製」の大きく2つに分けられます。日本緑茶の製法では「蒸し製」が主流ですが、中国緑茶の場合は「釜炒り製」がほとんどです。
今回は、この「釜炒り茶」の特徴や製法などを詳しく解説していきます。
釜炒り茶の製造工程の特徴
釜炒り茶は不発酵茶の一つで、生葉を摘んだ後、すぐに茶葉のもつ酸化酵素を失活させて作られます。その際、失活の方法として「釜炒り」を用いるのが特徴になります。
収穫された生葉が出荷されるまで
収穫された生葉は、摘み取られた産地の近くで「荒茶」にまで加工され、その後「仕上げ」加工が行われ、製品として各地へと出荷されます。
荒茶ができるまで
まずは「荒茶」の工程について詳しく解説します。
釜炒り
摘み取られた生葉は、300℃にものぼる熱い鉄釜でゆっくり丁寧に炒られます。火加減や仕上がりの見極めは、積み重ねられた経験や感覚が頼りです。
粗揉
強い力で揉み、適度な圧力を加えながら、熱風を当てて乾かします。茶葉を柔らかくし、茶葉のもつ水分を減らすための工程です。
揉捻
粗揉だけだと揉み足らないため、今度は加熱をせずに圧力だけで揉みます。茶葉の水分を均一にしていくとともに、細胞を破壊し、茶葉の成分が出やすいようにします。
中揉
揉捻後の茶葉は縮んで形も不揃いなため、中揉工程では熱風を当てながら茶葉を解きほぐし、細長い形に整え、さらに揉みます。
精揉
釜炒り茶の場合、この精揉のプロセスを行わないことが多いですが、 この工程を経たものをさらに「釜伸び茶」といいます。
茶葉の乾燥を促しつつ、一定方向にだけ揉みます。この工程で緑茶独特の針のような細長い形ができあがります。
乾燥
天日に当てて乾かし、旨味を引き出します。釜で攪拌しながら乾燥させる方法もあります。
これで「荒茶」の完成です。
仕上げ
「荒茶」の状態では水分が若干残っており、香ばしさにも欠けるため、さらに工程を加えて製品への「仕上げ」を行っていきます。
先火
選別や整形を行う前に、荒茶全体にまず火入れ(焙煎など)をします。
選別・整形
火入れ後の荒茶をふるいにかけ、細かい茎などを取り除き、葉の大きさで選別します。さらに切断などの加工を行い、形を整えます。
火入れ
最後にもう一度火入れして乾燥させることで、保存性を高めるだけでなく、お茶の香りを一層引き出します。
合組
最終調整として製品の配合や品質を均一にするために「合組(ブレンド)」を行います。合組を行うことで、バランスのいいお茶に仕上がります。
釜炒り茶の産地・特徴
釜炒り茶は15世紀ごろに中国から日本へ伝来しました。その頃の日本のお茶は、煎茶の製法が完成するまでの間ほとんどが釜炒り茶でした。今でも中国では「釜炒り製」が主流ですが、日本ではわずか1%未満しか生産されない希少なお茶になりました。
日本での主な産地は、佐賀県や長崎県、宮崎県などの九州地方に集中します。
「釜炒り茶」の特徴は、釜で炒ることで生まれる「釜香(かまか)」という香ばしい香り、渋みが少ないすっきりした味わい、淡い透き通った金色の水色が魅力です。
花茶(ジャスミン茶)の製造工程について
上品で穏やかな香り漂う「ジャスミン茶」。その「ジャスミン茶」がどうやって香り付けされているかご存知でしょうか。その香りを付けるためには複数の工程があり、時間と手間ひまがかけられています。ジャスミン茶は「花茶」と呼ばれるお茶の一つですが、他にも多数の「花茶」があります。
他の「花茶」にはどういったものがあるのか、また、どうやって茶葉に香り付けされているのか、詳しく解説していきます。
花茶の製造工程の特徴
「花茶」とは、白茶や青茶、緑茶などに花や果実の香りを付けたお茶です。
ジャスミン茶のように生の花を茶葉に混ぜて香りをつける製法もあれば、キンモクセイ茶のように乾燥させた花びらを茶葉に混ぜ込んで香り付けする製法もあります。
また、バラ茶のように茶葉を使わず、乾燥させた花のみで淹れる花茶もあります。
収穫された生葉が出荷されるまで
ジャスミン茶の場合、収穫された茶葉の生葉を荒茶まで加工した後、その荒茶に花を重ねて香り付けします。香り付けが終われば花を取り除き、袋詰めなどを経て製品として出荷されます。
荒茶ができるまで
花茶は一般に緑茶をベースにして作られます。緑茶には「香りを吸収する」性質があるため、他の茶種に比べて花茶作りに適しています。しかし中国では、緑茶だけでなく白茶や青茶を使うこともあります。
香り付け(ジャスミン茶の場合)
ここではジャスミン茶を例に上げて香り付けの工程を解説していきます。
花と茶葉を直接混ぜただけでも香り付けはできますが、ゆっくりと時間をかけて香り付けされることでジャスミン茶の価値は高まっていきます。高級品だと完成までに数ヶ月かかるものもあります。
1. 選別
ジャスミンの花はまだつぼみの状態のものを選び、一つずつ丁寧に手で摘んでいきます。摘んだつぼみは風通しの良いところに広げ、少しつぼみが開くまで寝かせます。その後、ふるいにかけて咲きかけのものだけを選別します。
咲きかけのものを選別するのは、最も強い香りを放つ状態で香り付けに適しているためです。
2. 堆積
選別の終わったジャスミンの花と茶葉を交互に何層にも積み重ね、茶葉に花の香りを移していきます。
3. 付香
この間に花の水分と一緒に茶葉へと香りが移っていきます。この水分量を適切に保つことも香り付けの重要なポイントになります。
4. 放熱
花は摘んだ後も呼吸し続けているため、次第に呼吸熱が発生します。その熱の影響により、花が枯れて香りが失われるため、熱を逃すために堆積させていたものを一度崩します。
温度が下がったら、茶葉と花を混ぜ合わせて香りを均一にしていきます。
5. 分離
しおれた花と茶葉をふるいで分けていきます。
この時の茶葉は花からの水分を含んでいるため、少し乾燥させ品質を安定させます。花の香りが飛ばないようにゆっくり乾燥させることがポイントです。
新鮮な花に取り替え、再度堆積から分離までの工程を繰り返していきます。繰り返す回数は3回が一般的ですが、高級品ほどその回数は多くなります。
6. 仕上げ
最後に新鮮な花を少量加え、袋詰めなどを行って出荷されます。ただ、高級品ほど花を加えず仕上げるため、花の量が多いものは質が劣るとされています。
ジャスミン茶と花茶について
ジャスミン茶が花茶の主流になったのは、ジャスミンの花は香りが強く長持ちし花茶には最適であるとされたからです。花茶の生産量の約80%を占め、今でも人気の高い花茶として多くの人に愛されています。
元々は香りを楽しむことが目的だった「花茶」ですが、種類によっては漢方薬のような役割を担うものも存在します。最近の日本ではその健康効果などに注目が集まり、ジャスミン茶だけでなく様々な種類の「花茶」を楽しめるようになってきました。
また「工芸茶」といわれるような、淹れたときの見た目を楽しむ「花茶」も生まれ、「花茶」の楽しみ方も多様化してきています。
後発酵茶の製造方法について
半発酵茶(中国茶・烏龍茶)の製造方法について
私たちが普段飲んでいる緑茶・紅茶・烏龍茶など、味も香りも色も異なるこれらのお茶が、全て同じ茶葉から作られているのを知っていますか?
これらのお茶が異なる味わいや香りを持つのは、製造方法の違いによるものです。
今回は、烏龍茶などの中国茶を始めとする「半発酵茶」の、製造工程や製法について詳しく解説していきます。
半発酵茶(中国茶)の製造工程の特徴
「半発酵茶」とは、発酵を途中で止めて作られるお茶をいいます。
元々お茶の生葉には酸化酵素が含まれていて、収穫後からその酵素の働きで酸化発酵が起こります。その発酵を、頃合いのいい頃に加熱処理によって止めることで、独自の色や風味を引き出したのがこの半発酵茶です。
発酵と酸化?
お茶の世界で使われる発酵とは、味噌やヨーグルトのように微生物(菌)によって起こる発酵とは違い、茶葉のもつ酸化酵素よって起こる酸化のことを指しています。
酸化とは、酸素と酵素が結びついて、もとの成分を変化させる反応をいいます。
一部、後発酵茶のように微生物の力で発酵させるお茶もありますが、基本的にお茶業界では酸化を発酵と呼んでいます。
半発酵茶の種類と違いについて
半発酵茶は、発酵の度合いで種類が分かれます。その種類について解説します。
半発酵茶の種類
- 白茶:白牡丹、銀針白毫 など
- 黄茶:君山銀針、蒙頂黄芽 など
- 青茶:烏龍茶、鉄観音茶 など
発酵度合いの違い
白茶
「白茶」は、茶葉が育って間もない、白毛の取れないうちに収穫された茶葉を使って作られるお茶です。発酵時間が短く、半発酵茶の中で唯一「揉捻」という作業を行わないことが特徴です。
黄茶
「黄茶」は、荒茶の工程中に軽い発酵を行って作られるお茶です。加熱処理後に茶葉に残った熱と湿気を利用して発酵を行う「悶黄」という工程があります。
青茶
「青茶」は、半発酵茶を代表する種類のお茶です。烏龍茶はこの青茶に分類されます。
発酵が進んで茶褐色になった茶葉と、不発酵でまだ緑色を保った茶葉が混じっている様子から「青茶」と呼ばれています。
収穫された生葉が出荷されるまで
どのお茶にもおいてもまず「摘採」といわれるお茶の葉を収穫するところからお茶作りは始まります。中国茶は日本のお茶と違い、開き具合の大きい茶葉を収穫していくのが特徴です。収穫された茶葉は、萎凋や発酵、揉捻、乾燥などを経て「荒茶」へと加工され、その後仕上げ加工が行われてから出荷されます。
荒茶ができるまで
茶種によって様々な工程がありますが、一般的な烏龍茶の製法を例に挙げると、「日干萎凋(晒青) → 室内萎凋(涼青) →回転発酵(揺青) →釜炒り(殺青)→ 締め揉み(包揉) → 揉捻 → 乾燥」という工程を経て「荒茶」となります。
1. 日干萎凋(晒青)
晴天時に日に当てて干し、お茶の葉をしおれさせる作業を行います。天候が悪い時には萎凋槽で熱風を当てて処理しますが、一般に天日に当てて干したものが品質が良いとされています。
2. 室内萎凋(涼青)
日干萎凋を行うと茶葉の温度が上がるため、一度室内の棚に広げて静かに冷まし、その後次の工程に入ります。
3. 回転発酵(揺青)
竹かごの中に茶葉を入れて回転させ、茶葉の周囲に傷を付けていきます。傷のついた部分から酸化発酵が活発になり、茶葉の周りは茶褐色、真ん中は緑色を保ったままの半発酵状態になります。
4. 釜炒り(殺青)
ちょうど良い発酵具合を見極め、釜で炒って殺青します(茶葉の酸化酵素を失活させて発酵を止めること)。斜め釜を用いて手で炒る方法が主流ですが、最近では機械化も進んでいます。
5. 揉捻
日本茶などと同様に圧力をかけて茶葉を揉みます。茶葉の水分を均一化させるとともに、茶葉の成分を抽出しやすくします。
6. 締め揉み(包揉)
風呂敷ほどの大きさの布に茶葉を包み、転がすように茶葉を絞りながら締めて形を整えます。この作業と次の工程である乾燥を20回ほど繰り返していきます。
7. 乾燥
きつく締めた茶葉の塊をほぐした後、茶葉の水分を抜くために乾かします。一気に乾いて茶葉の形が元に戻ってしまわないよう、じっくりと乾燥させます。その後、麻袋などに入れて保存し、仕上げ工場へと出荷されていきます。
仕上げ
乾燥が終われば「荒茶」の完成ですが、まだこの段階では製品として不十分なため、最後に「仕上げ」を行います。
8. 乾燥・火入れ
荒茶をじっくりと焙煎し、最終的な水分調整を行うとともに、好みの焙煎具合に仕上げることで、風味よく仕上げていきます。
これらの工程を経て、烏龍茶は完成となります。
緑茶(煎茶)に含まれる成分・効能について
お茶のドリップバッグって?美味しいお茶の淹れ方もご紹介します!
急須を使わなくても、気軽にお茶を淹れることができる「ドリップバッグ」という道具をご存知でしょうか?
急須やティーポットを持っていない方や、オフィスや公園など、自宅外で美味しいお茶が飲みたい方にもおすすめのドリップバッグ。
ここでは、そんなドリップバッグの紹介や、ドリップバッグを使った美味しいお茶の淹れ方をご紹介いたします。
お茶のドリップバッグって?
お茶用のドリップバッグは、写真のように、湯呑みやカップにかけて使える抽出器具。
ドリップバッグを使えば、急須やティーポットを持っていない方や、オフィスや公園など、自宅外でお茶を淹れる場合にも、簡単に美味しいお茶が淹れられます。
出がらしもバッグごと捨てられるので、急須の茶葉の処理が面倒に感じていた方にもおすすめです!
私も普段からいろいろな道具を試していますが、急須で淹れるのとほとんど遜色ないクオリティのお茶が、簡単に淹れられるので、とても重宝する抽出器具です。
コーヒーのドリップバッグとの違いは?
ドリップバッグと聞くと、コーヒーのそれをイメージする方も多いかもしれませんが、お茶とコーヒーではドリップバッグは大きく異なります。
コーヒーのドリップバッグとの最大の違いは、茶葉がお湯に浸ることです。
一般的にコーヒーをドリップで淹れる場合、豆にお湯をかけ、短い時間でカップまで落とす「透過」という方法で抽出されるのに対し、お茶の場合は茶葉全体をお湯に漬け込んだまま時間を置く「浸漬」という方法で抽出がされます。
新鮮なお湯が供給され続ける「透過」の方が、より多くの成分が抽出がされるのですが、お茶を「透過」で淹れようとすると苦渋味が強く出てしまい、味わいのバランスが崩れてしまいやすいというデメリットがあります。
「浸漬」の場合、成分の抽出が緩やかに逓減していくため、過抽出が抑えられ、味わいのバランスの取れたお茶が淹れやすいのです。
ですので、お茶用のドリップバッグは、茶葉がしっかりとお湯に浸る様に、バッグの部分が深く作られているのです。
ドリップバッグを使った美味しいお茶の淹れ方
淹れ方次第で、ティーバッグよりも美味しく、急須と遜色のない美味しさのお茶が淹れられるドリップバッグ。
ドリップバッグで美味しいお茶を淹れる方法をご紹介します。
①ドリップバッグを湯呑み(カップ)にかけ、茶葉を4g入れる
この時、お湯を注いだ際に茶葉がきちんとお湯に浸るかどうかにご注意ください。深い器ですと、お湯が茶葉まで届かず、しっかりと抽出されない場合があります。
②60~80℃で沸騰させたお湯120mlを茶葉の上にゆっくりと注ぎます。
③2分ほど抽出をしたら、ドリップバッグを開いたまま、2〜3回ほどお湯の中で揺らす
ポイントは、ドリップバッグを閉じないこと。茶葉同士が触れ合うことで成分の抽出が進みやすくなるものの、雑味の原因にもなってしまいます。
ドリップバッグを開いたまま、茶葉同士にゆとりがある状態で揺らしてあげることで、適度な味わいが抽出されます。
④ドリップバッグを持ち上げ、最後の一滴が落ちるまで待つ
ドリップバッグに残ったお茶には、茶葉の旨味がたっぷりと詰まっています。
バッグを持ち上げたまま、その最後の一滴が落ち切るまで、ゆっくりと待ってあげてください。
すすり茶って?
皆さんは「すすり茶」という言葉を聞いたことがありますか?
おそらくほとんどの方がすすり茶の存在を知らないのではないかと思います。
この記事では知る人ぞ知る通な飲み方、「すすり茶」についてご紹介します。
すすり茶って?
すすり茶とは、急須を使わず蓋付きの茶碗(湯のみ)に直接水と茶葉を淹れて飲むお茶のことです。
飲む時に茶葉が口に入らないように蓋を少しずらして茶葉を抑えながら、茶碗を傾け、蓋の隙間からにじみ出たお茶をすすることから「すすり茶」と呼ばれています。
かなり特殊な飲み方なので飲んだことがない人が大半かと思いますが、少しずつしか飲めないぶん、温度の変化や抽出時間で変わるお茶のさまざまな味を楽しむことができる風情のある飲み方です。
また、ごく少量の水で抽出するので、お茶の旨味・甘味をダイレクトに感じることができます。
蓋がなくても飲める
すすり茶は蓋がなくても飲むことができます。
茶碗や小皿に茶葉と少量のお水を入れて、口に茶葉が入らないように口を小さく開けてほんの少しずつ飲みます。
蓋があるすすり茶と味は同じですので、すすり茶が気になる方はぜひ試してみてください。
すすり茶に適したお茶
すすり茶はお茶の甘味・旨味を存分に味わうための飲み方なので、旨味が濃い玉露やかぶせ茶、上級煎茶に適しています。
すすり茶は「究極の玉露の飲み方」ともいわれています。
高級茶の味わいを存分に抽出したお茶を最後の一滴までお楽しみください。
氷出しのやり方
すすり茶の氷だしのやり方をご紹介します。
茶碗に茶葉入れる
玉露などの茶葉を4g〜5g入れます。この時なるべく茶葉が広がるように入れると茶葉の成分が抽出されやすいです。
茶碗に氷を入れる
すすり茶の特徴は少量の水でじっくり味わって飲むことです。氷は20cc分ほどの少量を入れます。
溶けるのを待って飲む
氷が溶けたのを確認したら、蓋を少しずらし、茶碗を傾け、蓋の隙間から少しずつお茶を飲み味わいます。
最後の一滴まで味わう
最後は、蓋をひっくり返して、茶碗に残ったお茶の雫を蓋の上に垂らして飲み干します。
飲み終わったら茶葉もいただく
通常、お茶を抽出した後の茶葉は捨てる方が多いと思いますが、特に玉露などの高級茶葉は茶葉が柔らかいのでぜひ最後に召し上がってください。
塩や醤油、酢醤油などで味付けして食べると口にお茶の味が広がり美味しいですよ。
烏龍茶に含まれる成分・効能について
紅茶の成分・効能について
緑茶・ほうじ茶・紅茶 etc.. 日本茶の種類と違いって?
緑茶・ほうじ茶・紅茶・烏龍茶など、お茶にはいろんな種類がありますよね。それぞれ全く違った楽しみ方ができるお茶ですが、今回はそんな「日本茶」についてのお話です。
日本茶って?
「日本茶」とは文字通り、日本国内で生産されるお茶の総称ですが、その種類は多岐に渡ります。日本で最も広く飲まれている煎茶や、香ばしい香りが特徴のほうじ茶、海外でも人気の高い抹茶などが一般的ですが、実は紅茶や烏龍茶も日本国内で生産されている事はご存知でしたか?
そもそも、緑茶も紅茶も烏龍茶も、育て方や加工方法が違うだけで全て同じお茶の木から生まれるんです!
この記事では、皆さんが普段飲んでいるお茶の種類と、意外と知られていないその違いについてご紹介します。
お茶の種類は何で変わる?
煎茶も紅茶も烏龍茶も同じ茶葉からできるのだとしたら、その違いはどこから生まれるのでしょう?
それは、『茶葉の発酵(酸化)の度合い』の違いです。
この「発酵」について補足しておくと、お茶の世界では「発酵」という言葉をよく使うのですが、厳密には「発酵」とは微生物が作用して性質が変化することであり、微生物を使って茶葉を発酵させて作られるのはプーアール茶などの後発酵茶のみです。それ以外の場合、正確には酸化酵素による「酸化」と呼ぶのが正しいのですが、一般的な表現に合わせてここでは「発酵」という言葉を使います。
茶葉は摘み取られたその瞬間から発酵が始まります。この発酵によって茶葉の色や味わい、香りが変化していき、発酵をさせずに加工したものが煎茶(不発酵茶)、半分発酵させたものが烏龍茶(半発酵茶)、最後まで発酵させたものが紅茶(発酵茶)となります。
もちろん品種や育て方によって、紅茶に適した茶葉や煎茶に適した茶葉はありますが、元の植物は全て同じ「チャ」の木から生まれるのです。
お茶の種類
それでは、それぞれのお茶がどんなお茶なのか、一つずつ見ていきましょう。
不発酵茶
まずはほとんど茶葉を発酵させずに作られる不発酵茶。収穫後すぐに茶葉の発酵を止めることで、茶葉の緑色が保たれ、私たちに馴染み深い緑色のお茶になるのです。 不発酵茶=緑茶だと考えてください。
煎茶
煎茶は日本人にとって最も馴染み深く、国内で最も生産量の多いお茶です。
緑茶の風味は普通、食べ物と同様に旨味・甘味・渋味・苦味で表現されますが、煎茶は渋味・甘味のバランスがよく、澄んだ緑色が特徴のお茶です。
皆さんが日本茶と言われて思い浮かべるのは多くの場合、この煎茶でしょう。
深蒸し煎茶
深蒸し煎茶は煎茶の種類の一つで、茶葉を加工する過程で行われる「蒸し」の時間を2〜3倍に長くしたお茶です。煎茶の7割程度は、この深蒸し煎茶として生産されています。
深く蒸す分、茶葉が柔らかく細かくなり、通常の煎茶と比べて水色も味も濃く出るのが特徴です。
玉露
とろりとした旨味と爽快な香りが特徴的な玉露は、日本茶の中でも最高級のお茶です。
玉露は収穫前に20日間以上、茶葉に太陽光を当てないように覆いをして育てられます。茶葉の旨味成分である「テアニン」は、太陽光によって渋味成分である「カテキン」へと変化してします。長い期間太陽光を遮ることで、茶葉の旨味成分が渋味成分に変わるのを防ぐことができ、マイルドな渋味と濃厚な旨味を持つお茶が出来上がるのです。
また、この被覆栽培によって茶葉には、「覆い香」と呼ばれる海苔のような香りも追加されます。この覆い香は玉露や抹茶の特徴的な香りとなっており、高級茶の証拠とも言われています。
水色、香り、味。どれを取っても極上の緑茶といえます。
かぶせ茶
玉露が20日間以上の被覆栽培で作られるのに対し、かぶせ茶は7〜10日間前後の被覆栽培で作られます。50〜60度で淹れると玉露のような旨味が、70度程度で淹れると煎茶のようなバランスの良いお茶が楽しめるお茶です。
価格帯もちょうど玉露と煎茶の中間くらいのお茶なので、ちょっと良いお茶が飲みたい時などにぴったりです。
抹茶
近年フランスやアメリカでブームになっている抹茶は、原料となる碾茶(てんちゃ)を石臼で挽いて作られます。碾茶自体は玉露と同じように、20日間以上被覆栽培をして作られますが、加工の際に茶葉を蒸した後、ひたすら乾燥させて作られるのが特徴です。
茶筅で点てて飲む抹茶は、儀式的な美しさもそうですが、お湯に溶け出さない不水溶性成分も全て取り込むことができるというメリットもあります。
京都の宇治を筆頭に、静岡や三重でも作られています。
茎茶・棒茶
茶の葉の部分ではなく、茎の部分を使ったのが茎茶です。地域によっては棒茶と呼ぶこともあります。特に高級な煎茶や玉露の茎茶は「白折(しらおれ)」と呼ばれ、京都では玉露の茎茶は「雁ヶ音(かりがね)」と呼ばれています。
実はお茶の茎には旨味成分であるテアニンが豊富に含まれており、しっかりした旨味があり、尚且つ茶葉ではない部分を使っているので価格が安く、日常使いに適したお茶です。
釜炒り茶
茶葉を蒸す代わりに、釜で炒ることで茶葉の酸化を止めて作られるのがこの釜炒り茶。中国で生まれた製法で、炒ることで青臭さが消え、「釜香」と呼ばれる香ばしい香りが追加されるのでさっぱりと飲みやすいお茶です。
煎茶と違い、茶葉の形を整える精揉(せいじゅう)のプロセスが無いため、茶葉がぐりっとカールしているのも特徴です。
日本では九州の佐賀 嬉野市を中心に作られています。
番茶
5月に収穫される一番茶の後、6月〜7月に摘まれる二番茶・三番茶や9月に摘まれる秋冬番茶のことを番茶(晩茶とも)と呼びます。茶葉だけではなく、茎を使う場合もあります。
夏の強い日差しの下で育った茶葉は、渋味成分であるカテキンが多く、逆に旨味成分であるアミノ酸の含有量が少ないお茶となります。煎茶や玉露とは違い、渋味や苦味が引き立った、キレのある飲みやすさが特徴です。
最近では価格の安さから、ペットボトルのお茶にも利用されています。
上の写真は番茶の茎の部分を焙じたお茶です。
ほうじ茶
ほうじ茶は文字通り、緑茶の茶葉を焙じることで香ばしい香りを付加したお茶です。焙じることでカテキンが不溶性成分となり、苦味・渋味成分が少なく、身体への刺激が少ないお茶になります。
一般的に、ほうじ茶には番茶や茎茶が使われるので価格も安く、口当たりもさっぱりしているので食事中のお茶に選ばれることも多いお茶です。
玄米茶
お茶と炒り米をブレンドして作られる玄米茶は、炒った米の香ばしさが特徴のお茶です。ほうじ茶同様、香りをプラスして作られるお茶なので、番茶を使うのが一般的です。
発酵茶
お茶の中で、茶葉を発酵させる度合いが最も高いのが発酵茶(紅茶)です。発酵が進むことによって茶葉の色や香りが変化し、苦味・渋味が際立つお茶になります。
紅茶
茶葉の発酵を最小限にとどめて作られる煎茶に対して、発酵を最も進ませてから作られるのが紅茶です。
日本では「お茶」といえば緑茶ですが、実は全世界で作られるお茶の約70%は紅茶です。イギリスをはじめとし、世界のお茶のスタンダードは圧倒的に紅茶なのです。インドのダージリン、中国のキームン、スリランカのウバが三大産地として有名です。
私たちが取り扱っているのは日本産の紅茶で、和紅茶とも呼ばれています。世界的に見ればまだまだ生産量は小さいですが、海外産の紅茶とも比肩する美味しい紅茶もたくさんあります。
半発酵茶
中国・台湾での生産が盛んな半発酵茶は、茶葉の発酵によって独特の香りを引き出します。発酵の進み度合いによって白茶・黄茶・烏龍茶・黒茶といった分類がされていて、緑茶の酵発度を0、紅茶の発酵度を100とするならば、30〜70のものが半発酵茶となります。
烏龍茶
前述の例えでいえば、70くらいの発酵度で作られるのが烏龍茶です。
日本よりも中国や台湾での生産量が圧倒的に多く、発酵の度合いによって緑茶に近いものや紅茶に近いものもあります。
後発酵茶
ここまででご紹介した 不発酵茶・発酵茶・半発酵茶はいずれも、茶葉の酸化酵素による「酸化」で作られるお茶でしたが、後発酵茶は乳酸菌などの微生物によって茶葉の性質を変化させる、本当の意味での「発酵」で作られるお茶です。
中国のプーアール茶や徳島の阿波番茶、高知の碁石茶など、使用する微生物や地域によって様々な種類があります。
プーアール茶
プーアール茶は、中国で盛んに作られている、麹菌によって数ヶ月以上発酵させて作ったお茶です。発酵によって生まれる土を連想させるような独特の香りと、発酵の過程でカテキンが重合カテキンという渋味の薄い成分に変化することで生まれる、まろやかな味わいが特徴です。
長期保存が可能なため、年代物のプーアール茶も存在し、ヴィンテージワインのように高価なものも存在します。
お茶の種類がわかると、お茶はもっと美味しい
以上、日本で消費量の大きいお茶の種類と違いをご紹介しました。それぞれのお茶ごとに、全く違った味わいと楽しみ方があるので、好きなお茶を探してみてください!
お茶の出がらしは食べられる?お茶のおひたしの作り方
お茶を淹れた後の出がらしの茶葉、そのまま捨てていませんか?
実は茶葉は美味しく飲めるだけでなく、そのあと食べることもできるんです。
ここでは溶け残った豊富な栄養素を丸ごと摂ることができる「お茶のおひたし」の作り方をご紹介します。
出がらしのお茶は食べられる?
出がらしの茶葉は食べられると聞いて驚かれるかもしれませんが、茶産地である京都府や静岡県ではよく食べられており、珍しいことではありません。
出がらしといっても味や香りが全て出尽くしているわけではないので、口に入れた瞬間にふわっとお茶の味と香りが広がります。特に玉露などの高級茶の茶葉は苦味もなく、コクや旨味も残っているので意外にも美味しく食べられるのです。
お茶のおひたしの作り方
近年は健康志向ブームで出がらしの茶葉を使ったレシピが数多く存在しますが、今回はその中でも特に簡単な「お茶のおひたし」の作り方をご紹介しましょう。
材料
- 出がらしの茶葉:適量
- 醤油:少々
手順
①急須から取り出した茶葉をキッチンペーパーなどに包んで水分を軽く取ります。
②茶葉を小皿に盛り、醤油を数滴たらして完成です。
醤油以外にも、ポン酢やめんつゆで作っても美味しいですし、鰹節・ごま・すりおろし生姜・唐辛子・塩など薬味を加えてアレンジしても美味しく食べることができます。
苦味が気になる方は、2.3煎出した後の茶葉を使えば苦味が減って、さっぱりした味わいになります。
おひたし以外でも、ふりかけにしたり、チャーハンに混ぜたり、佃煮にしたり、シフォンケーキなどの生地に混ぜて使ったりと使い道はたくさんあります。
お茶をおひたしで食べるメリット
茶葉には栄養素が豊富に含まれていますが、その栄養素は水に溶ける「水溶性」と油に溶ける「脂溶性」の2つに分けられ、お茶の栄養素の約7割が脂溶性です。
水溶性の栄養素であるカテキン・カフェイン・テアニン・ビタミンCも、その全てがお湯も溶け出す訳ではなく、お茶の豊富な栄養素の7割以上が茶葉に残ったままの状態なのです。
ちなみに茶葉に含まれる脂溶性の栄養素はβカロチン・ビタミンA・ビタミンE・クロロフィル・食物繊維などがあり、特に血行を改善してくれるといわれているビタミンEは、ほうれん草の25倍も含まれています。
茶葉を直接食べることで、水に溶けずに茶葉に残った豊富な栄養分を丸ごと摂ることができるのです。